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バニシングセブン  作者: カサ
5/12

FD3S C1

都内 ビル 2階 モーターストリート編集部

「ふぅ・・・こんなもんか・・・」

PC前で自ら企画した内容を打つきらら

「おや?企画の打ち直しかよきらら、例の企画ダメだったのか?」

通りかかった先輩に声をかけられるやや大柄男性

「影浦先輩、ええ。先輩からもらったネタですけど乗ってみてわかりましたね。あれはそういう企画に向いてるような車じゃないですよ」

窓の駐車場に指を刺す、改造車や高級外車の中に借りたFD3Sの姿もあった。

「なんつーか・・・見た目そうでもないけど、あのFDの異様さがわかるよな」

「先輩もわかりますか、いろんな車に乗ってきたりしましけどいわゆる存在感とか雰囲気を持つ車はありましたよ・・でもあの異様の雰囲気は見たことありませんね。もし本当のチューンドカーというならあれがそういうものなのか考えられますね・・・」

「それで、乗った感想は?」

「・・・あのFDって湾岸線で300km/h出してたR35を追いついてきたんですよ。しかもNA3ローターチューンで。」

「NAの3ローター・・・それじゃ一般道じゃ大変だろ下がスカスカで・・・」

きららは首を振り

「いいや・・・あのFD、下も上も綺麗に回るんですよ。すごいですよ可変バルブもないロータリーでそこまでできるなんて恐ろしいぐらい乗りやすいですよ。」

「マジかよ・・・おれのBRZが追いきれねぇ理由か・・・」

愕然とする影浦、きららにバニシングロータリーの情報を与えたのも彼であった。

「どうです先輩、今夜辺りナビシートで」

「おいおい、どうせなら運転させろよ。」

やや困り顔できららが

「いや・・・借りたオーナーからですね、絶対私以外運転させるなって釘を刺されましてね・・・」

「いいだろ、言わなきゃバレないだろうし」

「いやいや、先輩勘弁してください、私も向こうにR35貸出してるんで。」

ちぇという顔をする影浦

「まあ、いっか・・・なら今夜の1時辺りな。」

「ええ、了解ですよ先輩」


深夜1時 首都高 レインボーブリッジ

台数が少ない時間帯、橋の上を駆けるFD3S カン高い音を響かせる

「4速200・・・210!どうです先輩このFDは!」

シートが張り付き視界が狭まる車内で語りかける

「ああ!まさかここまでとは・・・こりゃやべぇ・・・」

橋が終わり、先に右コーナー

FDのブレーキをかけ、4速→3速エンブレをかけ張り付いたシートが今度は前のめりFDの車体も前のめり状態にフロントタイヤに負荷がかかる

コーナーが終わり、立ち上がりFDを加速状態にリアにトラクションがかかる。120・・・150・・・180、4速容易く加速して行くFD

芝浦JCT、速度がのるC1外回りへ浜崎橋JCTを3速・・・2速・・・右ウィンカーをだし環状合流していくFD

そして速度を出していく・・・

意外とコーナー性能はそこらへんのFDと変わらない、もしくはもっと凄いモノをしている・・・唯一違うとすれば立ち上がり・・・ターボの過給器の引っ張るような加速じゃない、自然に・・・体の波長が合うように加速していく・・・NAチューンは大体そんな印象が強い・・・だがこのFDはそこに高揚感をそそるサウンドを奏でる

一ノ橋のJCT 駆け抜けるFD 道路下、トンネル中、共鳴するが如く響き渡るサウンド

「おれは、いろんなRX-7とかロータリーチューンの車は乗ってきてある程度知り尽くしたつもりだったよ。確かにこれより凄いのも知ってる、だけどこのワクワク感、高揚感はなんだ!俺が知らないものだ!」

影浦の額・・・いや体中が汗だくになっている・・・

きららも自分の体温が熱くなっているのがわかる、血が煮え立つ感覚・・・アドレナリンが分泌されるような脳内麻薬

霞ストレート、280。トップギアそして霞トンネル・・・そしてトンネル中だからこそわかるロータリーサウンドの咆哮・・・

きららはそっとアクセルを抜いていく

「先輩・・・すみませんが私はここまでです、このままだとどうになかりそうな・・・」

「いや、それがいい・・・こいつは麻薬とかじゃない・・・このFDのサウンドは劇薬だ・・・」

日常の速度に戻るFD、進んで代官町出口へ

そして一般道に戻る・・・あれほど回したのにダレないFDのエンジン・・・

「きらら、このオーナーがFDお前に貸したのかわかった気がするよ、たぶん俺なら戻ってこれなかった」

「え?それはどういうことですか?」

一般道で戻りながら隣の影浦が語る

「そのFDは走る者の高揚感、走る意欲を注ぐんだ。だが同時に生粋の走りの人間にはこいつは毒だ・・・たぶんどこまでもアクセルを踏んじまう・・・対してきらら、お前はアクセルを戻した。そういう判断ができる人間を見抜いたんじゃねーかなこのオーナーは」

だから、黒川は私以外に踏ませるなと・・・

「なんつーか、もっと興味が出てくるよな。俺たちでC1を一周すらできないこの車を操る乗り手を・・・本気で追ってみたいよな」

「BRZ・・・でですか?」

「仕事は関係ねぇ、完全におれの首都高ドライバーとしてな・・・やべぇなそういうの20代前半で終わったかと思ったけど・・・着火させてくれそうだよ、このFDは・・・」


高揚するサウンドを奏でるFD、それは走る者、そしてかつて走る者の火をつける・・・


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