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二十六話 幸運と集団の力

スクロール重ね撃ち(セプテット)Lv2、『拡散(ディストリト)』『付加(エンチャント)』『強化(ブースト)』『増幅(インクレス)』『祝詞(ソーノ)』『高揚(エリゴー)』『応援(アクシリム)』! ――はいパーティ解除して、次ー!」


 現在私は、『始まりの町』の中央広場でひたすらある法則で作った5人組のプレイヤーに次々と補助魔法(バ フ)をかけていた。元の能力が低い為にそこまで劇的な効果が見込める訳ではないが、やらないよりはやった方が断然良い。

 いっそ連結パーティ(レ イ ド)を組めれば効率もぐんと上がるしもっと上昇割合の大きい組み合わせも使えるのだが、あれは残念ながらLv30にならないと参加できない、という制限が存在するので、こうやってちまちま地道にかけていくしかない。


「次ー……は、いなくて今ので最後の人ー? 本当にバフ貰ってない人いないー? 大丈夫ー?」


 声を張り上げて確認してみる。ぐるりと見回してみて……うん、本当に取りこぼしはなさそうだ。とりあえずこれで(あくまでも一時的にではあるものの)戦力的な補強は完了、いよいよ戦争本番のバトルターンへと突入だ。

 私は一度閉じたウィンドウを開きなおしてフレンド一覧を表示し、この短時間でそこそこの数になった中からフォスカーを選んでささやきを選択、チャット中、という意思表示で左手を左耳にあてて頭の中で呼びかけた。


『フォスカー、そっちは何%くらい完了したー?』

『ふ、誰に物を言っていると思っている? とっくに終えて色を付けた予備を作成しているところだ。全く貴様は、』

『了解了解、つまりは十二分ってことだねー。そろそろ相手の姿も見えてきたし、頃合いかなーと思ってー』

『ほう、こちらからでは見えないという事は、貴様の頭脳で導いた予測は正しかったという事だな?』

『まぁねー。出来れば当たってほしくなかったけど、今それを言ってもしょうがないしー。という訳でフォスカー、』


 ここで左手を耳から外し、くるりと背後を振り返った。そこには5人組ずつで固まった、唐突な作戦に戸惑いながらもやる気たっぷりな初心者プレイヤー達。

 ささやきチャットの向こうとこちらの集団、その両方に向けて、私はにやりと笑って言い切った。


「さて、それじゃあ祭りを始めようかー!」






 飛行系モンスター、つまり、鳥系を始めとして亜竜種(ワイバーン)系や空魚系、時折本当のドラゴンが混じっていたりするかなり厄介な部類のモンスター達に攻撃を加えるには、方法は大まかに2つ。

 つまり、こちらが上空に行くか、あちらを引きずり下ろすか、そのどちらかだ。

 そしてそのどちらをするにしても、魔法というのが欠かせない。あちらを引きずり下ろすだけなら遠距離武器でも事足りるが、亜竜種(ワイバーン)系やドラゴンがいると圧倒的に火力が足りなくなるから結局魔法が必要になる。

 が、まぁ、それは普通に飛行系モンスターを相手取る場合の話であって、今回の場合は色々と特殊に過ぎる事情がいくつも存在する。


 それは例えば、今回のこれが大規模襲撃クエスト、つまり、舞台が町近郊であるという事。

 同様の理由で、町の住人の協力が得られる事。

 フォスカーというチート級な反則プレイヤーが居るという事。

 私が大規模襲撃クエストでのモンスター群への対処に慣れている事。


 結果は、というと。


「1から10班まで飛行待機、11から16班は装弾補助、残りは全部地上に散開ー! 親方、打ち上げお願いしますー!」

「おぉっしゃあ! 野郎ども、かかれぇ!!」


 『始まりの町』の住人であるドワーフの親方が号令を響かせる。それに応じ、飛行系モンスター群の方向へ向けられた、人1人くらい余裕で入りそうな筒が火を噴いた。

 打ち出されたのは丸い球。ひゅるるるる……と音を立ててモンスター群の先頭辺りに飛んで行ったそれは、狙い通り、群れの高さ的な真ん中に行ったあたりで、


「流石親方、良い仕事するー。……飛行待機組、戦闘に入ってー!」


 ドォオオン!! と腹に響く音を立てて、大爆発して炎の花を夜空に咲かせた。橙と赤で二重を描く美しい花を背景に、バラバラと黒い影がいくつも地上に落ちて行っていた。

 それに続き、ドォオン! ドドォオン!! といくつもの炎の花が夜空に咲いては多数の影が落下する。落ちた場所には5人一組に纏めておいた初心者冒険者たちが集まり、絶賛フルボッコ中だ。


「飛行系モンスターって、瞬間的な音とか光に極端に弱い奴が殆どなんだよねー。特に飛んでる途中は耐性持ってる奴でも脆くなるしー、あれだけ派手なの至近距離で叩きつけられたら、まー落下してから20秒はまともに動けないでしょー」


 今回、何もかもが足りない中で私が使ったのは、本来なら何らかのオープニングイベントで使ったのだろう花火だ。職人の所を尋ねたところ大量にストックしてあった花火玉に加え、フォスカー特製、当たれば状態異常確実の危険極まりない火薬を使用して作られた花火玉も用意してもらった。

 それを群れの中心に叩きこみ、落下してきてもがいている間にぼこぼこにして、とにかく多い雑魚の数をまず減らす。次に、急に周囲から他のモンスターがいなくなって狼狽したり、群れからはぐれたモンスターを空中戦闘仕様に編成した組で叩く。

 とりあえず、雑魚はこれの繰り返しで何とかなる。飛行系モンスターが厄介なのはひとえに飛んでいるからで、地上に落してしまえば人間補正も手伝って簡単な討伐のお仕事と化すからだ。その楽しそうなさまはまさに祭り。これなら士気も上がってやる気も出て、色々とお得である。

 で、これの繰り返しで何とかならない、中ボス的な厄介な奴はどうするか、というと、


「リーベ、聞こえる? えーと、今あがった緑の花火と黄色い花火の間の……そうそう、お願いー」


 パーティ内会話で、あの4人の中で唯一空中地上関係なく攻撃できるリーベに頼んで倒してもらっている。今のところの私の仕事は、黒い雲のようなモンスター群の中から厄介そうな奴を探し出し、その位置をリーベに伝える事だ。

 レーザー、というより小さな光の柱が大型猛禽モンスターを消し飛ばすのを確認して、私はぐるりと戦場を見渡す。今の所、どこも大丈夫なようだ。願わくば、このまま私は大人しくしていられればいいのだけども。


 けどまぁ、そうそう簡単に勝たせてくれないのが運営の性格の悪い所な訳で。

 『始まりの町』の防壁の上でモンスターの群れを眺める私は、その奥に浮かぶ大きな影を見つけてしまった。

 まだ終わりません。続きます。

 ……が、ストックの方がそろそろ無くなってきました……;

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