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【連載版】神様からもらった能力は『異世界語がわかる』だけだったけど案外やってイケる  作者: 赤ぱん金魚


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25 婚約

「ひゃっほーーーうっ!」

「ヒヒーン!」


 お昼前。

 シルバの背中に跨って青空の下を飛行中。

 太陽が真上から俺たちを照らす。

 遠く地面では影が同じ速度でついてくる。

 鳥が周りに集まってきて編隊を組むように一緒に飛んでいた。

 最高に気持ち良い。


「ハイヨーッ、シルバー!」

「ヒヒーン?(それよく言うけど何?)」

「俺もよくわからん」


 元ネタは映画かアニメか。


「ヒヒーン(何それ)」

「ハハハ。ん〜っと、今どのへんだ?」


 と顔を下に向けると乗合馬車が一台、街道をのんびり進んでいた。


「ベーリーの街行きかな? ……お?」


 幌が外された荷台に数人お客さんが乗っているのだが、その中に見覚えのある男がいた。

 短い髪に日に焼けた肌。

 アンの同級生で友達の、テオ・セリオだった。


「あそこにいるの知り合いだ。おーいっ、テオー!」


 呼びかけると、前後左右をキョロキョロした。


「こっち! 上!」


 テオが見上げた。

 あ、すげぇビックリしてる。

 なんだかドッキリが成功したみたいでおもしろい。


「シルバ、あそこに降りてくれ」

「ヒヒン(うん)」


 速度を落とし、バサッバサッと翼を大きく羽ばたかせて馬車の横に降下した。

 みんなポカンと口を開けてこっちを見ていた。


「テオ、久しぶり」

「ユウ先生!? ペガサス!? ええ!?」


 軽く混乱してる。


「な、何してるんすか!?」

「こいつは友達のシルバ。今、シルバに乗ってネクタルを汲みに行ってたんだ」


 シルバの背中に積んである荷袋を指さした。

 前にスライスさんがネクタルを入れた樽を持って帰ってきたのだが、シルバの友達のペガサスがそれを飲み、以来ペガサスが来店してネクタルを注文するようになった。

 ネクタルは神獣の好物らしい。


 ということで、俺がシルバに乗って、スライスさんの見つけたネクタルの湧く泉へ定期的にネクタルを汲みに行っているのだった。

 今はその帰りだ。


「ペガサスに乗ってネクタルっすか……」


 なんのこっちゃという表情。


「テオこそ何してんの? 故郷のファビネルにいたんじゃなかった?」

「アンに用事です」

「じゃあ、シルバに乗ってくか? めっちゃ速いぞ。シルバ、こいつテオ。俺のダチ。乗っていい?」

「ヒヒーン(ユウの友達なら特別だ)」

「特別にいいって。ほら、こっちこい」

「あ、はい、ありがとうござ……何でペガサスの言ってることわかるんすか?」



 ……



 十分とかからずベーリーの街に到着。

 『ラベンダー亭』の前に降下した。

 二人でシルバの背中から降りる。

 テオの顔が青かった。


「うぷっ」


 酔ったみたいだ。


「ヒヒーン、ブルル(だらしないな〜、ハハハ)」


 笑ってるシルバの背中から荷物を下ろす。

 すると、シルバの体が縮み、見慣れたおもちゃの木馬サイズになった。

 シルバは、大小変身できる体になったのだった。


「ーー!」


 リーンが窓から飛んできた。

 ぷんぷん怒ってる。


「僕もおつかい行きたかったって、お前寝てただろ」

「ーー!」

「わかったよ。次は起こすから」

「ちょっと! 神酒なんて運んでこないでよ! 私悪魔なのよ!?」


 二階の窓からサキュバスのパームが顔を出した。


「そんなこと言われても。テオ、あの人は宿泊客のサキュバスでパームさん。油断して精気吸われないようにな。こっちは妖精のリーン。話したい時は通訳するぞ。シルバは小さくなったりできる特別なペガサスでさ。あ、ジオさん。テオはジオさん知ってるのかな? 前は街一番のヤクザだったけど、そっち辞めて今はウチの従業員してるから心配すんな」

