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無限の大地と黒いエイ  作者: きーち
無限の大地と言葉の力
53/166

⑦ 型に嵌まる

 ブラックテイルⅡの空戦能力について評価するなら、上等な類の飛空艦であると、ディンスレイは真っ先に答えるだろう。

(元々、新鋭艦を売りにしていたブラックテイル号の構造を元に、オルグの技術が試験的に導入されている。生半可な飛空艦よりは高性能だろうさ)

 ただ、それに比して敵艦……オヌ帝国飛空艦を相手にするとなれば、空戦としては不足があると感じる。

(あの飛空艦……その輪郭もデザインも、オヌ帝国のものに違い無いだろう。以前見た、あの飛空艦と同程度の性能があるとすれば……)


挿絵(By みてみん)


 既にブラックテイルⅡは飛び立ち、オヌ帝国飛空艦とその間合いを測り合っている最中と言える状況。

 このまま、正面からぶつかり合えば、ブラックテイルⅡの方が推し負ける。ディンスレイの経験則はその様な答えを叩き出していた。

(シルフェニアのそれを越える高度な船体フィールドに加速力。さらに今回、向こうは相応に警戒しているだろうから、油断も誘えないと来た)

 戦う前から、中々に難題と言えるかもしれない。ただ、危機感こそあるものの、自分の中の戦意が衰える事は無かった。

「諸君、まだ攻撃するなよ。手を出させるなら向こうからだ。そうして覚悟しておけ? この戦い、簡単に勝利は出来ん」

「それって、ハルエラヴを相手にした時とどっちが難しい?」

 ミニセルの問い掛けに、ディンスレイは笑って答えた。

「愚問だ。こちらはやり様な無限にある。希望が溢れている現状、絶望的などとは表現できんな?」

 今よりもっと困難で絶望的な状況があった。それより随分とマシな状況というのは、自身を太々しくしてくれるらしい。

(もっとも、それが油断に繋がってはならん。以前運良く生き残れた以上、今回、運悪く敗北する可能性とてあるのだからな)

