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サルーン・ミーティング 2

「ちぇ、見抜かれたか」

 サルーンに戻ったところで、エミルはアデルの真意を確認した。

「ああ、そのつもりだ。まさか今更アンタに『4000ドルはやっぱり渡せねえ』なんて言えないからな」

「そりゃそうよ。仮にあんたが無理矢理そんな話に持ってくつもりだったら、あたしはあんたを撃ってるわね」

「だろ? そりゃ御免だし、かと言ってこのまま東部に帰ったら、流石にどやされる。

 そんならもう一人賞金首を仕留めて帰れば、金は予定通り納められるし俺の評価も上がる。アンタもさらに8000ドル儲けられる。どこを向いても美味しい話だ。

 ってことで、もう一回手を貸してくれよ」

「……図々しいったら無いわね。しかもその計算だとあんた、4000ドルもピンハネする気じゃない。

 ま、確かに美味しい話ではあるわね。いいわ、もう一仕事してあげる」

「ありがとよ、ミヌー。……ふあっ」

 握手を交わしたところで、アデルが唐突に欠伸をする。

「流石に『デリンジャー』相手で気が張ってたせいか、ちょっと疲れちまったな。明日も早く出るつもりだし、もうそろそろ寝るとするか」

「そうね。あたしも疲れたわ」

 そう言って両手を上げ、背を伸ばすエミルに、アデルがニヤニヤとした笑顔を向ける。

「どうだい、多少は気心も知れたわけだし、今夜は一緒の部屋に……」

「どうだか。あたしにとってあんたは今も、ただのお手伝いでしかないわ。

 おやすみ、アデル」

 エミルは昼と同様、ぷいと背を向けて席を立つ。

 背後から、アデルのしょんぼりとした声がかけられた。

「……ああ、おやすみ。明日は7時に起こすよ」

「ありがと」




 そして夜は明け、朝――。

「起きろ! ミヌー、大変だ!」

 アデルが慌てた様子で、エミルの部屋の扉を叩いていた。

「んん……むにゃ……何よ、うるさいわね……」

 部屋の時計を見ると、まだ6時をほんの少し過ぎたところである。

「ふあ……、何かあったの?」

「あったなんてもんじゃない! 昨夜の坊やたちが、あの給水塔に吊るされてるんだ!」

「……えっ?」


 二人が急いで給水塔に向かうと、そこには既に、何人かの町民や野次馬がたむろしていた。

「……」

 町民たちは無言で、給水塔に吊るされた人間を下ろそうとしている。

 吊るされていたのは、保安官オフィスで死んだ若者と、「デリンジャー」に殺された2人――そしてアデルの言った通り、昨夜アデルの口車に乗せられ、「打倒『ウルフ』」を唱えたあの2人だった。

「まさか? 昨日の、今日でしょ?」

「ああ……。俺たちが思っていたよりずっと早く、『ウルフ』は手を回してきたんだ。

 ほんの少しの反発も、反乱も許さないように、……ってな」

 昨晩の、アデルに焚き付けられ意気込んだ二人の顔を思い出し、エミルは嫌な気持ちになる。

 そしてそれは、アデルも同様だったのだろう。

「胸糞悪いぜ……。俺がそそのかさなけりゃ、あいつらはまだ、生かされてたかも知れない」

「……かもね」

 それ以上何もすることはできず、二人はサルーンに戻った。




 出鼻を最悪の形でくじかれ、二人は黙々と朝食を口に運ぶ。

「……どうしたもんかね」

 スクランブルエッグをさらい終えたところで、アデルが口を開く。

「どうもこうも無いわよ。仕掛けようにも、あいつはその度に、人を殺してる。何かする度に人が死ぬんじゃ、やってらんないわよ」

「……だな。これじゃまるで、俺たちが疫病神だ」

「実際そうでしょ。あんたがあの二人をあおったのは事実だし、それであいつらは殺されたのよ」

「……言うな」

 アデルは食後のコーヒーに手を付けようともせず、うなだれている。

 それを見て、エミルはこう諭した。

「あたしたちじゃ到底手に負えないわ。諦めた方がいいわね。あんたも手を引きなさいよ。

これ以上下手に深入りしたら、今度はあたしたちが吊るされる羽目になるわ」

「ぐっ……」

 アデルはうなだれたまま、悔しそうにうなった。


 と――落ち込む二人の着くテーブルに、ガタガタと騒々しい音を立てて椅子を引きずり、座り込む者が現れた。

「よぉよぉお二人さんよ、どうやら大分へこまされちまったらしいな?」

「あ……?」

「……あら、あんた」

 喜色満面でテーブルに着いたのは、あの金髪碧眼の小僧――ディーンだった。

「あそこで皿拭いてるマスターから聞いたぜ、しくじって2人死なせたってな」

「……おい、小僧」

 アデルが顔を挙げ、ディーンをにらみつける。

「俺は心底、気分が悪いんだ。そのしまりのねーツラを、とっととどこかへやれ。さもなきゃ俺が死なせるのは2人じゃなく、3人になるぞ」

「ま、ま、落ち着いてくれよ。ほら、ミヌーの姉御もそんな怖い顔しないでさ」

「何の用よ? あたし今、とてもじゃないけどデートや仕事なんか、請ける気分じゃないんだけど」

「そこさぁ」

 ディーンはニヤッと笑い、こう続けた。

「もしかしたらまだ、『ウルフ』に一発食らわすチャンスが残ってるかも知れないぜ?」

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