2 高校最後の夏休み
高校最後の夏、受験勉強もいいが一日か二日だけでも息抜きにぱーっと遊ぼうということになった。地元の学生が通う偏差値もそれほど高くない高校。有名な偏差値の高い都市部の大学に行く者はおらず皆のんびり自分のペースで受験勉強したり、就職活動したりしていた。
高校三年の夏は一回しか来ないんだから遊ぼうぜ。そんな一言から始まった、思い出に残る遊びを思いっきり楽しもうという企画。仲のいい友人六人で一人一つの案を出しそれを全て全力で楽しむ。
遥は参加する気はなかったのだが、引っ込み思案の幼なじみである汐里が参加したいと言うので付き合いで参加することにした。汐里は内向的な性格ではあるが、そんな自分の性格を変えたいと常々思っており、明るく社交的な友人たちの誘いには積極的に参加するようにしている。
反対に遥は言いたいことをはっきり言う性格だが、あまり皆でワイワイと楽しむような遊びには参加せず静かに過ごす方が好きだ。強い性格なのに静かに過ごすのが好きな遥、内向的なのにアクティブな汐里。なんかちぐはぐな二人だな、と周囲は笑っている。
付き合いとはいえなぜ遥が参加を決めたかと言うと汐里に頼み込まれたからだった。
「怖がりなんだから肝試しなんて行かなきゃいいのに、まったくもう」
呆れながらそう言うと汐里はしゅんとした様子だ。
「そうなんだけど……あの、戸部くんが参加するから」
ごにょごにょと消え入りそうな声で言ったその言葉に、遥は内心ため息をついた。戸部は汐里が片思いをしている相手だ。その戸部もまた好きな人がいて仲良しグループの中の女子、坂下恵麻なのだが、恵麻が今回の発案者であり戸部が参加するのはわかっていた。
遥は恋愛ごとには冷めていてたとえ友達であっても汐里の恋を応援するつもりはそれほどない。だが特別な理由でもない限りは協力できることをしてあげようと思っていた。今回も汐里は肝試しが本当は死ぬほど嫌いなはずだが、行かないという選択肢はなかったようだ。というよりも、戸部に誘われて速攻返事をしたんだろうなと思う。
「詳細は話されてないだろうけど、肝試しってどこに行くの」
「あ、なんかね、廃墟になった動物園があるんだって」
動物園、という言葉にわずかに遥は動きを止める。
「その動物園、オカルトスポットになってるみたいで」
「廃墟巡りが流行ってた時期もあったけど、瓦礫が崩れたり物が落ちて来たり大怪我した人がいたとかで、廃墟巡りを止めてくださいってネットで話題にならなかったっけ」
少しだけ声が冷たくなってしまった気がする。しかし日ごろからルールやマナー違反のものは、嫌なものは嫌、だめなものはだめだとはっきり言ってきた遥の言葉に汐里は何も違和感を覚えなかったようだ。
「そうなんだけど、ちょっと面白そうなんだ。夏休みの期間限定でイベント会社がそこでイベントとして肝試しをやってるの」
「へえ、そんなのあるんだ」
検索してみると確かにイベント会社によるホームページが立ち上がっている。