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【連載版】神様からもらった能力は『異世界語がわかる』だけだったけど案外やってイケる  作者: 赤ぱん金魚


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32 天空人

 二日後。

 ベーリーの街にあるミラン公爵家の別荘にやってきた。

 『ラベンダー亭』は、臨時休業。

 会談に加わるのは、俺とアン。

 アンも席を与えられた。

 何か気になることがあるというので特別だった。

 アンに、「成長してない」なんて言ってたミランさんだが、アンを高く買ってはいるみたいだ。

 ただし、身分は伏せて発言も控えるよう厳命されている。


 マリーさん、ルージュ、シルバも来ているが、別の部屋で待機していた。

 話が円満にまとまった時は、宰相も絶賛したマイアのスープなどの料理を振る舞う予定になっている。

 ということで、朝早くに別荘へ来て貴賓室で待っていると、


「来た」


 ミランさんの部下の人たちが窓から空を見上げた。

 何だと見てみれば、空から人が降りてくるところだった。

 全員羽衣みたいな服を身に纏い、背中に生えた翼を羽ばたかせていた。


「すげ〜。飛んでるよ。あれが天空人?」

「そうです」


 とアン。


「天使みたいだな」

「本人たちは、自分たちを天使の如く優れた者と考えていて、プライドが高い人たちばかりです」


 なんか面倒そう。

 天空人一行が門の前に降りると、公爵家の家人が彼らを中へと案内した。

 しばらくして、


「皆様お着きでございます」


 の言葉の後、扉が開いて家人の男性が一行を部屋に招き入れた。

 立ち上がって迎える。

 天空人は、五人。

 みんな頭に金の輪を付けている。

 天使の輪というより、西遊記の悟空みたい。

 全員が、テーブルを挟んで向かい側に並ぶ椅子の前に行き、


「貴様らの王がおらんではないか」


 真ん中の男が不満を口にした。

 四十歳くらいで、眉間にシワが刻まれた、銀髪の男。


「極秘裏の緊急な会談です。ご容赦ください」


 ミランさんの宥めるような穏やかな声。


「ふんっ」


 おもしろくなさそうに鼻を鳴らして椅子に腰を下ろした。

 それを見てから、ミランさんが立ったまま自己紹介。


「まずは、お目にかかれたこと光栄に存じます、統領閣下。私は、ミラン・ソル・ダン・エベレット。この代表団を任されました、サン王国、宰相にございます」

「天空都市フィンドラム統治領主ナラ・キネンだ」


 真ん中の男が返す。


「座っても?」

「かまわん」


 ナラさんが横柄に頷いて俺たちも着席。


「この度は会談に応じていただき」

「いらん。さっさと本題に移れ。我らは忙しい」


 ミランさんの定型文の挨拶をナラさんがぶった切った。


「では統領、文書でもすでに申し上げましたが、なぜ我がサン王国の国土であるパルメイデ島を買おうとなさったのですか?」

「あの島が気に入ったからだ」

「個人ならばわかります。美しい島です。しかし、一国を統べる者が買うとなると話が面倒になる」

「だから、私が個人的な財産で個人的に買うのだ。問題はないだろう」

「あなたは個人である前にフィンドラムの統領です。他国の国土を買うことがそんな軽い意味で済むわけがないとお分かりのはずです」

「もちろんだ」

「ではなぜ、島を買おうとなさったのですか?」

「……」


 黙ってしまった。


「『統領』」


 ナラさんの付き添いの人が呼ぶ。

 空語。


「『あれをご覧ください』」

「『気づいている。思った以上だな』」


 窓から天空都市を見上げてボソボソ。

 ミランさんが俺を見た。

 「重要な会話か?」と目で聞いてくる。

 たいした話じゃないです、という意味で首を横に振った。


「何て言ってたんですか?」


 アンが聞いてきたので教えた。

 ふむふむ頷いてる。

 会談はつづく。

 しかし、何の成果もないまま時間だけが経つ。

 その間、天空人たちは、空に浮かぶ自分たちの街をチラチラと気にしていた。

 十五分ほど経った頃。


「エベレット宰相。我々は、パルメイデ島がほしい。いくらだ?」


 ナラさんが切り出した。


「なんと。まだ買う意思がお有りか?」

「我々はそのために降りてきたのだ」

「売れません。売れるわけがない」

「自治権は求めん。利権もサン王国のままで構わない」

「なおのこと売れません。そうまでして買う目的がわからない」

「たいしたことではない」


 また話が滞る。


「『やっぱり、戦争考えてんじゃね?』」


 アンに通じる古代語でこっそり聞いた。


「戦争だと?」


 ヤッベ。

 ナラさん、この古代語わかってる。


「貴様、我らが戦を考えて島を買おうとしていると言うのか?」


 もともとあった眉間のシワが深くなってる。


「そ、そんなことは」

「部下が失礼を、キネン統領閣下」


 ミランさんが謝るが、


「宰相殿は口を閉じていろ」


 ダメだった。


「青二才め。貴様、名は? 役職は?」

「た、鷹見夕です。い、飲食店店員です」

「飲食店?」

「キネン統領、よろしいでしょうか」


 アンが席を立った。


「何だお前は? ただの端役が私に名乗りもせず発言するのか?」

