② 舞い踊る白と黒
朝焼けの赤の空に影が一つ。
それは接近するにつれて影が晴れ、その姿を現して来た。
空の赤を反射させる赤。つまり本体は白銀を思わせる装甲を持ったそれ。大きさは目測でブラックテイル号と同程度。
だがブラックテイル号以上に流線形の輪郭を持っていた。
「見ろ、皆。あの装甲を。装甲と装甲の間の繋ぎが非常にスムーズだ。あの流線形で飛空船を形作るのは、我々の国の技術ではまだ不可能だろう」
ディンスレイは白銀の飛空船を指差して呟く。
ここにガニ整備班長がいないのが残念だ。あの姿だけで、どれだけ話が弾んだ事だろうか。
だが、他の船員は冷静かと言えばそうでもあるまい。
「相手の船の後方部分、見えますか? あそこだけ流線形が崩れてる。すごい変わった形ですけど、あれ、多分推進器ですよ。いったいどういう効率であんな形してるんだ?」
メインブリッジでもっとも相手の飛空船を見つめているであろう観測士のテリアンもまた興奮を隠せない様子だった。
誰だってそうなる。この未踏領域で漸く、自分達か、自分達以上の技術を持ちながら確かにそこに居る存在に出会えたのだから。
「ちょっと落ち着きなさい男ども。こういう状況で相手を観察するのも大切だけど、まずやるべき事はあたし達がどうするか……でしょう?」
「確かにその通りだミニセル君。君らしくも無い冷静な発言じゃあないか。思うところでもあるのかな?」
「あたしらしい発言ってどういう発言よ。良い。実際に言おうとしないで。っていうか、冷静にもなるわよ。タイミングというか、場所が寄りにも寄ってここよ?」
何かの兵器により穴だらけになった場所。そこに現れた異文化の飛空船。好奇心より警戒が上回ると言ったところか。
(そこに関しては私も……同じなのだがね)
表面上は楽しくしているが、内心では冷や汗が勿論止まらない。ああそうだとも、警戒心は持つべきだ。
ここに自分達が来たのは、誰かに誘われたからなのだ。その誘って来た相手が漸く現れたのかもしれない。
「ミニセル君、艦をこう、左右に振れないか?」
「近づいたり距離を置いたりじゃなく?」
「そうだ。こちらはそちらの存在に気が付いているぞ。反応だって示しているぞと、出来る限り余計な警戒を与えずにやっておきたい」
「なるほど。それで向こうも同じ反応を示して来たら、とりあえず敵意はお互いに無いって事になるか」
言語も文化も違う相手のはずだ。飛空船同士と言えどもボディーランゲージから始めておく必要がある。
「じゃあちょーっと揺れるわよー」
ミニセルはそういうが、実際はゆったりとした揺れだった。鋭い動きは多くの状況において相手を警戒させるというのをミニセルも分かっているのだろう。
あくまで滑らかに、そうしてある種、無駄である動きをする。そんな無駄な動きは、相手に思考を促すはずだ。
思考は対立よりも、まず相手を伺う事を優先させてくる。
(さて。次にこちらがやるべき事は相手を―――
『ȕɄȻȎǂƠƠȺxȜƂVɅMǾ』
声が、聞こえた。どこまでかは知らないが、少なくともメインブリッジ全体にその声は聞こえたのだ。
意味は分からなかった。何を言っているのかはまったく分からない。
だが、その言葉の種類なら分かった。
「エラヴの……言語……?」
それは、聞き覚えのあるものとは少し違っていたが、それでも印象はエラヴのそれだった。
「これ……この声がそうなの?」
ミニセルの反応を見れば、ディンスレイだけの幻聴と言うわけでも無いらしい。
ならば、状況から考えてこの声がいったいなんなのかくらいは分かる。
「あの船から、こちらへ話し掛けて来たんだ。彼らはやはり、まったく離れた場所から離れた場所へ、声を伝える技術を持っている」
「けど、言葉が分からなきゃこっちはどうすれば。あ、けど、その手の翻訳技術があったりしませんかね? 僕らがこうやって話を続ければ、向こうが勝手にこちらの言葉を―――
テリアンの楽観論が遮られる。誰かにでは無い。何かにでも無い。
白銀の飛空船から飛び出して来た、輝く光線に寄ってその言葉は止まったのだ。
それが何であるか……ディンスレイ達は知っている。
「攻性光線!? 敵船、攻撃を仕掛けて来た!」
「今の、最初から外すつもりだった……当てるつもりなら、完全にこっちにぶつかってたわ!」
「じゃあ、じゃあこれ、威嚇射撃って事ですか!? 相手さん、酷く攻撃的な種族って事で、迂闊な事をしたらこっちを落として来るつもりじゃあ……」
テリアンの危機感はもっともだった。
さっきの攻性光線。色は青。こちらの技術と同じものかは分からないが、威力としては十分に相手を傷つけ、破壊出来るそれに見えた。
それを交流の初手から放ってくる相手。それはこちらの行動は慎重にならなければならないという緊張感を与えて来る。
ディンスレイ以外には。
(違う……これは……違うぞ!)
