カラオケと魔法陣
四月六日。ウチの学校はまだ春休みだ。高校二年である俺にも、宿題などは出ていない。そもそもあれって小学生くらいまでだったか?
そんなわけで今日も今日とて家でゴロゴロしていた俺であるが、流石に暇になってきた。
平日なので、昼の番組はそんな面白くないし。ほら、いいとも終わっちゃったし…。
ゆえに暇になった俺は外に行くことにした。ケータイで軽く友達を誘ってみると、来るらしい。
「カラオケでいいか……と」
カチカチっと操作して、ポケットにしまう。
外に出ると、日差しが出て長袖だと少し暑かった。
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「よーっす」
待ち合わせ場所で時間を潰してると、待ち合わせの相手はやってきた。
石谷春樹。超イケメンで勉強出来てスポーツ出来てしかもハーレムまで作ってるというまるで物語の主人公のような奴。
そんな奴となんで俺が仲良いかと言うと……まあ特に理由なんてないんだけど。
たまたま趣味があって(アニメの)たまたま嗜好があって(ラノベの)たまたま席が近かったからだ。
てゆかなんでオタクなのにモテんだよてめえ……(偏見)
まあいいんだけどさ。
「なに、またお前マキブ?飽きねえの?」
「お前だってフルブ時代はよくやってたじゃねぇか……。エクバからやってる身としては簡単にやめられんのだ」
「お、おう……まあカラオケ行くなら早めに移動しようぜ。予約しねえとまた待たされるぞ」
「あいあい」
一理ある。とりあえずこの1プレイ分は捨てゲーするか……。
そう思って立ち上がる。一緒にゲーセンを出て歩き出した。
「しっかしあれだな。ホントに俺ら高校入ってからほとんどカラオケとゲーセンしか行ってねえな……」
春樹がそんなことを言ってくる。嘘つけ、てめえは女の子たちと仲良く海だの遊園地だのプールだの行ってたろ……。
「……んだよ。その不満そうな目は。俺ら二人って意味だろ?」
「気持ちわりいな、ほもかよ」
「あ?もっかい言ってみろてめえ。押し倒すぞ?」
「押し倒すのか……アイス奢るからやめてくれ」
「了解した」
いっつもこんな会話しながらカラオケ行ってるのもきっと俺らくらいだな……。
そんなことを考えながら歩いていると、カラオケに到着。早めの時間に来たので待つこともなく、スムーズに通された。
このあと滅茶苦茶歌った。
カラオケで滅茶苦茶歌った帰り道。春とはいえもう8時、辺りは一気に暗くなっていた。
「あー喉痛え……とりあえず帰ったら勉強しねぇとなぁ…」
「!?」
驚愕せざるを得ない。貴様、勉強していたと言うのか!
逆に春樹は俺が驚いたことに驚いたようだ。呆れ顔でこちらを見てくる。
「お前……ちゃんと勉強しろよ……。すぐ受験生だぞ?華麗に合格してみろよ、あの漫画みたいに」
「なんだよ、エロ同人か?」
「ちげぇよ!」
二人で夜にも関わらず馬鹿騒ぎしながら歩く。……ぶっちゃけすげぇ迷惑だろうなこれ。
俺たちは歩いてカラオケに行っていたので、帰りももちろん歩きだ。住宅地をテケテケ歩いている、と。
…………?
「なぁ、春樹」
「んぁ?」
「お前、なんか足元光ってねえか?なに、漏らしたの?」
「なんでそうなるの!てゆか光り輝いてる時点でおかしいだろ……ってうぉあっ!」
ふと春樹の足元を見ると、なぜか春樹の足の下に魔法陣らしきものが……って。
「うおわあああああああああ!!こっちくんなこっちくんな!お前そっから動くなよ絶対だぞ!」
「おいなに言って……て、お前これもしやだけどさぁ……」
どうやら奴にも心当たりがあるらしい。
「ふむ、なんだ?聞いといてやろう」
「これ、あれじゃね?異世界召喚っつーか、勇者フラグ?」
「じゃあな、いってらっしゃい」
瞬間、春樹が俺に飛びかかってくる!
「はーっはっは!俺がいなくなったら寂しかろう!?よーし抱きしめてやるから一緒に行くぞ!」
「だれが行くか!てめえ一人で行ってこいよ!んで世界でもなんでも救ってハーレム作って向こうの墓に骨を埋めろ!俺を巻き込むな頼むから……ってほわあああああああああ!!」
なに、なに!
春樹の足元にしかないと思われていた魔法陣が、今度は逆側からなんか攻めてきた!てゆか怖っ!暗い中でなんか光るもんがこっちに迫ってきてるんだよ!
「お前も、お迎えのようだな……んじゃ先に行って待ってるぜ!」
春樹はそろそろこちらにいられるのも限界だと思ったのだろうか、キランっと歯を輝かせて消えていった。
んで、直前まで春樹にしがみつかれてた俺はあえなく迫る魔法陣に激突した。
あふん。