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無限の大地と黒いエイ  作者: きーち
無限の大地と隠れた帝国
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⑤ 漸く見つけた

 レド・オーという男にとって、ここ最近の日々は不運続きであった。

 続くと表現するのだから、勿論、一つや二つの不運ではない。

 まず一番最初が何かと思い出すならば、身内の問題から端を発していた。

 レドが身内だと表現する家族は、主に両親二人と兄弟二人に限られる。親戚がいないわけでは無いが、レドの人生に大きく関わって来る身内というのはその四人なのだ。

 その家族のうち、長男となる兄が少々大きな事を仕出かした。

 三兄弟の中の次男であるレドにも責任が及ぶくらいの大きな事だ。兄弟三人とも、既に自律し、それなりの立場でそれぞれの仕事をしている。そんな関係性だというのに、どうしようもなく、レドは兄の仕出かしに巻き込まれた。

 それが第一の不幸である。

 第二の不幸は、その兄の仕出かしは、私生活だけで無く、レドの仕事と大きく関わってしまったという事になるだろうか。

 レドは軍人である。若さに比して相応以上の立場にまで出世をした、有能と評価されるタイプの軍人であった。

 一方、人付き合いはそこまで得意では無く、有能な軍人という表現にはさらに、寡黙なという言葉が付く。

 もっとも、レドが生きる世の中というのは、その手の寡黙なと表現出来る人間の方が多い。故に自分がそう表現される事に、別段不快感を覚えた事は無い。

 そんな寡黙で有能な軍人であるところのレドが、そうでいられなくなっていると最近は感じる。つまりそれが二つ目の不幸だ。

 自分が行う仕事の質が変わった。それを肌で感じていた。それもあまり、得意でも無いし趣向にも合っていない仕事だった。

 まさに不幸という表現が出来る。さらに言えば、続く不幸は三つ目に辿り着く。

 その仕事に、レドは失敗したのだ。

 それもかなり大きな失敗だ。自分にはそれなりの能力がある。他者から寡黙で有能な軍人と評価される事に対して、そう言われるだけの事はしてきたという自負があった。

 だが、それが打ち砕かれた。自分側に落ち度はあったのだろう。だが、それにしたところで酷い失敗をした。

 恐らく、相手が悪かったのだと考えている。その仕事は対人と呼べる部分が多くを占め、その相手をする人間が、とびきりに相性が悪い相手だった。今ではそう考えるに至った。

 これが言ってみれば、レドの続く不幸のあらましだ。

 それらの不幸の結果として、レドは今、閑職に追いやられている。

 仕事上の失敗に対して、致し方ない部分もあるという結論も上層部から出て、降格等の処分は出なかったが、花形と言える部署から外された。

 結果として、今のレドは忙しくも無く、むしろ暇な時間が多い仕事に就いている。

 その事に不満は……正直有るには有るものの、仕方ないと納得もしていた。

 忙しい日々というのは、どこか心を追い詰める。そういう部分とは無縁の仕事に就いているのは、幸運だとすら言える状況ではあるまいか?

 そんな風に考えて心を癒していた。

 今日、この瞬間までは。

 残念ながら、余裕と暇のある時間もまた、その瞬間に打ち砕かれた事をレドは知る。事はまだ何も終わっていなかった。

 ここ最近、レドの身に襲い掛かって来るあらゆる事柄は、ある種、一つの大きな流れがあるのではと考えていたが、それはこの瞬間に確信へと変わった。

 その事は幸運だろうか? 不幸だろうか?