「す、すんません、じ、情報量多すぎて、よ、よけい気分が……うぷっ」



 ……



「ありがとうございました」


 最後のお客さんをお見送りして、お昼の営業時間終了。

 ちょうど二階からテオが降りてきた。

 酔って休んでいたのだった。


「体調はどう?」

「もう大丈夫です。ありがとうございます」


 マリーさんに笑顔を返す。

 血色が良くなっていた。


「突然ね、テオ」


 アンが水の入ったコップをテオに渡した。


「今日はどうしたの?」

「それなんだけど」


 と、そこへ、チリンチリンとドアベルが鳴る。

 入ってきたのはシャーディー・エン・ポート。

 赤い髪に頬のそばかす。

 アンの友達でテオの彼女。


「シャーディー!」

「久しぶり、アン」


 二人が再会を喜んだ。


「みなさんもお久しぶりです。あなたがジオさんですか? はじめましてシャーディー・エン・ポートです。わあっ、本当に妖精がいる! アンの手紙に書いてあった通りだわ!」


 みんなにも挨拶していく。


「あら、テオ? もう来てたのね」

「おう」


 手を上げて応えた。


「今日は二人でどうしたの? 来るなんて手紙に書いてなかったじゃない」


 アンが聞くと、テオとシャーディーが見つめ合って微笑み、みんなが注目する中、


「俺たち、婚約したんだ」

「ええ!?」


 全員で驚いた。


「この前付き合い始めたばかりなのにもう?」


 と驚いた顔のままのルージュが聞く。


「私の家って伯爵位を持ってるんですけど、お父様にテオのことを話したら、交際とか中途半端な関係じゃなく、伯爵家の子女としてしっかり将来を見据えた付き合い方をしなさいって言われたんです」

「シャーディーの親父さんがそう言うならって、俺も腹をくくったっつー感じっすね」


 斜に構えた感じで頷いてる。


「なによ、仕方なしみたいに」

「実際仕方なしみたいなところもあるし」

「何ですって」

「『永遠の愛を誓う最高のプロポーズをしてからと思ってたけど仕方ないってね。』フフフ」


 ファビネル語。


「お前、相変わらずの独り言だね」

「ぐあっ!? そうだった! ユウ先生ファビネル語わかるんだった!」

「あのね、私だって将来を考えて勉強してるからだいたいわかるわよ」


 シャーディーの顔が赤い。


「マジか!?」


 テオも赤くなった。


「それなら言ってくれよ!」

「永遠に愛してるって?」

「バッ、そ、それは俺が!」

「ヤダ、ますます赤くなって。テオったら可愛い。クスクス」


 イチャイチャラブラブ。

 二人の世界。


「青いねぇ」


 ジオさんがニヤニヤ。

 リーンとシルバが近くからじーっと見ていた。

 はっと我に返った二人の顔がますます赤くなった。

 ひとまずみんなでおめでとうと祝福した。


「手紙で教えてよ」


 アンが膨れてる。


「驚かせたかったの」


 シャーディーがペロっと舌を出すと、「まったく」とアンが苦笑した。


「今日はその報告に来てくれたのね」

「それもあるけど、もう一つ」


 指を立てる。


「アンにお願いがあるの」

「お願い?」

「お父様とお母様はね、テオを婚約者として認めてくれたの。でも、おじい様が認めてくれないのよ」

「シャーディーのおじい様っていうと、ソルト・エン・ネイブ・ポート伯爵? どうして?」

「テオが貴族じゃなくて一般人だからって」


 ちょっと声に怒りのニュアンスがある。


「え〜、なんか頭古くない?」


 ギャルっぽい感じでルージュ。

 アンは、「なるほどね」と冷静に頷いた。

 貴族と一般人の恋。

 反対されることは決して珍しい話ではないのだろう。

 むしろシャーディーのお父さんとお母さんは、よく認めてくれたな。


「前会いに行ったら、『認めん!』の一点張りなのよ。もう」


 思い出して怒ってる。


「二人が言い合いになって、マジ大変だったっす」


 こっちは思い出してため息。

 もう会ったんだな。


「でね、今度また行くからアンも一緒に来ておじい様を説得してほしいの」


 それがここに来た理由らしい。


「ポート伯爵のことは知ってるけど、頑固で気難しい方なのよね」


 簡単ではない、と。


「でも二人のためだもの。やってみるわ」


 引き受けることに決めた。


「ありがとう、アン」

「助かる」


 シャーディーとテオがお礼を言う。

 二人は、説得の日までこのまま『ラベンダー亭』に泊まることになった。

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