 だからこそ、今は互いの飛空艦は様子を見合っている。

 油断出来ぬ、一筋縄では行かない相手。お互いそう認知しているからこそ、始まりの瞬間までに、長い睨み合いが起こる。

「今の状況、好都合かもしれませんね、艦長」

「副長もそう思うか」

「ええ。相手は未知の艦です。現在の動き、形状の観察から、その機能が類推できる」

「見ただけでアテにはならんかもしれんが、覚悟だって決められるわけだからな。で、あれを見たうえでの副長の考えはどういうものだ?」

 緊急時になって、テグロアン副長の弁が多くなった事を意外に思った。

 彼にはその手の適正があるのか、はたまた戦いの恐怖を誤魔化すためか。どちらにせよ、一度彼の意見を聞いておきたい。

「個性的ですね」

「ふん?」

 言われれば、以前見たオヌ帝国艦と似ては居るが形状は違って見える。伝聞で聞いている、シルフェニアを攻めて来ている他のオヌ帝国艦ともまた、違っている様に思えた。

「オヌ帝国側に、一般的な飛空艦というものがあれば、あの艦はその平均を逸している……という予想が出来ます」

「ははーん。なんとなく言いたい事は分かるぞ? 一般的で無い形状の艦というやつは、普通とは違った動きをするものだ」

「そこまでの評価は、私には出来かねます」

 なら、艦長であるディンスレイがして置こう。

 あの艦は一筋縄で行かないどころか、こちらの予想外の動きをする可能性が高い。それが丁度、この瞬間である可能性も―――

「ブラックテイルⅡ! 旋回速度を上げろ!」

 思考より先に声が出た様な錯覚。自らそれを感じるくらいに、ディンスレイ自身の判断は早かった。

 ブラックテイルⅡの操舵を行うミニセルは、そんなディンスレイの指示に疑問符を浮かべる前に反応してくれた。

 これが出来るから頼もしい。そうしてその頼もしさは、オヌ帝国艦の先制攻撃を回避する事に成功した。

 だが、その攻撃を見て、驚きの念は隠せない。

「はっ。少しばかり様子見の時間が長いと思ったら、さっそく奇襲から始めて来たか」

「お、オヌ帝国艦。船体右側部から攻性光線を発射しました……あ、あの隙間から撃ってくるかぁ……」

 テリアン主任観測士の報告と、感想が耳に届く。

 オヌ帝国艦は船体の装甲の隙間に見える部分から攻性光線を発射してきたのだ。

 それをこちらは急な旋回により避けた形になる。

「どうしますか、艦長? こちらも応戦しますか?」

「それも良いがな、副長。ここはまだ街の近くだ。少し距離を離させて貰おう。ミニセル君、船速最大で、あちらの艦と擦れ違えるか?」

「背中を見せるんじゃなくて、むしろ一旦近づいた上で、そのまま距離を置くって事? 無茶言うわね。迎撃があるわよ」

「上手く避けてくれ」

「はいはい。りょうーかい!」

 ミニセルにはそれが出来るから頼んでいる。それに今のタイミングなら、オヌ帝国艦はブラックテイルⅡの出方を伺っているタイミングだ。

 奇襲に寄る一撃目が避けられた以上、次の一手をどうするべきか。それをブラックテイルⅡの動きを見て考えるのが常道だろう。

 そこを突き、相手を揺さぶるつもりだった。

 断言するが、ここでブラックテイルⅡが敵艦に高速で接近してくるなど、誰だって分かるものではあるまい。

 だが……。

「うっそでしょ!? なんでそうやって避けて……みんな! 何かに掴まって!」

 オヌ帝国艦と擦れ違う形での突撃。それをブラックテイルⅡが行った瞬間に、オヌ帝国艦が避けたのだ。

 空を飛び続ける飛空艦が真横に避けるのは無理なので、接近するブラックテイルⅡと、オヌ帝国艦もより接近する形で、やや斜めの軌道を取ったという事だ。

 こちらの動きに合わせて来た。そうとしか思えなかった。結果、オヌ帝国艦にとって、すれ違ってくるブラックテイルⅡとの相対距離はその瞬間に、丁度良い距離となったのだ。

 どんな丁度良さか? 今、ブラックテイルⅡが大きく揺れたのがその答えである。

「敵艦! 再度攻性光線射出しました!」

「船体フィールドにも影響が出ています!」

 主任観測士と補佐観測士が交互に現状を報告してきた。一撃目こそ避けたが、二撃目の奇襲には対応出来なかった……いや、まんまと嵌まったと表現するべきか。

「艦へのダメージはどうなっている! 航行に支障は無いか!」

「安心しなさい! こっちの動きはまだ十分に出来てる! ダメージがあっても軽傷のはずよ……!」

 操縦桿を握るミニセルからの報告。とりあえずまだ飛空戦は継続出来る状況ではあるのだろう。

(上手く直撃からズラしてくれたな。咄嗟の状況で、船体フィールドで攻性光線を弾ける角度に艦を動かせるのが彼女だ。しかし……)

 今はそれを褒め称える状況では無かった。

「それより艦長! 奇抜な行動に慣れて、むしろ鈍っちゃったんじゃないの? あいつ、完全にこっちの動きを分かって動いて来たわよ」

「ああ……良く理解している。距離を再度置けるか?」

「もうしてる! けど同じ事をして、何度も避けられるとは思わないでね!」

 再び間合いを取り合う二つの飛空艦。

 そんな中、ミニセルの言葉に頷いたディンスレイは、次の状況を整理していく。

(確かに私の方は、奇抜なやり方というのに慣れていたが……鈍っているつもりも無い。さっきのやり方は、対応出来る方がおかしい)

 これは自分への言い訳では無く、受け入れるべき事実だ。

 上手く動きを合わせる事など出来ない状況で、それでも合わせて来た異常。

 今、ディンスレイが正しく受け止めるべきは、そのオヌ帝国艦の異常さである。

(いったいどんな方法で? その方法を探る材料が今、あるか?)

