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「スカーレット・ウルフ」

 その時だった。

「いらっしゃいませ」

 マスターの声が聞こえ、三人は顔を挙げ、入口を振り向いた。

「……っ」

 振り向くと同時に、三人とも硬直する。

 そこに現れたのは、たった今その話をしていた、疑惑の人物――行商人だった。

「……」

 行商人は深く被ったフードの奥から、ギラギラとした目を三人に向けている。

「何か……、用か?」

 平静を装い、アデルがそう声をかけたが、行商人は答えない。

「……」

 彼の後ろからマスクを着けた男たちが、続々とサルーンの中に入ってくる。

 だが、彼らはこの町で好き勝手に振る舞っていた「ライダーズ」と違い、そのほとんどが30、40を超えた、おおよそ青年とは言い難い、中年の男ばかりだった。

「本隊ってわけか……、『ウルフ・ライダーズ』の」

「そうだ」

 行商人はそこでようやく口を開き、フードを脱ぎ捨てる。

 そこに現れたのは確かにうわさ通りの、まだ30にも満たなさそうな若い男だった。

「もっと時間をかけて兵隊を増やしてからこの町を食い潰すつもりだったが、町長のジジイが手を回してたからな。

 それにお前らもウロチョロしてたし、こりゃどうものんびりしてられん、……と思ってな。今日を以て、この町を消すことにした。

 お前らも町民も、一人残らず道連れにする」

「何故だ? 金だけ奪って逃げりゃいいだろう?」

 アデルの問いに、「ウルフ」はチッチッ、と舌を鳴らした。

「それじゃ駄目だ。俺のことを少なからず覚えてる奴らが、野放しになっちまう。そうなると後々面倒だ。俺も相当目を付けられてるからな、州軍やら捜査局やら、金目当ての探偵局やらに追い回されることになる。そんなのは真っ平御免だ。

 東洋の言葉にこんなのがある。『立つ鳥跡を濁さず』ってな。ちょっとでも痕跡を残せば、そこから俺の正体に感付く奴も出て来る。だからこれまで、俺は俺がいたって言う証拠を消してきたわけだ。評判以外はな」

「なんだと?」

 ディーンの顔に、次第に赤みが差してくる。

「西部じゃもう既に、『スカーレット・ウルフ』は悪魔扱いだ。これ以上の恐ろしい存在はいねえと、皆がうわさしている。

 俺にとっちゃ、それが何より心地いい……! 戦争じゃ人を100人やら200人やら殺しても大した働きと思われなかったが、『ウルフ』を名乗ってからは人口30人、40人足らずの町を潰すだけで、上を下への大騒ぎと来た!

 これだけの爽快感は、他じゃそうそう味わえるもんじゃねえ。これからももっと、俺はこの楽しい楽しい制圧・掃討作戦を続けていく。西部に草一本生えなくなるまでなぁ……!」

 得意げにそう言い放った「ウルフ」に向かって、ディーンが叫んだ。

「ふざけんなああ……ッ! お前一人愉しむために、オレの町は潰されたって言うのかッ!」

「なに……?」

 わずかに目を細めた「ウルフ」の前に、ディーンが対峙する。

「忘れたとは言わせねえッ! オレは2年前にお前らが滅ぼした、バークフォードの生き残りだッ!

 この日をどれだけ待っていたか……! この日のために、オレは何度も地獄をかいくぐって来たんだ!

 ブッ殺してやる、『ウルフ』……!」

「……ほ、お」

 ディーンの口上を聞いた「ウルフ」は――唐突に笑い出した。

「……ふ、っ、……ふふ、ふふふ、くくくく、くく、は、アハハハハあ……っ!

 こりゃいい、こりゃ面白えことになったな!? ひっひひ、ひひひ、仇討ちってわけだ、いひひひ、ひゃひゃひゃひゃあ……!」

「なっ、何がおかしいッ!?」

「おかしくねえわけがねえだろ、くくく……!

 これだ、これだよ……! こう言う『何としてでも俺を殺してやる』って奴が出て来た時が、一番の幸せなんだよ!

 その負けん気一杯、恨み一杯の奴を」

 そこで言葉を切り、「ウルフ」は拳銃を抜く。

「こうやって嬲り殺しにしてやるのがなぁッ!」

 そう叫ぶなり、「ウルフ」は引き金を引いた。

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