⑤ 会議が回れば事態も回る
砂一粒一粒はある種の機械であり、独自に動く機能がある。
そうしてその砂は、全体の動きとしてはブラックテイルⅡを一方向へ押したり、ブラックテイルⅡへと侵入してくるものであった。
ディンスレイの手元に入って来たそれらの情報は、今は船内幹部全員へと共有されている。
探索班が帰還し、探索先で発見した物の報告と同時に。
「私達探索班が見たものは、ただの黒い砂でした。この周辺にはそれしかありません。少なくとも私達は黒い砂しか無い事を確認しています」
ブラックテイルⅡ会議室。現状、艦内へ入って来る黒い砂対策のための中心でもあるその場所には、船内幹部一同と、そうして帰還した探索班の代表であるカーリア・マインリア船員の姿があった。
船内幹部会議が開かれた……わけだが、黒い砂の侵入はまだ止まっていない。なので黒い砂対応と並行する形での会議だった。
会議の最中でも、黒い砂に関わる事であれば、他の船員も遠慮なく入る様にとの指示も出している。
なかなかに不格好な状況であるが、誰も文句は言っていない。言っても始まらず、むしろ話を受け入れる事に寄ってしか事態が進展しないからである。
「一応、主任観測士としては探索班の助けになる様、地形的に特殊に見える場所を探索場所として指定していたんだけど、そこにも黒い砂しか無かったのかい?」
テリアン主任観測士もまた尋ねる。彼はついさっきまで、メインブリッジの方でブラックテイルⅡ周辺環境やその位置について観測をし続けていた。一度休養を挟ませてはいるが、疲れが見える表情を浮かべている。
それはつまり、未だブラックテイルⅡが砂上を動いている……いや、砂に動かされ続けているという事であった。
その動きは相変わらず遅々としているそうで、だからこそ彼は、カーリア船員からの報告を何かの助けとしたいのだろう。
「あえて勘違いをさせる表現で答えますが、その地点にも、黒い砂の塊しかありませんでした。早々に辿り着けたので、確認も入念にしています」
文字通り、そこには何も無かった。そういう報告である。が、一方でそう勘違いしてしまう報告でもあった。
本当に何も無いのなら、彼女をわざわざ船内幹部会議に出席させたりしない。
直接、状況を見た探索班員の意見が重要だからこそ、ディンスレイはカーリア船員をここに立たせている。それくらいのものを、彼女は発見しているからだ。
「く、黒い砂だけしか無かった……な、なのにそれは一塊になっていた……ま、間違いありませんかぁ……?」
次にアンスィ船医もカーリア船員へ質問する。彼女の場合は、好奇心がかなり入った問い掛けであろう。
そんな質問に対しても、カーリア船員は淡々と口を開いた。それもまた仕事だと言わんばかりに。
「はい。そこも間違いありません。黒い砂だけで、それが塊になっていました。主任観測士が見た特殊な地形とは、その塊だったのでしょう。その……手で触れた質感は、他の黒い砂と変わらないものだったのですが、それがどうしてか小山の様に積もり、さらにはある種の……形になろうとしていました。三角推をより複雑にしようとしている様な、そんな状態です」
そこは直接見た側とて形容が難しいらしい。後で絵でも描かせてみようかとも思ったが、今はその工程より先に、船内幹部会議を優先していた。
「接着剤やら構造材が無いのに、そんな形になってるってのは変よね? 入念にってことは、そこも確認してみたのかしら?」
