燃やして踏む
数日後 SBスピード
車を仕上がったという知らせを受けて、影浦は取りに来ていた
数十日振りに見る愛車の変貌を見る、オーバーフェンダー化し車格が大きくなり、フロントも空力を考慮したものに、ドライカーボンGTウィング・・・見るからにバリバリなチューンドカーになっていた。
「こりゃ、ものすごく速そうですね須賀社長・・・・」
「ああ、2.3リッターにボアアップ、500馬力。くぅー!こいつはきくぜぇハハハハ!」
500馬力・・・純正のBRZの実に2.5倍の出力。流石にそこまでのBRZ、86は今まで乗ったことがない未知の領域だ。
「とりあえず、300km馴らしてに走らせてその後全開走行で、是非感想を聞かせてくれよ!影浦君!」
「わかりました、須賀社長・・・」
首都高 湾岸線上り 大井南 午前0時
湾岸線 馴らしが終わったBRZが駆け抜ける・・・6速 250km/h・・・260km/h、一般車を避けながら踏んでいく影浦
そこには不安が拭えない走りをしていた・・・車体より速いエンジン・・・悲鳴を感じる駆動系・・・
一気にバランスを崩れる典型的なチューンドカー化した自らの愛車・・・
想像以上のシビアな運転を求められるハイパワーFR・・・迂闊に踏み込めば、リアがスライドを始める
「つぅ!?・・・・感想ねぇ・・・こりゃ踏み込むことができねぇよ・・・少なくとも公道じゃこれは」
思わず泣き言を言いたくなる、言い訳も言う・・・あのFDはこういう動きだったか?もっと車体と人が一体となったそんな車・・・このBRZではそれが出来ないというのか・・・
大井トンネルを抜け、13号地・・・徐々に速度落とす影浦のBRZ・・・
左・・・?聞き覚えのある音がした・・・そしてその音の正体に気づく
「バニシング・・・ロータリー!」
偶然か、左車線側に結花のFDが走っていた・・・流してるペースだったかこちらの存在に気づいたのか、FDがフルスロットル体勢、影浦もフルスロットルモード・・・BRZのタービンが動きエンジンをぶん回す
有明JCT台場線方向にFDが行く、BRZも追撃を開始
レーンチェンジをしながら一般車を避け、追う・・・何故だ・・・そこまで安定してないBRZを自在に動かせる・・・いや、動かしている・・・まるでFDに引っ張られるように、ワイヤーのようなものにつながってるが如く・・・FDと動きをトレース出来てる。
レインボーブリッジ・・・ここまでオールクリアがあったか、一気に踏み込むFDとBRZ
FDが左レーンを、後ろのBRZが右レーンでオーバーテイクを仕掛ける。
並ぶ2台・・・210・・・220・・・230・・・240・・・250・・・BRZが前に主導権をとるが・・・右コーナー、右車線にいた影浦はブレーキングを開始ポイントより、さらに深い位置でブレーキングを始める結花
右車線側に一般車 影浦とBRZはやむ得ず更なる減速を求められた。対し結花は右コーナーを抜ける
離されていくBRZ・・・だが視界に映る・・・まだ射程圏内、追える、追える!
ここまで公道で熱くなったのは初めてか、恐怖も罪悪感もこの熱さで燃える・・・感情や理性を燃やして走り抜ける、血が煮え立つこの感覚・・・走りはこういうのだ、そうか俺の走りは・・・!
