土下座と契約、保健室
どうするかと言ったところで、俺に出来ることなんて限られてる。
まず、俺が一番最初にしたことは土下座だった。
自分で言ったことのはずなのにいきなり土下座なんて情けないだろうとは思う。が、しかし今回の目的はタカミヤさんの緊張を解そうとしただけだ。そう考えれば、目的は既に達せられたと言える。
その結果、タカミヤさんの怒りの状態がムカ着火インフェルノになってしまったのも致し方無かったと言える(暴論)
土下座。日本人の伝統芸にしてお家芸、その存在は海外にも広く知られ、日本三大芸の浮世絵、ハラキリブレード、ドゲザと言えば有名である。
嘘だ。
そんなわけはない。ハラキリブレードはそこまで大層なものではない。
とにもかくにも、土下座だ。
「すみません、調子に乗りました。どうか言い訳をさせて下さい」
「分かりました。聞いてあげましょう。言ってみなさい」
『……わーお』
そこで俺は、緊張を解すためとかこれは仕方なかったんだとか適当な言い訳をつらつら並べ立ててみた(最低)
「……分かりました。お気遣い感謝します。今の話、信じてあげなくもありません」
「ほ…本当ですか!?」
気分は女王陛下に粗相をはたらいた一般人である。
「その代わり……一発、殴らせろ下さい」
くっ……!だがしかし、このパンチ一発で済むなら安いもの!
こちとらかかっているものは命だ。そのためなら右頬だろうが左頬だろうが、なんなら腹パンすら笑って受け入れる覚悟だ。ドMか。
「か……構いません」
ぺちーん!
瞬間、頭頂部を丸められた雑誌みたいなものではたかれた。
か、軽い!なんてご慈悲!
顔を上げると、呆れ顔でこちらを見るタカミヤさん。手には読み通り丸められた雑誌のようなもの。
「はぁ……このくらいにしておいてあげます。それで?私の緊張を解すために、あ、あんなことまで持ち出すなんて、一体何のためです?」
「そのですね……私としましてはですね。契約をですね?してほしいんですよね?」
「ほう?意図はなんです」
「いや、故郷には少し帰りたくなくて……」
「……それで、私の"一生の相棒"にしろと?」
「いやぁ……それはもう、本当に申し訳ない限りなんですけどぉ……」
"一生の相棒"あたりがすごく強調されてる……。そう聞くとすごい酷いことをしてるみたいだな。それともしているのか?
そこでタカミヤさんは、諦め気味のため息を軽くついた。
「しょうがないですね……。喚び出してしまった私も私ですし……それにいい加減、保健室を間借りし続けるわけにもいきません。契約、しましょうか」
「お、おお!ありがとうございます!ありがとうございます!」
ミッションコンプリートぉ!
『良かったねぇ……』
「そこまで喜ばれましても……。さっきのことで少し、不信感が募りましたがあなたは悪魔族なんですよね?……自惚れじゃなく私は人間の中でならそこそこの実力者で通っています。……いいんですか?」
「いいって、俺の実力が追いついてないかもしれない、とか?それはそっちの方がいいのか?って感じだけど」
『この変な察しの良さ……怖い怖い』
『マリーさっきからうるさい!』
「分かっているならいいんです。……じゃあさっさと済ませちゃいましょう」
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