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邂逅

「ふー……」

 保安官オフィスから十分に離れ、裏路地に入ったところで、エミルと、共に逃げ出した他の男たちとが、ようやく立ち止まる。

「いやぁ、助かったぜ。流石に真っ向から煙幕ドカン、ってんじゃバレバレだからな。アンタがちょうど良く暴れてくれたから、うまく行ったってもんだぜ」

「そりゃどーも」

 馴れ馴れしく手を差し出してきた赤毛の男に、エミルは肩をすくめるだけで返す。

「ありゃ」

「あたしもあんたも、お互い利用し合っただけでしょ? それでなんで、仲良くしなきゃいけないの?」

「つれないねぇ。俺にとっちゃ命の恩人なんだし、せめて名前だけでも教えてほしいんだけどなぁ。

 俺の名はアデルバート・ネイサン。アデルって呼んでくれ」

「あっそ」

 ぷいと顔を背け、立ち去ろうとするエミルに、アデルは「ちょ、待ってくれよ」と呼びかけた。

「何よ?」

「アンタ、もう数日はここに滞在するつもりだろ?

 その格好とさっきの腕を見りゃ、どう考えてもアンタ、賞金稼ぎだ。狙うはアレだろ、『デリンジャー』だろう?」

「はぁ?」

 振り向いたエミルに、アデルはまくし立てる。

「とぼけようったってそうは行かないぜ? 実は俺も、この辺りにそいつが現れたってうわさを聞いたんだ。アンタと同業者なんだよ、俺。

 だからさ、俺とアンタとで一緒に『デリンジャー』探しして、見付けて仕留めるなり捕まえるなりしたら、きっちり賞金を折半! どうだろう?」

「嫌と言ったら?」

「話はそれまでさ。それ以上は無い」

 アデルは肩をすくめつつも、なお話を続ける。

「だけどもさ、さっき捕まった通り、この町にゃ別の、ヤバ気なヤツらもいる。

 この町であれこれ探し物しようとしても、十中八九あいつらが邪魔してくるだろうし、賞金首がこの町にいると知れりゃ、あいつら多分、横取りしようとしてくるぜ?

 ただ単に滞在するにしてもさ、このまま一人でいるってんじゃ、二日と経たないうちにヤツらに捕まってあれやこれや……」「男のくせに、よくもまあそんなにベラベラしゃべれるもんね」

 アデルの話を切り上げ、エミルはこう応じた。

「でもあんたの言うことも、もっともね。一人でブラブラするには、この町は物騒過ぎるわ。それに賞金首がいるって聞いて、それを放っておくなんてもったいないし。

 いいわ、手を組みましょう。賞金はあんたが言った通り、半々で……」

 と、それまで黙っていた他の2人のうち、まだティーンに見える金髪が手を挙げた。

「お、オレも一枚かませてくれよ! 『デリンジャー』って言や、8000ドルの賞金首じゃねーか! さ、3人で割っても、えーと、一人当たり2000くらいは……」

「8000割る3は2666ドルだ、アホ。……お前は?」

 名前を聞かれ、金髪はこう答えた。

「ディーン・マコーレー、に、25さ!」

「嘘つけ。そのそばかすだらけの真っ赤な頬っぺたで、20超えてるわけねえだろが」

「……じゅ、19」

「それも嘘ね。あたしの見立てじゃ、せいぜい16くらい」

「うっ、……あ、ああ、そうさ。姉御さんの言う通りさ」

 嘘を簡単に見抜かれ、ディーンはしゅんとなる。それを受け、アデルがやんわり諭そうとする。

「賞金首にゃ多少詳しそうだが、坊やには荷が重い仕事になるぜ? 8000ってのは伊達じゃねえ。これまでに17人を殺した凶悪犯だ。しかもあいつは……」「かっ、覚悟の上だ!」

 ところがディーンは声を荒げ、アデルに食ってかかる。

「他に金がポンと稼げる手段なんかねーんだ! そ、それともお二人方、この坊やを荒野に置き去りにしようってのか!?」

「情けないこと言うわね」

 呆れるエミルに対し、ディーンは開き直る。

「情けなかろうが何だろーが、生きるためだ! そーやってオレはこの2年、放浪してきたんだ! 笑いたきゃ笑えっ!

 だがな、放浪してた分、腕はそれなりに立つんだぜ! いいのか、いざって時に『ああ、あの坊やを雇っておきゃよかった』って後悔してもよぉ!?」

「悪いがお断りだ。坊やの腕なんて、たかが知れてる。

 ケガしないうちに、とっととこの町から出て行った方がいいぜ」

「うー……っ」

 ディーンはそこで口ごもり、それ以上何も言い返さずに走り去っていった。

「じゃ、決まりだな。よろしくな、……えーと」

「ミヌーよ。エミル・ミヌー」

「オッケー、よろしくミヌー」

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