続くミニセルもまた、報告内容の確認を優先していた。重要な発見だけあって、間違った受け取り方をしてはいけないという事だろう。もしくは、ミニセルはこのカーリア船員を特に後輩として意識しており、その仕事振りを確認したかっただけか。
「勿論です。地面にある砂の方は、手で掬っても流れていく様な質感でしたから。それが何ら助けも無く明確な構造を取ろうとしているのはおかしいと判断し、何かがあるとの探索を続けました。そうして―――
「さっきの報告通りというわけだな。本当に、黒い砂しか無かった」
そろそろ頃合いかとディンスレイが話をまとめる。
探索班は主任観測士からの助言の元に探索場所へと向かい、そこで黒い砂が何かの構造を作ろうとしているのを発見した。
まあそんなところだろう。まとめてみれば、ただそれだけの情報に過ぎないわけだが、あくまで探索班からのそれは出揃った情報の一つでしか無い。
それぞれを組み合わせる事が出来れば、大きな構造が見えて来るはずだ。それこそ、艦内にも存在している黒い砂の様に。
「何故、ただの砂が、その様な構造を取れるのか。それについては、既に答えは出ている」
「本当ですか?」
今度はディンスレイの側がカーリア船員に尋ねられたので、素直に頷きで返した。
こちらとしては、タネが割れた手品の様なもので、新鮮味が無い話ではある。
「砂は一粒一粒が独自の意図をもって動いている。かなり小さな動きであるが、自ら一方向に進もうとする力も持ってもいるのだよ。つまり、何らかの接合材の様なものが無くても、砂の力だけで、ある種の構造は作り出せる。君が見たのはそういうものである可能性が高い」
「え、ええっと……本当かどうかというは一旦置いて、それならば理由にはなります……ね?」
カーリア船員にとっては、探索から帰ってすぐの報告であったから、信じ難い話ではあるのだろう。
だが、これはあくまで序の口だ。ディンスレイにとっては、単なる事実の再確認でしか無く、そんな事で船内幹部会議は開かない。
「カーリア船員の報告において重要な話というのはだな、やはり砂の意図だと思っている。その構造を作れるかどうかの話は、現状、作れるだろうという答えになるが、では作れたとして、何を作るつもりなのか。そこが肝心だ」
他の船内幹部達に異論はあるかどうか。確認のために目配せしてみれば、ゴーツ整備班長が小さく手を上げていた。本人曰く、そうしなくて良い場所でも、発言があれば逐一手を上げる癖が付いてしまっているそうだ。
「これ、一応の確認なんですけど、継続して砂が艦に入り込んで来てるってのは頭に入れておいてください。俺としてはそれがどこまで行っても一大事項だ。機関部が壊れたら、俺達はそこでおしまいになる」
議題としては、そこも大きな課題ではあるだろう。
いや、少し違うか。
「私としてはな、整備班長。その話も、カーリア船員の報告も、すべて纏められると思っている」
「それは大きく出ましたねー、艦長」
「勿論、主任観測士、君の報告もだ」
黒い砂に纏わる物事。そのすべては、ある種、一つの大きな動きとしてあるのだとディンスレイは考えていた。
というより、大前提を我々が忘れているだけだろう。
「我々はここに、我々が撃墜した飛空船を再発見しに来たのだろう? そこにあったのが、特異な黒い砂だ。私はこれもな、一つの事象として説明できると考えている。時間を稼いだり探索班が頑張ってくれた結果としてだ」
これもまた、大きく出たという言葉が向けられるのか?