「決まっている。不幸はまだ、続いている」

 レドは街の只中、街路を歩いている状態から、他の一般人と同じく足を止めた。

 そうして、空も見上げた。

 そこには、まるで黒いエイを模した様な、一隻の飛空船が突如として現れたのである。




「はっきり言って、どうするべきか我々にも判断しかねます。突然過ぎて、各所が対応を考えられないから、我々に仕事が回って来たとすら思えます」

「実際、その通りだろうな」

 清潔感があるというよりは、色が少ないと表現出来る庁舎の廊下を歩きながら、レドは自身の秘書官をしている女と話を続けていた。

 世間話とは程遠く、仕事上の会議を場所と時間が用意出来なかったので、たった今、このタイミングでしているという風な内容。

 もはや世間話というより、単なる事実の羅列と言えるかもしれない。

「都市上空に突如として現れた飛空船……いや、武装していた以上は飛空艦か。その飛空艦へ明確に対処するまで数時間を擁した。その責任を、どこも負いたくは無いのだろう」

「そこは都市防衛戦力が出払っていた事が原因なのでは?」

「むしろそれだ。タイミング的に偶然ではないだろう。その防衛戦力はシルフェニアの……例の『黒』撃墜のために出ていたわけだからな」

「そうして、それを嘲笑う様に都市上空へ突如『黒』は現れたと」

 黒とはレド達にとっての符丁だった。

 シルフェニアの飛空艦を現す言葉であり、レド達にとっての脅威を現す言葉であり、差し迫った、襲い来る怪物の意味でもある。

 過剰な認識だと言う者も居るだろう。レド自身、その一人ではある。

 あれは単なる一隻の飛空艦だ。その性能や機能は確かに驚くべきものであるが、隔絶したものと表現するのは間違っている。

「『黒』一隻にしてやられた。『黒』そのものがどれだけの物だったとしても、これまでの遭遇報告や挙動例を鑑みるなら、一隻だけで我々……オヌ帝国を左右出来るものでは無いというのにな」

 オヌ帝国。レドが生まれ、育ち、今なお過ごす国。

 今、そのオヌ帝国は敵対している国家、シルフェニアに属する飛空艦の脅威に対して、ただ慌てふためいている状況だった。

 この様な危険がいずれある事を、レドはレドが属するオヌ帝国軍の上層部に、繰り返し警告していたというのに。

「我々が上層部へと上げる資料はその……重要度が低く扱われる事も多いので」

「外交情勢処理部か。元々は文字通り、処理だけして捨て置かれる部署だったからな。俺の属する組織は」

 オヌ帝国軍外交情勢処理部の部員の一人。それが今の、レド・オーという男の立場だった。

 そうして、レド自身がした大きな失敗の後、追いやられた閑職という事でもある。

「我々の国の方針として、外交とは即ち、ある種の敗北を意味するものでして……」

「分かっている。栄えある我らが国は、他国と面と向かって交流するよりも、姿を現さないままにやり取りをする事を好む性質だというのは、十二分に理解しているし、それに反対する立場でも無い」

