3 肝試しイベント
きちんと許可を得てそのイベントを実施していること、事前に安全確認を行っており怪我をする危険性がないのを専門家を交えて検証していることを全面的に宣伝している。
「なるほどね。イベント会社がやってる肝試しだったら、絶対にびっくりポイントはあるし変な後味が残ったりもしないか。何もなくてしらけたりもしないし」
「そういうこと。限定グッズとか作ってるみたいだし、本当に思い出作りにはちょうどいいでしょ」
「変に呪われたり祟られたりっていうのがないだけマシか」
イベント概要を見てみるとお化け屋敷などにありがちなストーリー仕立てになっているようだ。かつてこの動物園にいた謎の生き物、それが今も生きていて人々を襲う。その動物の手がかりを探してどこを住処にしているのを推理しながらゴールを目指す。ゲーム開始前に自分たちで選べる勝利条件を選択し、その条件を達成できればクリア。難易度が高いらしくクリア者はもれなく全員景品があるということだった。
「肝試しっていうより宝探しみたい」
「この怖すぎるホームページ見てその感想が出るのすごいよ」
汐里が若干顔を引き攣らせながらそう言った。ホームページには誰が見ても肝試しの舞台にしか見えない恐ろしさを演出する構成になっていて、訪れた人の肉を食いながら生きながらえている動物とまで書かれている。
まあいいか、本物の廃墟に行くよりは、と自分に言い聞かせる。唯一引っかかっているのは動物園ということくらいだ。あまり良い印象がない。
動物園に行った後不仲となった両親。動物園内で喧嘩をしていた様子もないし、何故離婚することになったのか今でも遥にはわからない。
全員で日にちを合わせて予定を決める。ナイトツアーというのも雰囲気抜群だ。戸部からの連絡では動物園の場所は非公開、イベント会社からの指定場所に集合ということだった。一泊二日の泊まりがけのイベントでどこに泊まるのかなど詳細は一切明かされていない。
「最高の思い出になるといいね」
怖いものが嫌いなのに怖いもの見たさというやつだろうか、汐里は楽しそうだ。なんとなくの付き合いで参加するとは言ってもやはり参加する以上は楽しみたいと遥も思う。
この時、別の企画にしようよ、と言っていればよかったのだろうか。
あるいはこの時すでに取り返しがつかなかったのかもしれない。