ディンスレイが感じたのは、緊張感や危機感以上の焦りだった。だから叫ぶ。
「機関室、聞こえているか! いますぐ推進器に光石を接続しろ!」
『は!?』
すぐさま機関室に通信を繋ぐが、ガニ整備班長は当たり前に困惑の声を返して来た。
こんな反応が返って来るのは分りきっていた。予想だってしていたが、それでも今は自身でも不本意な命令を出さなければならない。
「問答も説明も後だ! 無視するなら全員が死ぬぞ!」
『っ……了解!』
戸惑いながらも、ガニ整備班長は命令に従う返答をしてきた。
機関室に純軍人のガニ整備班長を雇っているのはこれが理由だ。いざという時、説得するという行為すらも愚行となってしまう緊急事態に、すぐさま従ってくれる人間が、艦の心臓部に必要なのだ。
後はメインブリッジでディンスレイの方がやるべき事をするだけ。
「ミニセル君、どの方向でも良い! 逃げろ!」
「ああもう!」
後で説明しなさいよ。そんな言葉だって我慢して、ミニセルの方もすぐさま従ってくれた。
彼女の方は軍人では無いから、彼女自身の勘がそうさせたのだろう。
結果、光石の力に寄ってブラックテイル号は驚異的な推進力を発揮し、空域から一気に離脱していく。
その瞬間、下方に二射目の攻性光線が通り過ぎていくのを、一瞬であるがディンスレイは見た。
その一瞬前にブラックテイル号が居た場所に、光性光線が届いたのだ。
放ったのは当たり前に対面していた白銀の飛空船。
いや、今は敵船と表現するべきだろう。
「攻撃……してきた!? あの船が!?」
戸惑いの声を発したのは今なお、観測を止めていない観測士のテリアンだった。
彼の仕事上、ディンスレイ以上に目の当たりにしたはずだ。敵船から光線と共に放たれてくる敵意を。
「あの光線の角度だ。あれは威嚇射撃では無く、未知の敵に対して一射目で敵の反応を見て、次に当てるつもりのやり方だった。軍で学んだ者もいるだろう!」
「言ってる場合! っていうか何で攻撃されてるのよ! あたし達何かした!?」
分からない。知らない間に猛獣の尾を踏んでしまっていたりするのが異文化との接触と言うものだが、そもそも一歩も足を踏み出したつもりは無かった。
それ以前の段階で、敵船は攻撃してきたのである。
「今は逃げろミニセル君。こっちが攻撃に回るのはまだ避けたい」
「けどねぇ、艦長! 嫌な予感しない? 今さっき、反転してしっかり逃げてるつもりだけど……」
後方からプレッシャーを感じる。逃げを選んだ時点で、艦の位置関係から、後方に置き去りにした敵船が見えなくなったのは失策だったかもしれない。
光石の力を得たブラックテイル号の船速は、ディンスレイ達にとって、今なお驚愕のものである事に変わり無い。
だが、それでも敵船との距離が変わっていない様な、そんな気さえしてくるのだ。
「艦長」
「なんだミニセル君」
「あたしの勘、信じてみる?」
「今は君の勘だけが頼りだ」
「りょう……かいっ!」
艦が上昇する様に船体を傾かせたその瞬間に、一時推力が無くなる。
空中で急制動を掛ける様な動き。実際は止まったわけでは無く、速力を落とした程度の動きであるが、もし、万が一、敵船が追って来ていて、さらに光石の力に寄って加速しているブラックテイル号に追いつく事が出来て居るとしたら……。
(その答えは、今、この瞬間に分かるはずだ)
こちらの急な減速に対して、敵船の反応が遅れたのならば、勢い余ってブラックテイル号の近くを通り過ぎるはず。
そんな予感は外れる事になる。
敵船は、通り過ぎはしなかった。
だってブラックテイル号のすぐ横に、並んできたからだ。
(船の性能を……見せつけて来た……?)