皆の表情を確認すれば、艦長がまたおかしな事を言い始めたというのが半分。もう半分については読めない。
何せ、洒落や冗談で言っているわけでは無い事を、皆、分かってくれているからだ。なので、覚悟の受け取り方という話になる。そこは人それぞれの反応になるだろう。
「これも確認ですが、艦長としては今の発言の信憑性について、どれほどのものだと考えていますか?」
テグロアン副長などは、勝手知ったるとばかりに、ディンスレイ自身にディンスレイの話の評価をさせて来た。
恐らく、それが手っ取り早いと思ったのだ。艦長の扱い方に慣れている副長らしい発言だ。
「私としては……そうだな。八割方正解が見えて来たと言ったところだ」
「随分とした自信ですね」
「というより、私視点では整合性が取れ過ぎてる。だからそう言うしか無いし、残り二割は、単なる私の思い込みかもしれないという不安だな。だから皆に判断して欲しいわけだが……」
「では、続きをどうぞ」
話は聞いてやる。そんな様子だ。主従が入れ替わっていないか? この状態。
まあ、話を聞いてくれるだけ良しとしようか。
「まず、この地に真っ先に起こった事を思い出してみようじゃないか。それはつまり……我々がここで飛空船を落とした事だ。船は落下し、そうしてさらに破壊された事だろう。少なくとも我々は、進路を塞ぐ敵が、もうそれを出来ないまでにしたはずだ」
それはまさに、飛空船が空を飛べない程の状態だったはずだ。
そんな地に、不思議な動きをする黒い砂が存在している。これは偶然か? いや、そうでは無いだろう。これは次の事象だ。
飛空船が破壊され、落下した地点で、黒い砂が発生したのだ。そういう順序だ。
「あたし達が壊したエラヴの飛空船が、黒い砂を発生させたって、そういう事?」
「話が早いなミニセル操舵士。そういう事だ。これは多分……あの船の機能だ。まさに黒い砂は機械だという事だな」
正確には、エラヴの飛空船を構成する機械の一つだ。土地を覆い尽くし、そもそもが土地と表現出来る規模まで広がる程の量は積めないだろうから、黒い砂を生産する機能の様なものが元々あったのではないかと思う。
そうして、砂そのものもそれを助力出来るとしたら、随分と効率が良いものとなるはずだ。
エラヴの技術力であれば、それは可能に思える。
「そ、その点に関しても……で、出来るかどうかでは無く……どうしてそうしたか……という話になりませんかぁ……? あ、あの砂が極小の機械である事は、せ、船医としては確認済みですから、そ、そこに異論はありませんがぁ……」
「まさにそこだよ船医殿。というより、君もなんとなく、そうなんじゃあないかと思ってはいないか? これまでの話を聞いて、頭に過ってそうではあるな?」
でなければ、ここで彼女が発言したりしない。ディンスレイと同じ結論に達している。だからこそ、口を開いて来た様に思える。
「そ、そうですねぇ……こ、これは、そ、その……職域の話になってしまうと言いますかぁ……そ、そういう発想で偏ってるだけな気がしているというかぁ……そ、その、以前の印象も混じってしまってるかもなんてぇ……」
「言える事があるなら言ってちょうだいよ船医さん。っていうか、聞けない方が不安になってくるわよ?」
確かに。ミニセルの言う通り、隣でぼそぼそと考え事を続けられる方が、余程不安である。だいたい、確証のある事しか言えないのであれば、こんな場当たり的な旅を続けるディンスレイ達など、かなり無口な旅路となってしまうじゃあないか。
「で、では、こ、これも船医としての発言になるのですがぁ……き、傷ついた艦を修復するために……黒い砂を生産している……とか……どうです?」
「艦長としては同意見だ」
「マジですか艦長」
テリアン主任観測士としては信じがたい話だったか? だが、そんな話はこれまでだって幾らでもあっただろう。
何なら、この話には前例がある。
「小さな生物が大きな生物の身体を修復するという現象や治療方法を我々は既に確認している。それを機械的に、そうして修復する先も機械が行うというのは、むしろ有り得る話だろう? もし万が一、再現性のある技術として実現出来れば、我々の艦にだって実装したいくらいだ」
それが出来れば、整備班の手も大分楽になるのじゃあないか? ある種の設計図と指示するための機能があれば良いのだ。
