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修羅場くぐり

 若者たちは拳銃を見た途端、顔色を変える。

「てめえ……」

 そして一様に、彼らも拳銃を抜く。

「まさかてめえが、……か?」

「違うってば。違うけど、無理矢理脱がされて裸にされるのなんて、嫌だもの。

 お金だって、1セントもくれそうにないしね」

「ふざけんな、勝手なことばかりべちゃくちゃわめきやがって……!」

 若者の一人が拳銃を構え、エミルに狙いを定める。

「それはあんたたちでしょ? ……ねえ、一言だけ忠告しておくけど」

 エミルも拳銃を構えつつ、こう続けた。

「あたしに物騒なものを向けて、無事でいられた奴はいないわよ」

「抜かせッ!」

 若者はそのまま、拳銃の引き金を絞る。

 が――次の瞬間、若者の拳銃はぼごん、と鈍い音を立てて腔発する。当然、銃を握りしめていた若者の右手も無事では済まず、親指と人差し指が細切れになって吹き飛んだ。

「う、……あ、あが、ぎゃああッ!?」

「だから言ったじゃない」

 若者が引き金を引くその瞬間に、エミルがその銃口に向かって銃弾を撃ち込んだのだ。

「さあ、どうするの? このままガンファイト? それとも素直に出て行かせてもらえるのかしら?」

 残った若者たちは、床をのたうち回り悶絶する仲間と、拳銃を向けるエミルとを交互に見比べるが、それ以上の行動をしない。どうやら怒りと恐れが拮抗し、攻撃をためらっているらしかった。

 それを見抜いたエミルは、続けざまに弾をバラ撒こうと構える。

 と――ボン、と言う音と共に突然、部屋中に白い煙が上がった。

「なっ……!?」

「なんだ、こりゃ!?」

「げっほ、げほっ」

 突然の煙幕に、エミルも困惑する。

「一体なに、これ……?」「おい、お嬢さん」

 これも突然、彼女の背後から声がかけられた。

「逃げるが勝ちってヤツさ、一緒に来いよ」

「え? ……ええ、そうね」

 一瞬戸惑ったが、言う通りである。

 エミルは声に従い、そのまま外へと逃げ出した。


「げほっ、ごほっ、……くっそ」

 煙が薄まってきた頃には既に、連れてきた余所者たちの姿は無かった。

「逃げられた、……か」

 若者たちは、一斉に顔を蒼ざめさせる。

「このままじゃ……、まずいぜ」

「これが知れたら、『ウルフ』の兄貴に……」

 と、部屋の奥から落ち着いた、これも若い男の声が聞こえてくる。

「ああ、まずいな。非常にまずい」

「……う……!」

 若者たちは声のした方を振り返り、そして一様に敬礼した。

「……うん?」

 声をかけてきた男は、いまだ右手を押さえ倒れたままの若者に目を留める。

「おいおい、大丈夫か?」

「いてえ……いてえよ……」

「そりゃ気の毒だな」

 それを受け――「ウルフ」はそのぐちゃぐちゃになった右手を思い切り、踏みつけた。

「あがっ、あっ、あうあああー……ッ!?」

「この能無しが」

 グリグリと踏みつけたまま、「ウルフ」は仲間を叱咤する。

「あんなアバズレの挑発にひょいひょいと乗って、その隙に全員逃がしちまいやがって。

 使えねえなぁ、お前」

 右手を踏みつけたまま、「ウルフ」は拳銃を抜いて彼の額に銃口を当てる。

「使えない奴は、さっさと処分しないとなぁ」

「や、やめ……」

 パン、パンと二度銃声が響き、若者は動かなくなった。

「……っ」

 真っ青な顔を並べる手下たちに、「ウルフ」はこう続けた。

「俺が何故、こいつを殺したか分かるな?」

「……」

「理由は単純だ。使えない。その上、役にも立たない。

 走りもせず人も乗せず、餌ばかり食うだけの駄馬を飼う農場主はいねえだろ? 違うか?」

「は……はい」

「仰る通りです」

「だろう? じゃあお前たちは何だ?」

「ウルフ」は拳銃を、残る若者たちに向けた。

「役に立つのか? 立たねえのか? どっちなんだ?

 立つって言うんならとっとと探偵を探して、捕まえるか殺すかして来いよ」

「は、……はいっ!」

 若者たちは大慌てで、外へと駆け出そうとする。

「あー、っと」

 と、それを「ウルフ」が止める。

「その前に、だ。こいつをきちんと片付けとけ」

 そう言ってから、「ウルフ」はようやく踏みつけていた右手から、足を離した。

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