10 クラスメイト
「お待ちどうさま」
テーブル席に二人分の料理を運ぶ。
「ありがとうございます、ユウ先生」
「あざっす、ユウ先生」
とお礼を言ったのは、赤毛にそばかすの女子と短い髪に日に焼けた肌の男子。
この二人は、古代魔法研究クラブのメンバーだ。
名前は確か、シャーディー・エン・ポートとテオ・セリオ。
神様に感謝を捧げ、二人がさっそくマイアのスープを飲んだ。
「んんー! 美味しい!」
「すっげ! これヤベー!」
絶賛。
「ナップさん元気してる? 最近見ないんだけど?」
「サマー先生は、ユウ先生が解読してくれた古文書の研究資料を作って魔法学会に行きました」
「これで一級魔術師になれるって喜んでたっすよ」
「へ〜」
役に立てたようで良かった。
「おっ、それ美味そう」
テオがシャーディーの皿から料理をヒョイパク。
「あっ、やめてよ! 行儀の悪い!」
「ハハ、ほっぺが膨らんでる。『リンゴみたいだ』」
途中で南の国ファビネルの言葉を使った。
テオは、ファビネルの出身かな。
「なんて言ったの? 私がわからないと思って悪口言ったんでしょ」
「悪口じゃないって。『可愛いって意味だよ』」
……。
ん?
「好きに言ってなさいよ。も〜、ソースが手についちゃったじゃない。洗わないと」
シャーディーが席を外す。
「『好きに、か。結局好きって言えなかったなぁ。情けねぇよな俺』」
……。
「『でもよ、いつか必ずお前のハートを奪ってみせるぜ。覚悟しとけよ、俺だけのお姫様。』フフフ」
……。
「ユウ先生?」
「は、はい!」
「顔赤いけどどうしたんすか?」
「え!? な、何でもない何でもない、俺何にも聞いてない、エヘ、エヘヘヘヘ」
「?」
「確かに赤いですね」
アンが来た。
「そうだ。テオは、ファビネルの出身よね? ユウ先生ならファビネル語もしゃべ」
「わーーーっ! わーーーっ!」
「ユウ先生?」
「マジでどうしたんすか? 汗すごいっすよ?」
「いや、き、今日って暑いな〜って。な? な?」
「ああ、確かにそうですね」
「言われてみれば」
ふ〜。
ピンチ脱出。
「暑くなってきたってことは、もうすぐね」
「短かったような長かったような、だな」
なんだか寂し気な会話。
「テオは、故郷に帰るのよね?」
あ、そっか。
もうじき卒業ってアンが言ってた。
そういうことか。
「ああ。アンは進学だろ?」
「ベーリーの魔法大学よ」
「私は、王都の大学」
シャーディーが戻ってきて席に着く。
みんなバラバラか。
それは寂しいな。
「ま、しんみりしてもしゃーない。卒業はまだなんだから」
「そうね。アンは、明日も仕事よね? またお店に来るわ」
「ありがとう。といっても、明日は私どうなってるか……」
アンの声が沈む。
「どうしたの?」
と聞くシャーディーにアンが事情を話した。
「ああ、それでお客さんいなかったのか」
テオが納得の表情。
「つまり、学園に入学した時と同じ状況ね」
シャーディーがうんうん頷く。
「ええ。あの時もみんな私を遠目に見ているだけで近寄ってこなかったわ。あれを思い出していれば、今回のことも予測できたのに」
「それで、どうするんだ? 責任とって辞めるのか?」
テオがズバリ聞いた。
「え? 辞めるわけないわ」
さらりと否定した。
「お店に損失だけ出して辞めるなんて、むしろ責任放棄じゃない」
「アンだよなぁ」
「アンよねぇ」
予想通りの返しだったのか、二人がクスクス笑った。
「マリー店長」
アンが真摯な表情。
「クビをお考えかもしれませんが、必ずお客様をお店に戻します。ですから、私にチャンスをください」
「俺たちからもお願いします」
「アンならきっとなんとかします」
テオにシャーディー、話を聞いていたクラスメイトも、「お願いします」と一緒になって頼んでくる。
マリーさんは、みんなの顔を優しい表情で眺め、
「大丈夫よ。そんなこと考えてないわ」
「良かった〜」
みんなでホッとしてる。
仲良いクラスだな。
「でも、お客さんを戻すって何か方法あるの?」
ルージュが聞くと、
「あれを利用します」
アンは、壁を指さした。
そこには、葡萄祭りのポスターが貼ってあった。




