何かの間違いで旗野上がスタメン
「旗野上、今日から一軍な」
「分かりました」
打撃成績が相変わらずイマイチなのだが、またもスランプになった打者がいたため俺が一軍に上がることになった。
「ちっ。なんであんな奴が上がるんだよ」
「打撃はからっきしのくせにな」
っとよく愚痴を言われる。これは本当である。いつものことだ。
だが、尾波より打撃成績が悪く、守備も良くない、守れるポジションも少ない。ただ練習するだけ、今日の試合で安打を放つだけを考えている選手が一軍に上がれるわけないだろう。っと内心で俺も黒く吐いている。
俺は単にチームに必要とされる選手になりたくて、なったからこそ一軍に上がれるんだ。
一軍に上がれるだけでレギュラーになれない。
そーゆう選手なんだ。
そして一軍に合流。
ミーティングにも参加して、スタメンの発表を言い渡される。
「8番、センター、旗野上」
「あ、はい…………えええええええええええええ!!?」
「なんだ?」
「え?俺が、センター…………スタメン?」
「しょうがないだろう、センターの矢代が怪我したんだ。あいつの守備がないのは痛いからお前が埋めろ。お前の方が肩が強い」
いきなりスタメンとか聞いてねぇし!!
つーか、スタメンなんて何試合ぶりだよ。昨年の……8月以来か?確か、ショートだったぞ。
心臓がバクバク動く俺。守備固めよりも緊張する。
そして、今日のゲームがスタートした。
試合は両チーム共に投手戦を予感させる。俺もファインプレーを二つやり、相手にホームを踏ませない。
「うおおー!すげー旗野上!」
「ナイス送球!!」
「さっきのスライディングキャッチも良かったぞーー!!」
やべぇ…………スタメンでのファインプレーって痺れるな、おい。
緊張は今も解けないのに身体が凄く動いて、どんな球でも捕球できて、どんな走者でも捕殺できそうな気で満ちる。
練習が自信に繫がる。
「とはいえ、点がとれないと勝てないんだよな……………」
試合は3対3。7回まで来たところだ。ノーアウト1塁で俺、今日4打席目。
ここまでの3打席では内野ゴロ二つと、四球が一つ。
ここは送りバントで上位に託すのが理想だろう。だが、監督のサインはまさかの強行であった。
「おいおい…………」
強行とはいえ、バスターである。自分の打席成績がしょぼく、相手もバントだろうと思っているからこその奇策だ。
まだクリーンナップに回るのだ。少し冒険にでても大丈夫なのだろう。
とりあえず、俺は監督の指示通りバスターを行った。前進守備ならまさかの奇跡が起こって抜けるかもしれない。
ガキーーーーーンンッ
「あれ?」
そんな気持ちで打った打球はなんと、内野どころか外野の頭も越える。
ツーベースすらじつは言うとないのに、スリーベースを放ってしまった俺。しかも、決勝点。
「うおおおーーー!!旗野上すげーーー!!」
「今日のヒーローだーーー!!」
「打撃も良いじゃねぇか」
あれ?あれ?あれ?
と思った状況の中、俺はお立ち台へと上がっていた。
「今日のヒーローは打撃、そして守備でも二つのファインプレーを魅せてくれた旗野上選手です!!」
「え、え、え、え」
に、二軍ですらお立ち台に上がった事がないんだぞーー!!何を言えば、何を言えば…………。
パニックになっている俺にアナウンサーは質問した。
「旗野上選手、このドッキリをどう思いますか?」
「え?」
「夢です。これは夢なんです」
「なにーーーーーーーーー!?」
混乱と驚きにビックリする俺は起き上がった。
「おわあぁぁぁっ」
まだ…………朝の4時。早すぎる。
そして、落ち着きを取り戻しながら状況を確認。俺はまだ布団の中にいる。そして、俺は未だに二軍にいるという現実…………。
とりあえず、今日はもう眠れそうにない。
早く一軍に上がって夢と同じようなことをしたいと思う。