我が家
「おとーさん!!おとーさん!」
「ん~…あと10分…」
俺は布団の中で寝がえりをうった。
「何言ってるんだよ、今日は月曜日だって!!もう7時なんですけど!?」
「…ああああああああ!!!!!!!!」
俺こと逵 拓人は33歳、バリバリのサラリーマンだ。
我が家は駅に超近い割に激安価格の「こりゃま荘」というアパートの301号室に存在する。
そこに、俺と俺の息子の拓哉が住んでいる。
拓哉の母、つまり俺の妻は拓哉を産んですぐこの世を去った。
俗に云う、「父子家庭」というやつだ。
「ふまんな、はくや。へぼうしひまっへ。」
「分かった分かった、分かったから飯口に入ったまんま喋んなって。汚いじゃん。ったく、会社ではモテモテのくせに。」
「大丈夫さ、俺はそんなにもてちゃいない。」
「じゃあその花束は何だよ。」
「ああ、戸塚部長が昨日くれたんだ。きれいでしょ、拓人くんのお家に飾ってってさ。」
「それを世間ではもててるって言うんだよ。」
「そういう拓哉だって筆箱にラブレター入ってたじゃん」
「勝手に見んなよ!」
このとおり、拓哉は絶賛反抗期である。まあ13歳の中学生なんだから、これぐらいが健全だろう。
「やば、遅刻する。行ってきます!!」
「行ってら~」
拓哉は剣道部に所属している。なんでも練習量がダントツで多いらしく、大変そうだ。
そういう俺だって、子供の時から剣道をしてきた。拓哉が始めたのは、確か小学校入学時だ。
「さてと。そろそろ行くか。」