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町長令嬢の醜聞

「……なに?」

「ちょっと待って?」

 二人は同時に声を挙げ、そしてエミルが尋ねる。

「あんた、『ウルフ』の話をどこで聞いたのよ?」

「いやー、実はオレも『ウルフ』を追ってあっちこっち旅してたクチでさ。

 で、ここのマスターに根掘り葉掘り聞いたり、町を探し回ったりして、情報を集めてたんだ。

 それでだよ、お二方」

 ディーンはテーブルに身を乗り出し、小声でこうささやいた。

「ちょっと臭う話をさ、聞いたワケなんだ」

「臭う話?」

「ああ。3日前殺されたって言う、この町の大地主で町長でもあったパレンバーグっておっさんのコトなんだけど、そのおっさんには一人娘がいる。

 で、これも聞いた話なんだが、数週間前からその娘さん、誰かにアツくなっちまったとか」

 得意げに話すディーンに対し、二人は冷淡に返す。

「は?」

「何の話してんだよ、お前」

「ま、ま、最後まで聞いてくれよ。大事なのはここからさぁ。

 そんで4日前、つまりパレンバーグ町長の死ぬ前日にだ、町長は娘と大ゲンカしてたらしい。その内容ってのがまあ、屋敷の使用人とかからの又聞きになるんだけど、どうやら娘が誰かと結婚したいって言い出したのが原因らしい。

 そしてその晩に町長は殺され、翌朝になってあの給水塔に吊るされてるところを発見された、……ってわけだ」

「だから?」

「分かんねーかなー、つまりさ、その娘のホレ込んだ相手ってのがもしかしたら、『ウルフ』なんじゃないかってコトだよ。

 娘との恋路を邪魔された『ウルフ』は怒りのあまり、町長を惨殺! ああ、何と言う悲劇! ……って話だろ、どう考えても」

「飛躍し過ぎね。元々、町長は『ウルフ』を捕まえようとしてたんだし、殺されたのはその報復でしょ」

「それにしたってケンカしたその晩に、だぜ? 偶然にしちゃ、出来過ぎだろ?

 逆に言えばよ、それまでにも町長は『ウルフ』探ししてたはずだろ? じゃあケンカするより前に殺されても不思議じゃない。ところが何だってその日に殺しにかかったか? オレの仮説がたとえ間違いだったとしても、確実にそのケンカの内容に、『ウルフ』を動かすだけの何かがあったんじゃないか、……と、オレはにらんでる」

「……ちょっとばかし強引な理屈もあるが、確かに臭うな」

 ここまでずっと、むすっとした顔をしていたアデルは一転、真剣な目つきになる。

「色恋云々は置いといても、詳しく聞いてみるくらいの価値は、確かにありそうだ。

 行ってみるか。場所は知ってるか、坊や?」

「ディーンって呼んでくれよ、アデルの兄貴。勿論知ってるぜ」

「よし、行こう。……ミヌー、お前も来るよな?」

「……ま、行くだけはね。それで結局手がかりがつかめなかったら、あたしはこれっきりにするわよ」

「ああ、いいとも」




 十分ほど後、三人はパレンバーグ邸を訪れた。

 しかし娘との面会を打診したところ、応対したメイドからはにべもない答えが返ってきた。

「お嬢様は現在、心労により伏せっておられます。申し訳ありませんが、お通しすることはできません」

 これを受けて、アデルは得意の口を使った。

「そっか。いや、俺たちはただの余所者なんだけども、何でもつい先日、ここに住んでた町長さんが亡くなったって言うじゃないか。さぞやお嬢さん、悲しんでるだろうと思ってな。

 僭越ながら贈り物でもして、少しでも心の安らぎになればと思ったんだが……、そう言う事情じゃしょうがないな」

「お気持ちだけ、お伝えしておきます。お心遣い、誠に感謝します」

「ああ。……で、これも小耳に挟んだんだが、お嬢さん、町長さんとケンカなさったんだって? さぞ心を痛めてるだろうな、謝る機会を永遠に失ったわけだし」

「ええ、まあ。……内容については、気軽にお話できるようなものではありませんが」

「ああ、うんうん、そりゃそうだ、そんなのは言っちゃいけねえや。

 しかしそれにしても、町長さんがそこまで怒るような、そんな話だったのかい? 相当カッカしてたって聞いたが」

 当たり障りなく、しかし「これくらいの話はしても大丈夫だろう」と思わせる範囲で、アデルはメイドからそれとなく、状況を聞き出していく。

「いえ……、内容は本当に言えませんが、私共が傍で聞く限りは――まあ、確かに突然『結婚したい人ができた』と聞かされて、仰天しない親はいないでしょうけど――あれほど激昂されるとは、思いもよりませんでしたね」

「ふうん……? 相手も当然、その時言ったんだよな?」

「いえ」

「ほう? 相手の名前も言ってないのに、結婚したいって言った途端に怒り出したって言うのか?」

「と言うよりも、私共も旦那様もその際、お相手の名前しか伺っていなかったのですが、その名前を耳にされた途端、旦那様は顔を真っ赤にして、……あ、と」

「おっとと、危ない危ない。それ以上はこれ、だな」

 そう言って人差し指を唇に当てるアデルに、メイドはクスっと笑った。

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