「でしたら……」

「皮肉くらいは言いたくもなる。今、その役に立たないはずの部署に、頼ろうとしている事にな」

「その点に関しては……同感ではあります」

 秘書官からの同意を得られた事で、些か、大人げなかったかとレドは思ってしまった。

 秘書官の一本角を見て、彼女も軍人ではあるが女性でもあるという事を漸く思い出したからだ。

 別に女性だから能力不足などと思う性質ではないが、自身の矜持の問題として、女性に当たる様な事は恥だと考えるのが、本来のレドだった。

「前向きに考えるか。『黒』にはしてやられたが、今はそうではない」

「はい。現在、『黒』はオヌ帝国軍が拿捕し、その船員達も拘束している状況です。だからこそ、我々の仕事になったのでしょう」

 そう。オヌ帝国首都上空に現れた『黒』。シルフェニア空軍所属の飛空艦。ここ最近、オヌ帝国を探る動きを見せ続けていたその飛空艦と船員達を漸く捕える事に成功したのだ。

「大人しく捕まった事がそれ程に意外だったか。しかしその後についてを考えていなかったのは不手際だな。なら、やはりこれは幸運というより不運か?」

「はい?」

「いや、個人的な話だ。我々に任されたというのなら、相応に仕事をするべきだろう。どうしたところで、今の我々はそれをする以外の選択肢も無いのだろうし」

 その言葉を終えると同時にレドは立ち止まる。

 話の壮大さと比較して、あまりにも小さな個室。

 急遽、それ専用に用意された取調室がここだ。

 何の専用か? それは勿論、『黒』の船員の一人、その代表者を取り調べるための場所という事だ。

 今ここに、『黒』と呼ばれる飛空艦の艦長が居るのだ。

 その扉を、レドは自らの手で開けた。




 贅沢は言わないから飲み物が欲しいな。

 その瞬間にディンスレイが考えていたのは、そんな事であった。

 オヌ帝国にブラックテイルⅡごと拿捕され、拘留中の我が身を思った上で、至った考えがそんなものとは随分と冗談が過ぎる。

 ディンスレイ自身そう思ったので自嘲の笑みを浮かべたのだが、タイミングの問題で、部屋に入って来た男にその笑いを向ける事になってしまった。

「次は君か。恐らく、ここは尋問室か何かなのだろう? なら、そろそろその手の事をしてくれると嬉しいのだがね。言葉は通じてないだろうから、好きに言わせて貰うが」

「いや、分かる。通じているぞ」

 ディンスレイが捕えられた小さな部屋。手枷をされ、部屋の中央に配置された椅子に座っている状態のディンスレイは、部屋に入って来た大男を見上げた。

「ほう。シルフェニアの言葉が分かるのか。これはつまり、予想通り本国にも大分入り込まれているという事だな」

 その大男、頭部から生えた二本の角らしきものを生やす以外は、ディンスレイ達とそう外観の違いの無かった。ただ、今はそういう種族である事くらいしかディンスレイには分からない。

 いや、まだ分かる事はあった。

「オヌ帝国もまあ、随分と派手な冒険を続けていると見える」

「我々は派手さを好まん。これまで話が通用しなくて幸運だったな。今の言葉を、侮辱と取る者もいる」

「そうか。文化の違いだな? これでまた一つ、君らについて知れた」

「ならさらに一つ、侮辱を繰り返した事を教えようか」

「ぬっ」

 男は扉を開け放った状態から漸く部屋の内側へと入って来て、ディンスレイが座る椅子をディンスレイごと押し倒した。

 両手の枷のせいでバランスを取る事も出来ず、椅子と共に、まともに床へとぶつかるディンスレイ。

 その瞬間、ディンスレイが考えた事は、どういう表情で痛みを感じるかというもの。

(歯を食いしばって耐えるというのは、それだけで痛みに弱いと伝える様なものだからなぁ……)

 今、自身が捕えられたこの場において、武器になるのは自身の口先と身振り手振りのみ。

 なら、一挙手一投足、考えて動かさなければなるまい。それが本当に武器となる様に。

「……何故笑う」

 結果、ラジットは床にぶつかり、椅子の角に身体等が食い込み、悶絶しそうになりながらも、表情は最初の笑みを貫いた。

 そうと決めたら痛みに耐える必要もなくむしろ楽だ。叫びたい程の痛みは口角を釣り上げ、漏れ出そうになった悲鳴は笑い声になる。

 所詮外面なんてものは心持ち一つで簡単に変えられる。耐え抜くより随分と楽なのである。

 そうして、こちらの内心が分からぬ相手程、それは良く効く。

「いやなに……どう表現したものかな。それを言うと、君らにとっては侮辱になるのだろう? おっと」

 床に転び、笑ったままのディンスレイは、再び椅子ごと持ち上げられた。

 二本角の男が片腕でそれを成したのだ。

 再び椅子に座る姿勢となったが、かなり無理矢理だったので身体のバランスは崩れたままだ。

 それが男の狙いなのだろう。迂闊な事を言う様なら、再び椅子ごと床に転がすぞという意思表示か、椅子の背もたれに手を置いたまま、ディンスレイに向かって、シルフェニアの言葉で話を続けて来る。

