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二十一話 幸運と世界の理(コトワリ)

 とりあえず広場に居るままでは更に話がこんがらがって行くと判断して、フェーネ達が取った宿の一室へと移動した。流石に解放された環境の中でステータスを完全に開示する勇気は無い。

 完全個室の中に入ってしっかり鍵をかけてから、しばらくの間あーだこーだと色々議論していた私達4人だったが、私とフェーネのステータスを完全開示状態で突き合わせた所、ようやくそれらしい相違点に気が付く事が出来た。


「……何ですか? この欄……」

「んー?」


 初めに気がついたのはフェーネ。今現在開いているのはステータス詳細で、奥の奥まで行けば実は一般に『隠しステータス』とされているものまで閲覧できる場所だ。もちろんごちゃごちゃと専門用語的なステータス名とそれはそれは細かい数字がびっしりと並んでいるそのウィンドウを、片端からほじくり返しまわる程の気合が無いと見つからないが。

 もちろん今回はそんな奥まではいかず、一番上、つまりステータス詳細を開いてすぐの場所のまま。どこの事を言っているのか、と指先を追ってみると、そこにあったステータス名は『現在の加護』。私のものは“有”で、フェーネのは“無”と簡単に書かれているだけのものだ。

 そのままではよく分からないので『現在の加護』をタッチ。ウィンドウが切り替わり、ずらっとステータス名が並ぶ。フェーネも同様の操作をしたが変化が無かった。存在していないせいだろうか。


「『主神』“契約と友愛”ミスラ。『副神』無し。『最上位精霊』無し。『魂の保護』“死と真財”ハーイデース。『身体の保護』“暗壊と慈愛”ペルセフォネ。――って、あー、分かった、アレだ」


 上から順番にステータスを読み上げていくと、その途中でソレが何か気がついた。……というか、思い出した。


 ようするに、ステータスボーナスの方向性を決めるための指針のようなものだ。『Free to There』の時はまず『始まりの町』でチュートリアルを受け、それが終わると説明が入った。その時に最低限得られるのは『主神』と『魂の保護』と『身体の保護』の3つ、いや、3柱。

 『主神』は全体のステータスに影響、『魂の保護』と『身体の保護』はそれぞれ魔法/物理の攻撃か防御かどちらに偏るかの影響がある。ちなみにいつでも変更する事が可能で、その方法も『加護』を得たい精霊や神の在る場所……まぁ普通は神殿に行って、「私の~~として加護して下さい」と祈ればOKという簡単な物だ。

 ちなみに神にも格と言うものが存在するので、ボーナスの大小は『加護』を受けている神の格に左右される。そして当然ながら格の高い神や精霊の神殿は、ダンジョンの奥とか秘密部屋とか世界の端とか、そういう到達困難な場所にある。

 そして格の高い神や精霊であればステータスボーナスの振り幅以外にも色々と恩恵があるので、レベルカンストしたとしても宗旨替えするのは全く無駄な訳では無かったりするのだ。ちなみに私が『加護』を受けている上記3柱は、一応かなり格の高い神だったりする。

 『主神』はギルドの加護をしている為、加入時点で自動的に。後の2柱は神殿まで行って祈りをささげ宗旨替えした。なんで神殿まで行けたかって言うと、それはもちろん、ディーグ達に引きずられていった先で隠し部屋を見つけ、その中の一角にひっそりと存在していた神殿を見つけたからだ。

 閑話休題。


 とりあえず『加護』について3人にざっくりと説明する。ふんふん、と素直に首を縦に振っていた彼らは、私の話が一通り終わると顔を見合わせて……あれ、なんか青くなった?


「……って事は……」

「やっちまったぁー―――!!」


 沈黙を挟んだと思ったら、呆然と呟く猫獣人(ケットシー)&頭を抱えて叫ぶドワーフ。……あ、今やっと名前思い出した。クルムとキクスだ。

 そんな2人の扱いに困ってフェーネに目を向けると、こちらはこちらで唇をかみしめて悔しそうにしている。……何が何やら。とりあえずまだ冷静そうなフェーネさんに聞いてみよう。


「説明ぷりーずー」

「……塔山へ上った途中で、小さな祠が3つ並んでいたんです。その横に緑色の人が立っていて……近寄ったプレイヤーは何か説明を受けて祈っていたんですけど、私たちは時間を惜しんで先へ進んだんです」

「成程、了解したー」


 つまり、チュートリアルで受ける筈だった加護をすっ飛ばしてきちゃったと。

 と、考えて、私はふとこの世界に来た最初の時を思い出した。突然空中に放り出され、落下した先はギルドの空中要塞。

 ――私の主神、“契約と友愛”ミスラの最も大きな祭壇がある場所にして、私が最も頻繁に祈りと願いとその対価を捧げた場所。

 ……最初に、まさにその場所へ放り出されたのは、本当に偶然なのだろうか?


「…………とりあえず確認するにこした事は無いかー」


 小さく呟いて、私は開きっぱなしにしていたウィンドウを戻った。フレンドリストに移動して、その内の4人を一括してメールの送り先に設定。浮かび上がった半透明の仮想キーボードを叩いて本文を入力。


『や、突然ごめんだけどー。皆さ、最初にログインした時“どこ”に居たー? ログアウトボタンで警告が出たかどうかと、その場所が主神の祭壇付近か、祭壇のある施設だったかどうかを合わせてできるだけ素早い回答ぷりーずー。……あぁ、ちなみに寝てたとか白々しい言い訳しやがったらー…………まぁ、何が起こっても(・・・・・・・)絶対に(・・・)文句言わない(・・・・・・)でよねー(・・・・)。それだけ緊急の用事なんだからー』


 ここまでを一気に入力して流れのままの勢いで送信。

 ……あの戦闘狂()がこんな夕暮れを過ぎた程度の時間に寝ている訳が無い。どうせ5日間いっぱい楽しむつもりで気力の限り戦い続けてるに決まってる。経験上で予想すると、明後日の朝まで目いっぱい暴れ倒した後丸一日寝倒して、あと二日でアイテム整理とか合成とか友人巡りとか拠点への里帰りとかをぎゅうぎゅうに詰め込むつもりだろう。

 ちなみに、脅迫まがいの言葉を入れたのは念のため。言ったからにはたとえどんなに困難に見えても敢行する、という私の性格をしっているあの4人には十分過ぎるとは思うものの、厄介事の匂いがする以上予防線を張っておくに越した事は無い。


 さてこの予想が正しいかどうか、答えを持ってくる筈のディーグ達は、一体どのくらいで返事を返してくるのやら。


 続きます。

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