 間合いを置かせたのは、その思考の時間を稼ぐためだった。

 オヌ帝国艦も次の手が無いのか、あっさりブラックテイルⅡとの相対距離を離して行く。

 これは相手の余裕に寄るものか。それとも油断?

(もしくは……いや、待てよ? もしそうだったとしたら……)

 思考する時間を稼いだ甲斐はあった。

 いや、それが良い事かどうかはこれから決まるだろう。一つ、ディンスレイの頭の中に考えが浮かんだが、それが答えであるとはまだ断言出来ないのだ。

「メインブリッジの諸君。これから、また私は奇抜な指示を出すつもりだ」

「ふむ? それが艦長の趣向という事ですか?」

 テグロアン副長の問い掛けに、ディンスレイは真顔で返す。

「確かに私はそういう部分がある。だが、今回に限っては趣味のそれじゃあない」

「何よ、嫌な予感させる様な事を言って来ないで」

「良い勘をしているな、ミニセル操舵士。奇抜な事をして……恐らく、私の予想が正しければそれも失敗する」

「えっ!?」

 驚きの声を上げたのはララリートであった。他の船員を見れば……また何かを始めるつもりだなという視線と、何を考えているか分からないテグロアンの表情があった。

「どういう事をするか分かんないですけど、何時もの艦長って感じしますね。いやー、わくわくして来たな、ちくしょー!」

 良い太々しさだテリアン主任観測士。そういう図太い神経をしているのであれば、一度の失敗くらいでへこたれはしないだろう。

 わざと失敗するというのは新鮮な経験だろうけれど。

「さっきの飛空艦同士のやり取りで、細かい機動性はこちらが上だという印象を受けた。という事なら、高度を上げて、性能比べをしてみるというのも手だとは思わんか?」

 以前遭遇したオヌ帝国艦と同程度の性能を今回の相手も持っているとしたとしても、船速は兎も角、艦自体の機動性能はブラックテイルⅡに分がある様に思えた。

 あくまでそれはまだ確定情報では無い。

 だが、それを試す事は出来るはずだ。

「お互い、高度の有利を競い合いつつ、その実、飛空艦の性能が落ちる高度限界まで敵艦を引っ張っていくって事ね? 街に被害を出さないやり方にもなるし、変わったやり方の中では結構良いやり方じゃない? それなのにその……」

「ああ、失敗する。恐らくな。だが、これにしたって、こちらの空回りで失敗するなら妥当と言えるが……」

 オヌ帝国艦が対応して来る形で失敗したとしたら……。

「何にせよ、私達は来たる失敗に対して、被害を最小限に抑える努力をしながら、それでもそれに挑む覚悟も持たなければならいわけですか」

「良い気分になって来るだろう、副長?」

「いいえ、まったく。しかし、艦長の指示には従います」

 本音が分からない癖に、本音をずけずけと言って来る男だ。

 悔しい事に悪い印象にならない。むしろ頼りになると思ってしまう。

(合格だよ副長。君は私の艦の副長に相応しい)