圧倒的な飛空船としての性能差。それが無ければ、相手の艦の突発的な動きに、後からタイミングを合わせて並ぶなんて事は出来ないからだ。
この動きが出来る以上は、後方からさらにブラックテイル号を追撃してくるのも可能だったはずだ。
それをしなかったのは慈悲か、それとも……。
「失礼、メインブリッジの皆さま。遅れましたが、わたくしの謝罪を聞いている暇も無さそうですな。ですが、こちらの方の言葉は聞いておいた方がよろしいかと」
艦の緊急事態に、休憩中だった副長のコトーもメインブリッジへと急ぎやってきたらしかった。
「副長。確かに悠長に話している時間は無いが、確かに聞いておいた方が良いな。この状況でララリート君の話は」
「は、はいっ。さっきの声、ちゃんとわたしも聞きましたっ」
あのエラヴからの声。されはメインブリッジだけで無く、艦全体にも聞こえていたのだろう。
スペシャルトーカーのララリートであれば、その声の意味が分かるはずだ。
今の振り回されるだけの状況から、多少は相手の意図を探る事が出来る……かもしれない。
「あの声っ、屈服しろって……そういう言葉でした!」
「なるほど。そう来たか……」
泣きそうなララリートの声をかき消す様に、再び敵船の攻性光線が放たれる。
今度はブラックテイル号が揺れた。身体のバランスを崩す程では無い。
つまり攻性光線が直撃したのでは無く、船体を掠めたのだ。
今度もまた、こちらの様子を伺い、それ以上が無ければ沈めて来る次の一撃を放ってくるつもりか。
ララリートの言葉を信用するなら、屈服させると相手は言ったらしい。
ただしそこには悠長に生かすという語彙は含まれていないはずだ。
何もかもに敗北して死ね。その手の言葉なのだろうと予想出来る。会話では無い。通告だ。技術はあるはずなのに、最初の言葉以外、一切何も言って来ない事がそれを示している。
(なんたる傲慢さだ。言葉は分からなくとも伝わって来る。これが……自分達以上の技術力を持っているというのが恐ろしい)
故に相手の言う通りに屈服するか? 大人しく相手の攻性光線で艦を撃墜され、大地の塵と成り果てるか。
冗談では無い。こちらに動く艦と頭がある限りやるべき事をさせて貰う。
「ミニセル君。再度船速を上げろ。ただしさっきみたいに敵船を後方に逃げるのは無しだ。どうせ追い付かれる」
「了解だけどね、艦長? どうするつもり?」
ブラックテイル号の高度をより上げつつ、さらに敵船の追撃を避ける軌道を取らせながら、ミニセルが尋ねて来る。
身体が傾き転がるのを防ぐに必死なディンスレイだが、今は彼女との連携が大事だ。言葉だって惜しまない。
「敵船はこちらを沈めるつもりだろうが、かと言ってすぐさまそれをしようとするわけでは無い。屈服という言葉には、負けを認めさせるという意味が含まれている。つまり……こちらを一瞬で沈める事を避けようとしているんだ」
「舐め切って遊んでるって事ね。で、ならどうするの?」
「こちらに立てられる爪がある事を極力隠す。敵船の後方を、船速を上げながら、回り込む様な軌道を取り続けろ。必死になって相手の後ろを取ろうとする様に演じろ。実際に取れたなら素直にこっちから攻撃してやろうじゃないか」
「けどま、それは上手く行かないっとぉ!」
ブラックテイル号に演技とは言え、複雑な軌道を取らせ始めたミニセル。結果、やはり敵船はその進路を防ぐ様に後から動き、先に辿り着くを繰り返してきた。
船の速度も、その旋回性能も上だと見せつける様に。お前達の動きはすべて無駄に終わると実感で分からせる様に。
