陛下のカツラを守ろうとしたら。
なんでもありです。
夜会にて、陛下のカツラが数ミリ浮いているのが見えたんです…!
これは誰かの悪質な嫌がらせ、もしかしたら失脚させたい連中の罠か何かかもしれません!
すぐにお助けしなければ、と思ったんです。
今のところ、座られている陛下もお隣の王妃様も、参加されている皆さんも気づいておられない様子。
今のうちになんとかせねばと、私はない頭を一生懸命動かしました。
はて、私がなんで気づいたかって?
壁の花として、人間観察してたからですよ。
それ以外にありますか?
……あんまり侘しいことを、本人の口から言わせるのやめてもらってもいいですか?
それでですよ、話を戻すんですが、陛下のカツラがですね、ふよふよどこかに飛んでいってしまいそうだったんです。
きっと誰かの悪戯魔法です。
というか陛下ってカツラだったんですね、知りませんでした。
そこで私は、魔法には魔法だと思いました!
みんなが見ていないうちに、元に戻してしまおうと思ったんです。
だから、カツラを上から押すように魔法をかけようとしました。
それが一番いいかなって。
だから、壁際でボソボソと詠唱しましたよ。
ええ、きっと独り言をぶつぶつ言っている変な奴でしたよ。
でも、そんなこと背に腹はかえられません。
たいして得意でもない魔法を頑張って使いました。
そしたらですね、緊張していたみたいなんです。
だって、陛下に向けて魔法を発動させるんですからね。
慎重に慎重を重ねても足りないくらいです。
だというのに、何を間違ったのか、陛下を飛ばしてしまったんです………。
陛下をぶっ放してしまったんです…!!
カツラを陛下に近づけようと圧力をかけたつもりが、陛下の方を動かしてしまったんです!
カツラから陛下に行くようにしたかったのに、陛下からカツラに向かってしまったんです。
逆だったんです!
しかも、陛下が浮いたのが見えて焦ってしまって、コントロールを見失ったら、陛下がカツラにめり込むように空中を舞ってしまいました……。
終わりました、たぶん人生が。
陛下と王妃様が控えたあと、夜会がざわざわしているなか、私は近くにいた巡回中の騎士に自首しました。
とんでもないことをしでかしたのですから、当然です。
このまま牢屋行きだと思ったのに、なぜか通されたのは両陛下がおられる控え室でした。
「いや〜、助かったよ!ありがとう!」
どういうことでしょう、お叱りどころかお礼を言われてしまいました。
陛下はガバガバと豪胆に笑っておられるし、王妃陛下は呆れています。
「ご自身に合わないカツラをなさるから、そうなるんですよ」
「だが、彼女のおかげでみっちりカツラがついておるぞ!これなら取れにくいだろう!」
どうやら私の魔法でめり込んだために、カツラがより密着して陛下はご満悦だったのです。
なぜかお喜びいただけているので、命拾いです…!
「どうも倅が魔法で遊んどったようでな。君のおかげでカツラがバレずに済んだよ!このことは他言無用でよろしく頼むな!」
大きいクマのようなイケオジ陛下にウィンクをいただきましたので、私は必死に頷きました。
王妃様も、ありがとうと言ってくださいました。
どうやら5歳の王子殿下が、魔法遠隔操作で遊んでおられて、その標的が陛下のカツラだったみたいです。
心臓に悪すぎです。
でもよかったです、嫌がらせや陰謀の類じゃなくて。
私の早とちりでした、本当にすみません…。
緊急時以外、夜会で魔法を使うのは禁止のため、後日始末書の提出だけ求められました。
それ以上は、お咎めなしでした。
はあ、よかった!
さて、私も夜会の壁の花に戻りましょう。
自分の身の丈に合わないことはするもんじゃありませんね。
次からは、私よりも魔法が得意なお兄様にお願いすることにします!
了
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