浜崎JCT C1内回りを選ぶ結花・・・そして後ろにBRZが徐々に詰める。
汐留S字、ここでBRZ 影浦が仕掛ける・・・
「バニシングロータリー・・・ありがとうよ、ここは俺からの返礼だ!行くぜ!」
クラッチを蹴飛ばしアクセルを煽る、真ん中の車線からリアをスライドさせていく・・・クラッチ蹴りと呼ぶ技術・・・アクセルをオンドリフトをし始めたBRZ、車体が40~45度に向きながら汐留S字を駆ける
左車線で安全策を取っていた結花はその異変に気づいた。まさかの首都高、環状線でドリフト走行・・・
「継ぎ接ぎの道路で、ドリフトって・・・!凄い・・・!」
そう影浦はドリフト走行を得意としていた・・・アクセル開閉を巧みに操り、S字切り返し車体を逆に向ける
その時だった、継ぎ接ぎの路面が災いしたかBRZが体勢を崩す・・・一気にスピンモードへ
「チィ!・・・このォォォォ!!」
サイドを引きリアを振り回す・・・だが左側面の壁が迫る、車体を止めれず万事休すの状態
そこに左、FDが割り込む・・・
BRZの右フロント部とFDの側面が当たる・・・
「ツゥ!」
FDの車体に衝撃が伝わる、FDが・・・結花が意図的に当てたのだ・・・BRZを反対方向へ押し出す
逆方向に回し、BRZが体勢を戻す
「ふぅー・・・こりゃ、助けられたかって」
汐留トンネルに入るFDだが、ペースは日常のペースに戻る
BRZも後ろにつく形で付いていく、自走できるとは言えどこにダメージが入ってるかわからない状態でこれ以上のやり合いはお互いに出来ないという判断だろう
銀座を抜け、神田橋の所で環状線を降りる
秋葉原、結花のバイト先の駐車場だ。そこに影浦のBRZも誘導して止めた
喫茶ナナン 裏駐車場
「いやー・・・助かったよありがとう。七海さん」
結花に、お辞儀をする影浦。もしあそこで助けてもらえなければ自分自身もどうなっていたか・・・
「いえ、お互い特に大事じゃなくてよかったと・・・だた外見そーでもないですけどねぇ・・」
BRZのフロントに接触したFD右ドアに触れる結花、凹み傷が出来ていた
「すごいですよね、あそこでのドリフト状態もしかして単走なら決まってた感じですか?」
「どーだろうな、結局繋ぎ目とかそういう所をクリアできる腕前がないとな前人未到の事に挑んだ気はするな・・・・昔な俺は汐留S字ドリフトというどーやったら出来るかって企画を立てたことがあってな、まあ速攻で没になった訳だけがな!」
「そりゃ、そうですよね・・・でも、どーしてですかね、あんまりドリフト走行って興味なかったけどああも魅力的な動きなんですかね。」
「世の中にはそれが性欲よりドリフトっていうぐらい気持ちいいもんだよ。だたやってることは危険でこういうリスクがついてくるってことかな・・・」
BRZのフロント部、FRPのエアロが完全に割れていた。
話をしてる二人のところにキャリアカーがやってくる・・・
「やれやれド派手にやったなぁ二人共」
乗ってきたのは黒川だ、結花が連絡していたのだ。
「事情は聞いたよ、ふーむ・・・FDはいいとしてだ、BRZの方はダメだな」
「え?いやいや、ダメージは右フロントのエアロだけですよ?」
「いーや・・・アライメント狂ってるのわかってると思うが、それだけじゃない、アーム系も逝ってると思うぜ?そのまま走り続けたら車を壊してしまうぞ?BRZの方を載っける」
一目で淡々と車状態を言う黒川、その言葉は間違いがないと納得してしまうほど言い方と言うべきか。
BRZをキャリアカーに載せる
「黒川さん、私はそのまま帰っていいのかな?」
「ああ、FDは全然大丈夫だなんならしばらくそのまま走ったて全然問題ないさ」
「いやいや、直して下さいよ」
「ハハハ、考えておく。それじゃな気をつけて帰れよ!」
笑いながら話す二人、カン高いを音を奏でFDは帰路に付く
「始めてやりとり見ましたけど、きららの言うとおり可愛がってますね」
キャリアカーの助手席で喋る影浦
「そりゃ、可愛い子は可愛がるのは当たり前だろ?・・・かなり仕上がったな、BRZ乗りづらいだろ?」
「ええ、かなり手ごわく、速いBRZになりましたよ。もうFDに負けないぐらいに・・・ただ、わかってはいたけど結局チューニングは幅を縮めてしまうって事を」
「思い通りに動かせないか?まあ、それはどこか辻づまを合わせるしかねよな・・・オールバランスっていうのは改造車はそうそうないからな」
少し、黒川の言葉に引っ掛かりを感じた。チューニングという言葉を彼から聞かない・・・
「とりあえず、この車を仕上げた場所までは持っていてやる。後はアンタに任せる」
「助かります」
キャリアに載せられたBRZ、時間と大金をかけた車も走りのミスで一瞬で全てが台無しになる時がある
だが戦闘機として作られた歪な車は、走らなければ存在そのものが無意味なものになる・・・
罪悪感、感情を燃やして踏む・・・勇気が、いや愚かな行為を煽られるそれが、チューニングカー
地上を這う最速を求める戦闘機なのだ・・・