「良いか、これを繰り返せ。焦れる心を抑えつけろ。今、焦りを感じているのは私達だけでは無い。敵船もだ」
単純に先回りを続けるだけでは、こちらは屈服しないと徐々に思わせるのだ。
実際のところ、光石は何時までもブラックテイル号に力を貸してはくれない。推進器の限界がある以上、耐久戦はいずれブラックテイル号の敗北に終わるはず。
だがそれも悟らせない。むしろ、何度だって、何時だって挑戦し、有利な位置さえ取れればこちらに勝機があると必死になっている風に見せなければ。
「なぁに、相手は自分達が有利だと思い込んでいる。事実そうなのだからそう思う。故に、それを理解せずに足掻き続ける小虫に対して、いい加減苛立ちを感じ始めるだろうさ。それは多分、ブラックテイル号の限界より早い」
なんら根拠は無いが、唯一の希望なのだから断言する。それに、それ程可能性が無い話でも無いとディンスレイは思うのだ。
足掻きは無駄にならない。まだ諦める時では無い。
「今先回りをする軌道から、こちらを止める。仕留めると言った動きを必ずするはずだ。足掻いている弱者に対して、その行為は無駄に終わると明確に示す動きを敵船はする。その時瞬間、むしろ驚かすにはどうする?」
ミニセルに尋ねる。
分からないのなら説明する必要があるだろうが、ミニセルはこちらを振り返らず、ただ頷いてくれた。
「その一瞬に賭けろって事ね。やってみるけど……外さないでよ、艦長」
ただの言葉の返しであったが、こちらの意図を察していなければ分からぬその言葉にディンスレイは満足した。
ここには理解者がいる。なら、恐れる事など何も無い。あとはタイミングを測るだけ。
旋回して後方に回ろうとすれば、敵船は空気抵抗など無い様に反転する。
上方より文字通り上回ろうとすれば同じ動きで同じ高度を維持してくる。下方、地面スレスレを移動しようとすれば、常にブラックテイル号のすぐ上に位置取り、抑えつける様な動きを取り続ける。
フェイントを入れた軌道を取れば? 相手の性能は後出し対応してきて、それでも十分に間に合う動きを見せつけて来る。
出来る事をすべて試し、すべてが無駄に終わる。それを理解する。そうして、それを理解しないフリをする。
愚行を再び繰り返す。そのタイミングで―――
「来たぞ!」
敵船の動きが変わった。こちらを抑えつける動きから、一つ、動作が多くなった。
攻性光線を放つ動きだ。敵船に砲身は無く、こちらが見る限りにおいては、その白銀の装甲のどこからでも放てるような、そんな攻撃を仕掛けて来ていた。
だが、それでも、ブラックテイル号を正面に回り込んでそれを放とうとしている。
先回りを続けるのでは無く、一手多く、立ち塞がろうとする動きを敵船はしたのだ。
だから一手先に覚悟を決めていたブラックテイル号が、この瞬間のみ先んじる。苛立ちに敗北したのは敵船の方だ。
ブラックテイル号に立ち塞がり、攻性光線を放とうとした敵船は、無論、これまでと同じ様に、ブラックテイル号が回り込む動きをするだろうと予想したはずだ。
「臆するなよ、ミニセル君!」
「誰に言ってんの!」
ブラックテイル号は回り込まない。軌道は変えない。止まりもしない。
むしろ速度を上げたのだ。
向かう先は、立ち塞がる敵船に対して。特攻の動きだ。
通常ならば容易くこちらを迎撃する事が出来ただろう敵船の性能。だが、向こうはこちらを侮ってくれた。こちらの絶望させる事に力を注いでくれた。
ブラックテイル号の性能そのものは兎も角、その乗組員達を絶望させる事なんて出来ないのに、そこに無駄に力を注いでくれたのだ。
だから隙が出来る。敵船を操る何者かの心の中に。
(敵船が、こちらの軌道を避けた!)
