十二話 幸運と旅路の先
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荷馬車を護衛する事ほぼ半日。本来なら2時間程の筈の道のりを終えて着いたのは、どちらかというと田舎風の村だった。周りには木の柵が巡らしてあるだけの、シンプルと言うか粗末と言うか、若干こころもとない防御体勢だ。入り口に誰かが立っている事もない。
「?」
……微妙に違和感を覚える。確かこの辺りは、ダンジョンが近いのもあってかなり防御が固かった筈だ。自警団の1人も見かけないと言うのはどういうことだろうか。
石造りの防壁こそなかったものの、巡回しているNPC自警団の強さは半端じゃなかったから、うっかり手を出してしまったプレイヤーがボッコボコにされているのを何度も見た事がある。大体3人くらいの集団で巡回している彼らは、村の入り口に誰かくれば迎えに来てくれる筈だ。
「あーやっと着いた……ありがとうございましたデス!」
「んー大したことしてないし、別にいいよー。でもこの辺のは強いから気をつけてねー」
初心者エルフに返事をして、私は村の中へと足を向けた。いくらかはギルドの倉庫から持ってきたとはいえ、1人でこの先のフィールドを突破するには若干無理がある。ポーション類は自作するとしても、その他材料類は買い込んでおく必要があった。
……いやまぁ、途中で拾ったり採集したりしても集められるんだけどさ。流石にこの先はその余裕が無いんだよね。ていうか呑気にそんなことしてたらあっという間に一撃死。もしくは物量で圧殺される。
一応言っておくと、ここまでの武装と準備が必要な場所に町をつくるプレイヤーはほとんどいない。私だって建てた時は正気を疑われた。理論立ててしっかり説明したら大半は納得してくれたけれども。
「おっじさーん、空ビンとか薪とかあるー?」
「あるけど、お嬢ちゃんそんな物どうするんだい?」
「あっははー、私、こー見えても生産スキル持ちだからー」
「へぇ、そうなのかい? そりゃすごい。ってことはまとめ買いの方がいいか?」
「できればお願いー。んーと、160個ずつぐらい欲しいんだけどー」
「…………そりゃまた一気に買って行くなぁ」
NPC売店のおじさん (コボルト)に若干呆れられながらも材料GET。全部アイテムボックスに放り込んで店を出て、村に入った時とは逆方向の入り口に足を向ける。
……あれ? さっきの入り口と比べて、何だかやたら物々しいよ? 自警団ぽい武装した人がどー見ても10人以上いんですけ
「どー…………って、あり? こんなとこで何やってんのリグル」
思考の途中で見えた姿に、つい声が出てしまった。声が届いたのか、不思議そうに振り向いた彼の身長はおおよそ40㎝。背中の透き通った緑色の4枚の羽からも分かるように、れっきとした妖精だ。
上の方で一つにまとめた長い緑の髪が振りむきに合わせて流れる。右手にはその体の大きさに合わせた本を携え、左の腰にはやはりミニマムサイズの杖が携行されている。着ているのは彼のサイズに合わせた葉っぱ製の軽鎧。
名前はリグルリス・ドルス。『Free to There』時代に、私の町の守衛軍(まぁ、自警団みたいなもの)の1人として雇用した覚えがある。いやしかし、ちゃんと目の前に居るのを見ると感動するなぁ。うろ覚えの彼でこれならフォーにあった時、私どうなるんだろう。人格崩壊しないように気をつけないと。
そんな事を考えている間に、リグルは私の事をしっかり認識していた。その顔が最初の不思議そうな物からぎょっとした感じになり、驚愕の顔になった後ふるふる震えだすオプション付きで感激のソレに。
「ら、ら、ら……ラック様ぁあああああ!!」
ちょっと待て、様って何だ。
いきなりあんな風に呼ばれると驚きますよね。