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名ノ神  作者: 白紙
2/15

社ニ住マフ者

ーーーーだとさ」


辺りを背の高い草木に覆われた、廃れた社。

その中から、人の声が響く。


「そんなもんじゃない?」


数は2つ。

若い男と女の声だ。


「私みたいに得体の知れない人に流れる噂なんて、そんなもんだよ」

「そうなのかねえ」

「そもそも、私は人じゃないけど 」


ケタケタと、女の声が笑った。


「元々は人だろう」

「元々はね。でも祀られちゃったから」

「祀られる、か」


声の主は、社の中の座布団に座していた。

一人は、ぼろぼろの社には似つかわしくない、美しい着物を着た女性。

もう一人は、鳥のクチバシを模した面で顔を覆っている少年だった。


「そそ、祀られる。天狗ちゃんは分かる?祀られる、の意味。これは祀る、という言葉の…………」

「五月蝿い。俺はもう子供じゃない」


天狗と呼ばれた少年は、ふてくされながら言った。


「そっか、もう天狗ちゃんも大人かあ……もう少し子供でいたくない?」

「嫌だ」

「えー、そんな生意気な天狗ちゃんやだー。”かみなりこわいからいっしょにねよー”って言ってた天狗ちゃんに戻ってよー」

「黙れ」


少年ーー天狗は、立ち上がって履いていた下駄を鳴らす。

ごん、と腐った床板から鈍い音が響いた。


「履物はちゃんと脱ぎなさい」

「はいはい」

「はい、は一回」

「はーい」


天狗は渋々と下駄を脱いで、適当に放り投げる。

その下駄が床にぶつかる直前だった。


「坊ちゃん、下駄は投げるものではありませんよ」


低く、年老いた男の声。

気付けば、下駄は消えて、代わりに長い髭を生やした、背の高い老人が立っていた。


「五月蝿い、ギョウ」

「なりませんぞ、坊ちゃん。そのような言葉遣いでは」

「だから、五月蝿いってば」


ギョウと呼ばれた老人は、困ったように顎をしゃくり、座ったままの女性に話しかけた。


「あなたからもなんとか言ってやってください」

「ごめんねギョウちゃん。天狗ちゃんを許してあげて」


ギョウは大きく息を吐いた。


「ああ、いつから坊ちゃんはこんなにやんちゃに………」

「いい加減に坊ちゃんって呼ぶのを止めてくれ、恥ずかしい」

「まあまあ、二人ともやめよ?」


女性は、ギョウの肩を抑えてそう言った。


「それより、もうすぐ私、湯浴みの時間だから。その間、お客様が来たらおもてなしお願いね」

「こんなところに参拝なんて来ないだろう」


来るよ多分、と女性は呟いて、帯を緩めて着物を脱ぎ捨てた。


「お前は節操が無い」

「いいじゃん」


女性は裸のまま、息を思い切り吸い込んで、こう言った。



「さて!名ノ神様として頑張りますか!」

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