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名ノ神  作者: 白紙
8/15

鬼ノ列 壱

もうすぐ七夕だね、とヨカが呟いた。


「それがどうされました?」

「んー。確か、その日に『鬼行列』が来るって、去年コンちゃんが」

「ああ、もういらっしゃるのですか」


社の縁側。

そこで、ヨカとギョウが並んで茶を啜っていた。

ヨカは、すこし汗を拭って息を吐く。


「お酒と漬け物を用意しなくちゃ。あと、障子を張り替えて、それから……」


対してギョウは、一切汗をかいておらず、涼しげな顔で言った。


「今年は、七夕に立ち会われないので?」

「うん、彦星ちゃんと織姫ちゃんは、天照ちゃんに任せるつもり。でも、あの子は夜更かし苦手だから、ちょっと心配かなー」


ケタケタと、ヨカは笑った。

周囲は、ジンジンと蝉の音が心地よく響いている。


「夏だねえ」

「夏ですねえ」


ヨカはうちわを取って、緩く胸元を扇いでいる。


「コンちゃん達、元気かなあ。早く会いたいな」

「ですなあ」


すぐそばの杉の木を見ると、マツリと天狗が木についた蝉を捕まえていた。


「天狗ちゃんもマツリちゃんも、元気でいいなあ。暑くてまいっちゃう」

「小川に涼みに行きますか?」

「そうだね、今度みんなで行こっか」


ヨカは少し笑って、


「ひとまず、七夕まてしばらく『名ノ神』のお仕事はお休み。ギョウちゃんも好きに遊んでていいよ」

「かしこまりました」


りん、と。

吊ってあった風鈴が、透明な音を奏でる。


「夏だねあ」

「夏ですねえ」


老人と神の、穏やかな溜め息が聞こえた。


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