「俺の……何を知った?」

「それだ。知られる事が侮辱になる。それを知れた。なので、君らの外交戦力も漸く理解出来たよ。執拗に姿を隠す。おかげで見つけるのに苦労した。何故ここまでなのかと思ったが……身を隠す事での成功体験が文化の基礎にあるんだ。だからこそ、自らを隠す事で物事を進めている。個人単位では他者を積極的に知ろうとする事が侮辱になるわけだな?」

「……」

 今度は椅子を倒されなかった。代わりに男が黙る。

 何かを考えている風だ。表情からは怒りは見えてこない。感情を上手く隠しているのだろう。似た様な表情という事でテグロアン副長を思い出すが、あちらは芯から何を考えているか分からないという仕草が出来るのに対して、この男の場合は、冷静さを保つための表情を一つ用意していると言った具合だ。

 訓練に寄り身に付けるタイプの無表情とも表現出来るだろうか。

(となるとうちの副長のあれは天然かな)

 どっちが脅威かと聞かれれば、やはり副長の方だと思えるので、男の無表情に恐怖は抱かなかった。

 大丈夫。こんな状況であるというのに、流れを握っているのはディンスレイの方だ。

「ならこちらも理解させて貰おう。シルフェニアとは、そういう国か?」

「どうかな? 私の様なものが一般的か特異か。その感じ方は人それぞれで―――

「ディンスレイ・オルド・クラレイス」

「……」

 今度の攻め手は男の方らしい。表情の動揺は隠す事が出来たろうが、饒舌さを発揮出来なかったのは口惜しい。ただ、ディンスレイとて思考を優先したくなるタイミングというのはある。

 今が丁度その時だ。

(シルフェニアにオヌ帝国の人間が入り込んでいるというのは、この男がシルフェニアの言葉を話す事で十分に分かる。言葉を学べるくらいに、こちらを知っているという事だからな。だが、私の名前が知られているというのはどういう事だ?)

 ディンスレイはシルフェニアにおいて政治的に重要な立場ではない。むしろ以前の冒険から、厄介人物として扱われるタイプとなってしまった立場だ。

 今回、ブラックテイルⅡの任務において、そのまま失敗して死んでしまった方が助かると考えている人間とて居るだろう。

 癪なので全力で生きるつもりであるものの、オヌ帝国側が積極的に認知しようとは思わない。そのはずだ。

「名を知っている事が意外だったか? なら、自身を過小評価しているな。お前達の飛空艦は、我々にとって十分な脅威となっている」

「自らを秘匿する事を是とする国だと言うのなら、なるほど、ブラックテイルⅡは君らを挑発し続けていた事になるか」

 オヌ帝国を探す旅。それそのものが、オヌ帝国から見れば正面から殴り込んで来るに等しい行動だったというわけだ。

 相手が分からぬ。一方的にシルフェニアが攻撃に遭うという状況では、とっくの昔に無くなっていたのかもしれない。

 もっとも、やはり被害を受けているのはシルフェニア側だと思うが。

「俺の場合、挑発ではなく因縁だ、ディンスレイ。あの鈍重な飛空艦を貴様が指揮していた事も知っているぞ、俺は」

「……あれに乗っていたのか?」

「どうだろうな。だが、お前という男に対して、油断ならぬ男だという評価は既に出ている。安易に俺を手玉に取れると思うな」

 ディンスレイにとってオヌ帝国との初遭遇と言えるダイアングラー号での飛空戦。

 敵であった飛空艦に、もしやこの男も乗っていたのか?