咄嗟の動き。シルフェニアの飛空船ならばそんな急速な動きなど出来やしないだろう。
だが敵船は出来る。そうして特攻する軌道のブラックテイル号を悠々と置き去りに、さらなる追撃を行える……などという状況になる前に、ディンスレイは引き金を引いた。
「避けると……思っていたさ!」
ブラックテイル号の狙いは特攻では無い。特攻を敵船が避ける事をも予想した、超接近状態からの攻撃である。
ディンスレイはブラックテイル号尾部主砲を敵船に向けていた。
端から、敵船はそうしてくるだろうとさえ予想していた。だってそうだろう? 思いも寄らぬ動きにビビった相手は、咄嗟の瞬間に逃げる事しか出来やしない。
あらゆる部分で劣るブラックテイル号であるが、覚悟の面だけは一歩、相手を出し抜けた。
だからその主砲の一撃が、ブラックテイル号をギリギリ避けた敵船に向かう事となる。
避ける事など出来ぬ超接近距離。その赤い攻性光線は秒すらも数えられぬ速度で白銀の船体に届き―――
「っ……」
その船体が消え去った。
その光景を、もっとも見ていたのはディンスレイだろう。自らが狙った標的が消え去った。
それはブラックテイル号の攻性光線が敵船を光の只中で蒸発させたという事か。
いいや違う。そんな事は出来やしない。それを一番見たからこそ、ディンスレイがまっさきに目を見開き、驚愕したのだ。
「くそっ……奴がエラヴの飛空船だというなら、これが出来る事くらい、分かっていただろうに」
消え去ったはずの敵船が、またブラックテイル号の前方に現れた。
その姿は無傷。攻性光線が効かなかったわけではあるまい。そもそも当たらなかったのだ。
敵船は、エラヴの飛空船は、ワープ技術を持っているのだから。
「ミニセル君!」
「ああもう! 次はさっさと全力で逃げるってんでしょ! けど―――
ブラックテイル号が激しく揺れた。先ほどまでの攻撃の比では無い。敵船の攻性光線が、確実にブラックテイル号の船体に突き刺さったのだ。
(左右の翼のどこかか? それとも胴体近くを掠めたのか? だが万が一……)
船員がいる区画に破壊が及んだとすれば?
どんな瞬間にも希望を捨てない、絶望もしないディンスレイであるが、その想像だけは恐ろしかった。
過酷な旅である事は分かっている。命の知らず達が艦を動かしてくれている事も理解している。
けれどそれでも、そんな彼らのうちの誰かを失ってしまうというのはゾッとしてしまう想像だった。そうしてその想像は、今、現実となってブラックテイル号を襲っているかもしれない。
「まだ……諦めるものか! まだ手段を探す! でなければ……」
でなければ、本当に、死んでいったかもしれない者達に申し訳が立たないでは無いか。
ディンスレイはそれを言葉に出来なかった。
敵船はもはや、ディンスレイ達を打倒するべき敵だと判断したらしい。
敵船から放たれたその攻性光線は今度こそブラックテイル号のメインブリッジへと向かって来て、ディンスレイの視界を光に染めて行った。