後はその小さな機械が勝手に機械を生産し、壊れた場所を設計図通りに修復してくれる。
そうだ。墜落して飛行機能を喪失するくらいに破壊された飛空船であろうとも、小さな機械さえ残れば、またいずれは空を飛べるまでになれる。考えてみれば、理想的な装置と言えるだろう。
そこまでのものを現状、シルフェニアは作れないものの。
「あの、横から聞いていると突拍子も無い話に思えるのですが……探索班としても、何故か納得してしまいました。それは―――
「君らが見た黒い砂の塊。三角錐を複雑にした様なと報告してくれたな、カーリア船員。全体としては、こういう形の……似てやしないか?」
と、机の上に雑に置かれている紙とペンを持って来て、やはり雑な絵を描く。というより輪郭だ。
かつてを思い出しながら、ブラックテイル号が破壊した、空飛ぶ飛空船。空飛ぶ小部屋の輪郭を描いて、見せてみる。
「っ……この、周囲の盾みたいな装甲ですかね? その部分。酷く似てる気がします!」
「当たりだな。黒い砂は飛空船修復装置で、絶賛、それを修復中だ。ブラックテイルⅡが押されてるのも、砂全体がそっちへ向かっているからじゃないか? 周囲の土壌を資材にしつつ、飛空船本体へ向かうという動きに、ブラックテイルⅡが巻き込まれている形だ」
「あー……主任観測士。一旦、意見に賛成です。筋は通ってる。根っこが突拍子も無い前提なのも今まで通りですし?」
だからディンスレイと同じ八割程度の自信と言ったところか。どこまで行ってもこの二割は埋められない。だから不安気に、ただ意見に賛成するのだ。
次にその八割を得たいと考える船内幹部はと言えば……。
「けど待ってください? 艦の外で起こってる事象は一旦納得するとして、じゃあ、今、俺の部下の整備班員達が忙しくしてる方の理由はどうなんです? 砂側にとっては、うちの艦内に入り込んでる場合じゃないでしょう」
「理由は分かりやすいんじゃあないかね、整備班長。黒い砂は飛空船を修復するための資材を求めている。そうして我々は飛空艦だ」
「うちの艦を資源にするつもりだってんですか!?」
何でブラックテイルⅡの内部に侵入して来ているかと言うのなら、そういう事だろう。それ以外の意図が無いのだからそうなる。
「落ち着け、整備班長。エラヴの技術としては、ブラックテイルⅡであろうとも、装甲材やらは大した物にはならんだろう。そこらの土壌から回収できるのであれば、こちらは一旦分解しなければならない以上、面倒で無視するべきものでしか無いだろうさ」
皮肉な事実として、ブラックテイルⅡは黒い砂に分解されたりはしていない。船員の健康に害が無い以上、人体にだって興味が無い。ブラックテイルⅡはそのすべてをひっくるめて、修復作業の対象範囲外というわけだ。
ただし、一部を除いて。
「落ち着いて考えますけどね、それでも、砂の一部は艦内の機関室を目指してるんでしょう? ここまで聞けば分かりますが、つまりそれは―――
「ブラックテイルⅡの機関部。もっと言うのなら、あちらの飛空船とも共通する物……飛空船を浮かせるレベルの浮遊石を求めているというわけだ。ブラックテイルⅡのそれだって、地面の表層には無いレベルの純度だろう? 黒い砂にとっては貴重な資源だ」
だから、清掃作業を続けるのは正しい判断だったと言える。砂が機関室に入り込めば、心臓部を奪われる事になりかねなかった。
「今後、もっと注意して清掃作業をしなきゃなぁ……っていうか、ほんの少しでも機関室に入って来て無いかチェックも指示しとくか……ああけど、そもそも、じゃあ俺達がここに居る意味って、どうなんです?」
本人は分かっているのだろうか? ゴーツ整備班長の何気無い言葉で、話は一気に根幹のそれに移った。
そうだ。それこそが、この忙しい中で船内幹部会議を開いた理由なのだ。
「黒い砂の意図は知れた。そうして、我々が探し求めたエラヴの飛空船については、絶賛修復作業中だ。つまり……まだここには無い。おかしな表現になるが、そういう事になるだろう」
「ふむ? ならば、居る意味が無くなりませんか?」
艦長が言い難いを事言ってしまうのが副長の仕事。それを弁えているのか、それとも素の判断か。分かりやしないが、それでも副長が言った事を、船内幹部会議の面々も受け止める。
