本山 きらら
湾岸線上り方面 深夜2時 空港トンネル
まばらに走る車・・・その中異様な速度で走る一台・・・その速度ずばり200km/h・・・
シルバーカラーのR35 車雑誌 モーターストリート 本山きららが操るブーストアップ仕様
パドルシフトでシフトアップ、6速・・・さらに加速して速度を伸ばす。
バニシングロータリー・・・90年代のロータリーチューナー新屋が作成した6台のデモカー
当時驚愕な戦闘力を持った車と呼ばれたが、その6台が次々消息が不明となる
噂によれば、持ち主が病死、事故死、盗難で行方不明・・・当時に災いを呼ぶ車と言われた知る人ぞ知る伝説の車だった。
そのバニシングロータリーが首都高で今でも走ってる、その噂が流れたのは数週間前
先輩記者がその噂を嗅ぎつけ、ターボチューンBRZで首都高を追うこと数日・・・カメラに収めることに成功したのはいいが全く追いつけない・・・
決して戦闘力も低くない、それどころかかなりのレベルのBRZ・・・そして先輩記者も腕も悪くない・・・サーキット走行、そして公道での走り方もよくわかっている
それでも追いきれないFD3S。
モーターストリートの中で私は一番ドラテクに自信があった私に白羽の矢がたった
正直交渉、話し合いでどうになかなるとは思っていない。本気の首都高ランナーであるなら同じステージで認めさせる。
やる以上、こちらも看板を背負っている。バカバカしいかもしれないが本気である
トンネルを抜け、R35のメーターが300km/hの数字を示す
「よし、クールダウン、クールダウンっと・・・」
アクセルを離し徐々に速度が落ちていく、湾岸線で大台までだす、走る時はいつもそうしてる
そしてクールダウン走行に戻す・・200km/h・・・150km/h・・・
「?・・・あれ、猛スピードで一台迫ってる・・・!?」
本能的に踏み始めるきらら・・・レーシングサウンドというべきか、カン高い音とライトが迫る!
音・・・きららの走り意欲を注がれるような高揚させるサウンド。R35のV気筒エキゾーストを打ち消すような感覚・・・
250km/h・・・そして並ぶその車、夜と同化するような色をまとったFD3S・・・加速能力が互角、いやこっちがまだ伸びる、が前方のこちらの車線にトラック。3車線一番左端、対しセンターはFD。
「つぅ・・・!」
頭が出てるだけで抜けるほどが追いつかない、アクセルを抜くべきか・・・と思った時FDが減速・・・
FD前方真ん中車線車体一台分が空く、R35がそこに入る・・・そして加速。
超精密VR38とツインタービンが働く!R35のGTウィングが働きリアを貼り付け最高速300km/hへ
対しロータリーレーシングサウンドが響き渡る湾岸線!FDが追従する
東海JCT前、緩やかなカーブを曲がりさらに直線、湾岸線上り
血が騒ぐ、沸騰する、体中が汗だく・・・R35の車内にいながら響くFDの鼓動、後方からとか物理的なレベルじゃない。芯に響く、アクセルが抜けない、走る意欲が落ちない・・・恐怖が薄まる
「これは・・・まずいね・・・」
きらら R35 大井トンネル通過後減速・・・続けてFDの減速していき日常の速度に戻す・・・
FDを先行させる、その時ナビシート・・・あの男だ、黒川だった・・・
黒川が指示を出してるのか、有明JCT、そしてレインボーブリッジ・・・芝浦PAへ
芝浦PA
FDが駐車し、その隣にR35も止まる
「えらく、スムーズね・・・上手い・・・」
静かに、そしてガタツクことなく駐車する姿に関心する
そして運転席から降りたFDの乗り手に驚く・・・女の子・・・自分より若い子だったから
「えーっと、もしかしてあなたがFDのオーナー?」
やや困惑気味に聞く
「え、えーと・・・正確に言えばオーナーと言えばいいのか・・・」
結花も困惑気味に答える、すると黒川が
「俺と、結花ちゃん二人でオーナーって所だよこのFD。後おれの趣味と酔狂で面倒見てるのさ。」
「珍しい関係ですね・・・でも、それよりもこのFDもしかして・・・」
「ああ、流石に雑誌屋はわかるか。」
FDのボンネットを開ける黒川。その中はきららが知っているFDと違う光景で・・・そして綺麗であった
「RE20Bの・・・キャブレター・・・?え?え?」
「いや、流石に驚くよな・・・それでR35と直線でタメ貼るんだからな。」
「FCRキャブに・・・NA仕様の20B・・・これで出力ってどのぐらい」
「前測った時は、520PSでトルク50キロ超えてたっけな・・・呆れるだろ。」
「NAのロータリーで520!?んでそのトルク数値って、V8気筒エンジンクラスじゃないですか!?」
驚く、ただ驚愕・・・車の記者でも聞いたことがないそんな仕様のロータリーエンジン。
間違いなくバニシングロータリー・・・
「これの制作者って、新屋という方のデモカーですよね?」
ところが首を振る黒川
「いいや、新屋が制作したと思うがそのデモカーではないと思う。バニシングロータリーってあれたしか全部2ローターターボの筈だ」
否定する黒川・・・何故知ってるのか、バニシングロータリーの存在は伝説はあるが詳しい仕様を知ってる人なんてそうそういない。一台ぐらいなら20Bがあっても不思議でもないが、きっぱり否定するって・・・
「まあ積もる話はお茶でもしながらでな。」
存在感なシルバーのR35、雰囲気を持つ深青のFD3S こう語るものがいるかもしれない・・・
「行き着いた答え」と「止まった進化」の二台