「私は、アン・レイ・シャープ。サン王国国王、トール・フロー・レイ・サン・シャープの娘です」


 相手の席がザワついた。

 ミランさんは、『バカめ』とでも言いたそうに顔をしかめていた。

 身分は隠して発言は控えろって言われてたのに。


「姫だというのか? なぜこんなところに?」


 ナラさんが訝しむ。


「キネン統領、なぜサン王国の土地を買おうとしたのですか?」

「たいした理由ではないと言っている」

「答えられないというならば、やはり」

「貴様も戦だと言うつもりか!」


 ダンッとテーブルを叩いてナラさんが怒鳴った。


「ならば本当に戦を仕掛けてやろうか! 空より岩の雨を降らせるぞ!」


 と言ったその時だった。

 ズズズと天空都市から不気味な音が響いてきた。


「な、何だ?」


 会談は中断。

 全員で窓辺に寄り、天空都市を見上げた。

 底にある雲を突き破って何かが降ってきた。

 岩だ。

 城でも落ちてきたのかと見紛うデカさ。

 下にはベーリーの街。


「な、なんと!?」

「避難指示を!」

「とても間に合わない!」

 

 みんなが慌てる。

 あんなものが落ちたら、街の被害は計り知れない。

 しかし、ただ見ているしかできない。


「何か方法はないのか!」


 と誰かが叫んだその時。


「シルバ!」

「ヒヒーン!」


 近くの部屋から声がした。

 ルージュとシルバだ。

 シルバが窓の外に出ると、その姿を立派な体躯のペガサスへと変じた。

 ルージュがシルバの背中に跨る。

 手には大剣『天宿の剣』。


 ルージュを乗せたシルバが、翼を大きく羽ばたかせ、空へと翔け上がっていった。

 目指すのは落下中の大岩だ。


「『彼の者は清き輝き』」


 ルージュの体が祝福の護符の力で金色に輝く。


「『ヨップ テタッ ッピケ テッテッ ピオ セッ』!」


 剣には精霊魔法を付与した。

 『風の精霊よ あの岩を粉と砕け』。


「いっけぇぇぇ!」


 雄叫びとともにルージュが『天宿の剣』を大岩へ向けて投擲した。

 仄白く光る大剣が空気を切り裂いて飛んでゆき、大岩に突き刺さるとそのまま岩盤を貫いた。

 大岩が砕け散る。

 さらには精霊たちの力が散った岩を粉塵に変え、街に砂粒が降り注いだ。


「おおっ!?」


 みんな瞬きも忘れて空を見上げていた。


「な、何だあの女は!?」

「あ、あれは伝承に聞く『天宿の剣』では!?」

「あの発音は精霊語か!? 万の大軍を一撃で滅ぼすといわれた伝説の精霊魔法を使ったのか!?」


 部屋が騒然としている。


「キネン統領」


 その中にあって冷静な男、ミランさん。


「まさか、本当に岩を街に落とすとは。やってくれましたな」


 声が氷のように冷たい。

 宰相側の人たちが、その言葉に、天空都市側の人たちを軽蔑の目で見た。


「くっ、こ、これは……」


 ナラさんが口を開く。

 しかし、何も言い返さない。

 やはり、本当に戦を考えているということだろうか。


「待ってください」


 そこへ、両陣営の間にアンが割って入った。


「キネン統領。本当に戦を仕掛けるおつもりですか?」

「そ、そんなつもりはない!」


 「嘘をつくな!」「今さら何を!」と宰相側が怒りもあらわに責める。


「では、なぜパルメイデ島を欲しがるのですか?」

「そ、それは……」


 またも口籠るが、


「もしかして天空都市は、沈むのではありませんか?」

「!」


 ナラさんたち天空人の目が驚きに見開かれた。


「え、マジで? あれが落ちるってこと?」

「はい。天空都市を支える魔法陣見えますよね」


 百個くらいある、それぞれいろんな文字や模様が描かれた魔法陣。


「あの魔法陣の文字ですが、以前と比べていくつか削れて消えています。気のせいかとも思ってユウ先生に確認してもらいましたが、ユウ先生も読めませんでした。字が削れているからでしょう」


 二日前の。

 それで俺は読めなかったのか。


「大地を支える役目の魔法陣がちゃんと機能していない。フィンドラムの方々が会談中も都市を気にしていた。落としたというより崩れたような大岩。そして、今のフィンドラムの方々の反応。天空都市は沈むのだと思います」


 話を聞いてサン王国側がザワついた。

 フィンドラム側は、口を引き結んで苦い顔をしている。


「ま、待ちなさい、アン」


 と驚いたままのミランさん。


「あそこに描いてある魔法陣は、全て式が違う。以前と比べてと言ったが、全て記憶しているのか?」

「はい」


 当然のように頷いた。

 驚きにみんなが目を見張った。

 あの数を覚えているとは。

 とんでもない才女だ。


「ふぅむ。にわかには信じられんが、街が沈もうとしているなら……」


 ミランさんが顎を撫でて思考を巡らせる。


「……キネン統領は、天空都市が落ちそうになっているので、パルメイデ島を買って民を避難させようとした?」


 意見を求めるようにアンへ顔を向ける。


「私もそう思います」


 アンが頷いて、ナラさんを見た。

 ナラさんは、目を閉じると、「フ〜……」と大きく息を吐き出して、観念したように、


「そういうことだ」


 静かに首を縦に振った。

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