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会社

 おれの勤める「フラワーショップ花道 松町本部」は我が家から3つ駅を通り過ぎた所にある。この会社、なんと勤めている社員の実に8割強が女性だ。まあ花屋だからしょうがないんだろうけど。だがしかし、花屋であっても営業や力仕事が結構ある。そこで活躍するのが俺達男組なのだ。俺は入社4年目。先輩男子のまあ少ないこと。同僚だって少ない少ない。その数少ない同僚の一人が、

「オハヨ、拓人。」

こいつである。都島ツシマ 鉄也テツヤ。通称

 「テッツン…」

だ。俺とテッツンは同じときに入社したから、仲がいい。しかもテッツンは驚くなかれ36歳の現役パパなのである!まあパパに現役もへったくれもないのだが。テッツンにはヒカル君という10歳の一人息子がいる。拓哉と相性がいいのか、よく「拓哉くん家に行きたい!」と駄々をこねているらしい。

ちなみに恐妻家である。

 「どうしたどうした、情けない声出して。花屋の華、逵 拓人がそんなんじゃOLが泣くヨ!?」

このとおりお調子者のテッツンは36歳には見えない。つまり…中年顔なのである。40代にしか見えない。これは内緒の話である。

 「聞いてくれよぉ。拓哉がさ…」

可愛くて仕方ないんだ…そう言おうとした。

 「た~くっとく~ん!!」

そのとき、急に何かが覆いかぶさってきた。なんだなんだ!?テッツンが苦笑いしている。これはまさか…。

 「戸塚部長…」

えへっと恥じらうこちらの女性は戸塚トツカ 亜矢アヤさん。30?歳の独身OLだ。彼女は俺らの部署の部長でもある。こんな風にお茶目な一面も持ち合わせている反面、仕事になると人格が変わる。要するに、鬼部長…。なのだが、こんなことは口が裂けても言えない。

 「拓人くぅん、この間プレゼントした花束、飾ってくれたぁ?」

今朝拓哉に指摘された花束を贈ってきたのは、この人である。残念ながら俺には花を愛でる趣味がないのでどうしたものかと思案していたのだ。

 「それが…その、飾る場所がなくて。」

 「そんなぁ。拓人くんのようなイケメンが住んでる部屋なんだから、花を飾るばしょくらいあるでしょう?」

 「いやいやほんっとにないんすよ。」

 「どうして?私の贈った花束じゃ、飾れないって言うの!?」

 「いやだから…」

 「拓人くんのばかぁ~」

そういってポカポカ叩いてくるが、小柄な部長はあまり力がないのか全然痛くない。むしろ痛いのは同僚であるテッツンの冷ややかな視線と、OL達のなんだかよく分からない感情がいろいろ含まれた視線である。い、痛い。

 「もうっ!そうだ、私が拓人くんのお家に行って飾ってあげるね!!そうしよっ!!」

 「ええええ!?駄目です、部長。絶対駄目ですよ。」

 「いいえ、行きます。部長命令よ!今日行く。絶対行く。覚悟しててね♪」

部長はバイバイと手を振って駆けて行った。

俺が呆気にとられていると、テッツンが心底同情した様子で俺の肩に手を置いた。

 「おいおい拓人!」

そして溜息をつく。

 「モテモテじゃねえか!」



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