3 親戚同士
「檻の中入って確認してくればいいでしょ!? あの中に入ってる奴らの顔、あんたしか知らないんだから! もし全員じゃなくていない奴がいたらまだ生きてるかもしれないじゃん! ここから出る方法とか車とかあんたたち持ってないの!」
優等生キャラの恵麻とは思えないまるで鬼のような形相だ。汐里は完全に怯えてしまっている。恋人を殺されたことへの怒りかもしれないが、まるで癇癪のように怒り出す恵麻の姿は異様だ。遥は恵麻の腕を強引に引き剥がした。
「邪魔しないで!」
「邪魔するに決まってるでしょ」
「こいつ何か知ってるんだよ、ここから出られるかもしれない! 邪魔する意味がわかんないんだけど! 私の邪魔するならあんた置いてくからね!」
真正面から怒鳴られても遥はまるで気にした様子がない。むしろ恵麻を静かに睨みつけた。
「何か隠してるのあんたも一緒でしょ。庇おうかと思ってたけどやめた」
その言葉に恵麻は黙り込む。我に帰ったようだ。
「な、何が」
「私からも聞かせてもらうけど、何も知らないって言ってたの嘘だよね。何知ってるの。さっきこの人が何も知らないって言っただけでそんなはずないって言い切ったのはなんで」
「それは」
「自分の知ってる情報と違ったからでしょ。恵麻は恵麻で知っていることがあって、その情報をこの人が隠そうとしたから知ってることをこの人から話させるつもりだったでしょう。自分では言わないくせに随分卑怯なことするじゃん。それだけじゃないよ、今まであんたが言ってきたこと、ちょっとおかしいことが多いんだよね」
今まで見聞きしてきた違和感を全て一つ一つ説明すると恵麻は慌て始める。そんなの気のせいだと言っても先に情報を知っていた鈴木と汐里は恵麻を庇う言葉を言わなかった。
「さっきその人今回のおかしなこと親族みんなでやってるって言ってたっけ。その親族、恵麻も含まれてるんでしょ。戸部がこのイベント見つけたって言ったけど本当はあんたが戸部に話を振ったんじゃないの」
そこまで一気に捲し立てると、女性が何かに気づいたように口を開いた。
「恵麻?」
その声に恵麻はびくりと体を震わせる。
「恵麻って名前知ってる。この研究の取りまとめしてる人の娘が確か恵麻って名前だった……じゃああんたたちのせいじゃない!」
先ほどまで泣いていたとは思えないものすごい剣幕で女性が立ち上がって恵麻に掴みかかった。まさか女性がそんなことをしてくるとは思っておらず油断していた恵麻は掴まれた勢いで体勢を崩して尻餅をついてしまう。
「さっき私のこと責めたけどむしろあんたたちが原因じゃないの。聞きたいのはこっちだよどうなってんの!? なんでお父さん死んでるのよ、あんたら一体何しようとしてたの! 答えろよ!」
思いっきり恵麻の顔を平手で殴りつける。その光景にさすがに慌てた汐里と東馬が止めようとするが、先に動いたのは鈴木だった。女性の髪の毛を掴むと力ずくで後ろに突き飛ばす。女性は悲鳴をあげながら地面に倒れこんだ。擦りむいたらしく肘を摩りながら何をするんだと鈴木を怒鳴りつける。鈴木は気にした様子もなく静かに言った。
「親戚同士のキャットファイトに興味ねえんだよ。俺らが今知りたいのは情報だ。一人一人質問するから聞かれたことだけ答えろ。答えなかったら殴る」
それは恵麻にもむけても言った言葉だ。普段口数が少なくテンション低めの鈴木の殺気立ったドスの効いた声に恵麻と女性はびくりと体を震わせた。男に凄まれたせいか、先程の勢いがなくなり二人はおとなしくなる。
「胸くそ悪ぃ。都築、仕切ってくれ」
鈴木にそう言われ遥を小さく息を吐く。少し考えてから恵麻の方を向いた。
「さっきのその人の話からすると細かい内容知ってそうなの恵麻の方だよね。隠し事も含めて全部話して。私従兄のお兄さんから心理学を教えてもらってるから嘘ついたときの癖とか動作はわかるよ。次嘘ついたら、マジで二度と信用しないから」
心理学を学んでいるのは嘘だ、しかしこの雰囲気ならこの言葉を乗り切れる気がした。加えて遥は恵麻の不審な言動を見逃さずにピックアップしている。
眉間にしわを寄せて何かを考えこんでいた恵麻だったが、やがて大きなため息をついてわかったと言った。
恵麻が語ったのは、こんな内容だった。