 内心で評価しつつ、口では別の事をディンスレイは発する事にした。

「次の指示は分かったな? 皆、準備を頼む。特にミニセル君」

「はいはい。いざとなったら、あたしの腕だけが頼りになるって言うんだから、参っちゃうわよねぇ!」

 何の反論も出来ない言葉だったので、ただディンスレイはミニセルの腕と、ブラックテイルⅡの動きを見守った。

 ブラックテイルⅡが再びその性能を発揮する。

 その形状と導入したオルグの技術に寄り、ブラックテイルⅡの機動力と旋回性能はシルフェニアにおいてトップクラスどころか文字通り頂点の性能だ。

 艦同士の相対距離さえ縮めれば、優位に立てる飛空艦はそうは居ない。それこそオヌ帝国艦も含めてだ。

 既にミニセルは間合いを取り合う艦の動きに絶妙なズレを発生させ、気が付けば距離を縮めているという状況を作り出していた。

 そうして仕掛ける。

「こうすれば乗って……来ないわねぇ!」

 彼女が動かすブラックテイルⅡはオヌ帝国艦との距離が縮んだその瞬間に艦を上方へと移動させた。

 普通、この様な動きを見せつけられた側は、何らかの対応をしようとしてくる。一番有り得るのが相手艦もまた高度を上げるか相手のその動きを妨害して来ようという動き。

 だが、オヌ帝国艦はどちらもして来ない。

 まるでブラックテイルⅡの動きが陽動である事を見抜いたかの様に。

「乗って来ないなら、高度の優位がこちらにあるという事だ! 相手の斜め上方を取り、攻性光線を食らわせてやれ」

「それが上手く行けば……って、行かないって話だったわよね!」

 その通りだ。今の時点ですら、既にディンスレイはそれを感じ取っていた。

 相手艦のその特異性についてを。

「……今だ、撃て!」

「まだ最適な角度じゃありませんよ!?」

 テリアンの言葉に対して、ただディンスレイは指示を返す。

「それで良い。いや、だからベストだ! 放て!」

 ディンスレイのその言葉に反論するメインブリッジクルーも居ない。

 ブラックテイルⅡは攻性光線を放つ……より前に、やはりオヌ帝国艦はその装甲の隙間より、先んじてブラックテイルⅡに攻性光線を放ってきた。

 再び揺れるブラックテイルⅡ。だが、艦はまだ健在だ。

「はっ、言っただろう? さっきの角度がベストだとな!」

「そりゃあこっちが万全に攻撃出来る角度じゃないから、向こうもそうだってんならそうなんでしょうけど! これで耐えて……何か分かったの!?」

 再びまた艦を立て直す動きをさせながら、ミニセルが文句を言って来た。

 二度目の失敗。それも予告した通りに。確かにここで何の結論も出せないとなれば、文句どころで済まないだろう。

 勿論、これ以上の文句なんて言わせない。

「ああ。これで十分だ。奴め、あのアルガンというワッパーが恐らく……艦長をしている」

「……その可能性は確かにありますが、どうしてその様に?」

「副長……我々は二度、相手艦に動きを読まれて反撃に遭った。それも、一般的な観察眼では説明出来ない程の先読みだ。これはもう……心を読まれたとすら言える状況だろう。違うか?」

 考えを予想したなどという言葉に収まらない特徴だ。

 あの艦の性能というよりは、艦に指示をする者がそれをしたと考えるべきなのだ。二度の失敗をする事で、ディンスレイが漸く出せた結論がそれなのである。

 オヌ帝国艦の艦長がワッパーであるならば、ブラックテイルⅡの微妙な動きから、その意図を読み取る事が出来るかもしれない。そういう結論であった。

「飛空艦はその内側に複数名の船員を抱えつつ、動きとしてはまるで一個の巨大生命の様に飛行し、戦うものだ。ワッパーが相手の動きや様子からその意図を察する事が出来るのだとしたら……飛空艦にもそれが適用される」