(シルフェニアの言葉を喋る事が出来るという事は、組織的にシルフェニアに近い立ち位置にあったはずだ。その可能性はあるな……)

 実は初対面では無いのだとしたら、ここに因縁がある事になる。それはディンスレイにとって優位に働くか、それとも厄介事となるか。今の時点では分かるまい。

 今はただ、この場の流れに乗る事を優先する。

「手玉に取るとか言ったが、今の状況を考えれば、むしろそちらがそれをするべきだろう。私はほら、自由を奪われた身で、何かするなら君の方だ。違うか?」

 他ならぬオヌ帝国側に嵌められた枷を、この男に見せつける。

 今、自分は哀れな捕虜である事をディンスレイは良く良く理解しているので、それを相手に悟られない仕草を続けるわけだ。

 最大の弱みを、相手に弱みだと思わせないテクニックもまた、今は必要だった。

「言葉で間合いの取り合いは俺も好まん。だから率直に尋ねるぞ。いったい、どういうつもりでこの国へ来た?」

「ずっと探していた側だぞ? 他の船員も口を揃えて行っているはずだ。この国に来る事そのものが目的だ」

「ああその通りだ。この国に来る事。シルフェニアが未発見のままの我々の国の場所を発見する事。それが目的だと語っているな。不思議な事に、皆、黙りはせずに聞かれればそう答えている」

「正直に答えて不思議に思われるのならば、言える事は何も無くなるな」

「誤魔化しにもなっていない。この国に来て、それで終わりというのならそれこそ無駄足になるだろう。本国に帰るまでがお前達の任務のはずだ」

 勿論、オヌ帝国を発見するだけでは意味が無い。こうやって発見した側が捕えられたままだというのだから猶更だ。

 ブラックテイルⅡはその艦ごとオヌ帝国に拿捕されているのだから。

「確かに、まんまと捕まえられた形になるか」

「まんまとだと? お前達は碌な飛空戦もせずに投降した。そこには何かあるはずだ。我々の国の国境沿いでは、警備用の飛空艦を破壊している。その能力が無いとは言わせんぞ」

「君らの都市直上で飛空艦の一つでも落とせば良かったか? 戦いが始まれば抵抗も反撃もするが、積極的に大量虐殺をする趣味は私の方には無くてね」

「話を逸らすな。何の狙いも無く、大人しく捕まる連中で無い事は、我々の調査でも分かって居る。繰り返すが、我々が何も知らない側だと思うな」

 この男の言葉は、彼らの文化を思えば脅しの類になるのだろう。お前の事を知っているぞ。そういう言葉は彼らにとって、トゲ付きの言葉になるわけだ。その事をディンスレイは記憶に刻み込む。相手と対話だけで優位に立ち回ろうとするなら、相手への理解をより進めなければ。

「私に何か狙いがあるのだとしたら……それは何だと思う? そろそろ分かっても良い頃合いだと思うが……」

「何?」

 話の途中で、部屋の扉が開かれ、慌てた様子の別の人間が入って来た。

 恐らく顔つきや体形から女性だろう。角の数が男とは違って一本だ。

 そんな彼女を見てディンスレイは思った。

(このタイミング、なかなかに好都合かもしれんな)

 女が男に、ディンスレイには聞こえない声量で何かを伝えている。だが、それがディンスレイの予想通りだとすれば、非常に好都合な状況になるだろう。

 狙ったわけでは無いが、この偶然は武器になる。

 そんな答え合わせは、男がディンスレイに怒鳴る事から始まった。

「貴様! あの飛空艦には、遠距離での通信設備があるのか!」

 それは、こちらの首根っこを掴み持ち上げんばかりの勢いだった。ディンスレイがそもそも自由を奪われている身で無ければ、実際そうなっていただろう。

 だが、ディンスレイの方は笑ってその勢いを受け止める。何せ、当たって欲しい予想が今、この瞬間に当たったからだ。

「何もせず、君らの都市の上をうろついていたわけじゃあない。君の言う通りだよ。私達の仕事は……もう終わっているんだ」

 漸く主導権を握れた。今はそう断言出来るだろう。

 そもそも、オヌ帝国の都市上空へとブラックテイルⅡをワープさせた時点から、勢いはディンスレイ達側にあるのだ。

 ブラックテイルⅡがオヌ帝国に捕らえられるまで、シルフェニア本国にその位置を伝える時間は十分にあったのだから。

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