「冗談でしょう?」

「主任観測士。君がそれを言うか? 君こそ、相手の動きを見て、こうじゃないかと予想する立場だろう?」

「そりゃあそうですが、相手の動きを見て、相手艦の中の意図まで察するなんて、それは無茶ですよ」

「私はそれをする時がある」

「……ああもう。反論出来ないなそれ」

 ある種の経験則と才能。それがあれば出来ない事は無い。

 そうして、才能部分においてワッパーとはそれを持っているはずだ。

「けど、実際にそうだったとしてどうするのよ。こっちの動きを全部読んで来る相手に対して、あたし達は圧倒的に不利って事になっちゃうわよ」

「向こうの得手が分かるだけでも大分違うさ、ミニセル君。何より、今、こうやってまた膠着状態になっている事が、向こうにも制限がある事が分かる」

 二度、ブラックテイルⅡはオヌ帝国艦の反撃を食らい、そうして無事のままだ。

 多少ダメージを受けてはいるものの、未だ空戦が可能な状態を維持している。三度目が遭った時は分かったものでは無いが、それにしたところで向こうとて攻め手を欠いている。

「相手の動きに対応する形で向こうも動く。こちらの動きで意図を探っている以上、後の先を取る方法でしか有利を取れないわけだ」

 だからこそ、一戦した後に膠着が続く。というより、ブラックテイルⅡ側が様子を伺い始めるから、オヌ帝国艦側も様子を伺い出すのだろう。

「では、このまま睨み合いを続けますか、艦長。それをするだけでも、オヌ帝国側の情報は集まります」

「それはあまりにも消極的過ぎるだろう、副長。こちらの動きを読む事で相手が有利に立つというのなら……また別の手段がある。私個人としては、あまり好みでは無い方法だが……」

 だが、オヌ帝国艦に目に物言わせられるのであれば、個人的な好みなど捨ててしまうが吉だろう。

「この場合……どういう方法があるんですか? 艦長……?」

 未だ消耗している風に見えるララリートであるが、こういう状況でも艦長として如何に考え、行動するかの興味が勝るのだろう。ディンスレイの目指す先を聞いて来た。

 だから答える。艦の意思を作り出すために、メインブリッジメンバーの疑問に答えるのは艦長の仕事だ。例え相手にそれが読まれようとも、ブラックテイルⅡの強さの一つを捨てるつもりは無い。

「考えを読まれると言っても、読んだ考えを、相手は相手自身の常識で対応する。正面からお前を襲うという意図を読んだ者は、殴り掛かられた時にそれを避けるか反撃として殴り返すのを考えるわけだな?」

「そりゃあ、棒立ちって事にはなりませんよね。僕だったら……背を向けて逃げ出すなぁ」

「それも手段だろうな、主任観測士。そうして、考えを読まれた側はこうするわけだ。魔法杖を取り出してその背中に向けて衝撃波を放つ」

 シルフェニアの技術を使って作り出した利便性に富む飛び道具。それで攻撃するというのも、正面から襲うという思考の元に発生しうる事態だ。

「そんなのズルですよ! そりゃあ相手が魔法杖を持っているのなら、こっちだって色々と考えます」

「つまり、こっちに魔法杖がある事が分からない場合は、やはりまんまと引っ掛かるわけだろう? 今、この状況においては、それはブラックテイルⅡの性能になる」

 これは別に頓智の類や、引っ掛け問題をしているのでは無い。

 まず間違いない実戦の最中において、出来るズルがあるという事だ。それがズルである以上、戦いにおける有利として現れてくれる。

「相手の知らない技術……ワープ……とかですか?」

「そうだな、補佐観測士。その技術もまた、相手が知らない以上、こちらがどんな思考をしたとして、相手は具体的な方法を予見する事が出来ない。むしろ深読みしてくれるかもしれんぞ?」

「そっか……今、わたし達はワープが出来ます。なら、ワープで逃げる事だって出来るんだっ」

 なかなか頭が回る様になって来たじゃあないか。

 そうだ。ブラックテイルⅡは建造したシルフェニアからすら謎の多い飛空艦だ。ブラックボックスが多く、まだその機能の全容を、それを動かしているディンスレイ達すら把握していない。

 そんな飛空艦は、それそのまま強みになる。相手がこちらの考えを読むというのなら、ブラックテイルⅡの機能がそれに対する武器になるだろう。

「じゃあ、これから虚を突いてワープするって事ね。あらやだ、相手がいざ戦って決着を付けようとする場面で、まんまと目の前から消え去ってさよならするわけだ。なかなか、良い性格の作戦じゃあない?」

「いや」

「違うの?」

 ミニセルの言葉も魅力的であったが、違う案がディンスレイの頭の中に浮かんでいた。

 だからディンスレイは笑みを浮かべて、操舵士を含むメインブリッジメンバーに自らの意図を伝える。

 自分達は動きだけで相手の意図を読むなど不可能だ。だから言葉にして伝えるのだ。

「もっと面白い方法がある。それをやってみせようじゃないか」

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