今回は無駄足であり、それを認め、徒労であったという自覚の元、この空域を去る。
そういう結論をこの船内幹部会議で出すべきだと、船内幹部の面々は気付いたのだ。
勘違いである。まだ終わらんぞ、諸君。
「意味はまだ、どうとも言えん」
「ま、まだ何か……あるんですかぁ……?」
若干疲れた様子の船医であるが、判断だけで疲れているなら、これからもっと疲れる事だろう。
「エラヴの船の修復機能が現状、この黒い砂だと言うのなら……あまりにも遅々としてはいないか?」
「ひ、比較対象が無いので、はっきりとは言えませんけどぉ……た、確かに、も、もっとこう……げ、劇的であっても良いと思いますねぇ……わ、わたし達が遭遇してから、も、もう何年も経っているはずですしぃ……」
アンスィ船医の言う通り、エラヴから受ける技術的高さに対して、かなりの広範囲に影響を与えている割には、飛空船そのものはまだ砂の塊でしか無いというのは、何やら遅い。そんな印象をディンスレイとて受けている。
「というか、あれよねぇ。ここまで時間が掛かるくらいの修復速度だと、もし中に船員とかが居た場合は、そっちが先に限界来ちゃうわよね。あれ、確か無人の飛空船だったから良いんだろうけど」
「それだミニセル操舵士」
「どれよ?」
「ここまで時間が掛かるという部分だ。確かに、何年も修復に時間が掛かるとなれば、黒い砂の技術がどれほど上等だろうと、掛かり過ぎは掛かり過ぎだ。これならば、救難を伝える何かしらの通信装置でも備えた方がまだマシだろう」
「まあ……誰も助けに来ないまま、何年も修復作業だけ大掛かりにするくらいなら、船員全員救助してから、ちゃんとした造船所で新造艦の一つでも作った方が、まだ早い気がするけども……」
「まさにその通りだと私も思う。だからな、今の黒い砂……修復機能としても不具合が生じているのではないか?」
ディンスレイの考えは、会議前の時点でそこに及んでいた。
本来、既に破壊箇所が修理されているはずの飛空船がそうなっていない理由があるのでは無いかと。
それが恐らく、黒い砂の挙動にも影響を与えている。そう考えるに至ったのだ。
「既に艦長は、その不具合に心当たりがありそうですね?」
「さっき言ったろう? 副長。黒い砂は、うちの心臓部である浮遊石を求めているとな。つまり……動力源だ。それを我々が奪ってしまったから、あれに無いんだよ。だから修復作業が遅々としているんだ」
「光石……」
整備班長の呟き。
その通りだったので、彼に対してディンスレイは頷いた。
墜落した飛空船に、本来あったもの。そうしてディンスレイ達が奪ってしまったのが、光石だ。
それを奪ってしまったから、あの飛空船を襲って来たし、撃墜する事にもなった。また、それが出来るというのは、飛空船を動かす余剰エネルギーが光石以外にもあったという事だろう。
その分を修復に回し……やや足りていない。それが黒い砂を生産している飛空船の状況というわけだ。
「あー! じゃあ、艦内へ入って来る黒い砂に二つの動きがあるって話……片方が機関室で、もう片方は……」
「君の部屋だ、整備班長。正確には、君に研究を頼んでおいた光石に向かってる」
今回の旅の始まりで手にした光石は、現状、船内幹部であるゴーツ整備班長の個室に、研究スペースを作って解析を続けている。
黒い砂はそれも狙っているのだ。
あの、機能を失っている様にも見える光石を。
「私の議題はな、そこにあるんだ。ここには墜落させた飛空船の調査に来た以上、修復して貰わないと困る。だが、まさかブラックテイルⅡの動力をやるわけにも行かんだろう? そうして、おかしな運命の元にあるかはしれんが……今のところ、我々には役立たずに見える光石があって、それを黒い砂は求めている」
「まだ、整備班長としてはどこまで調べられたか知れませんが、光石、完全に力を失っているわけでは無いとは言えます。というより、蓋がされている? 上手く力を周囲に伝導出来ていない。そういう状態ですね。あくまで印象の話ですよ? 確定的には言えない状況で……それは、今の状況と変わらない……か」
ああ、そうだとも。何時だってディンスレイ達は八割だ。残り二割を得る事が出来ず、それでも賭けに出ている。
今回もそうだ。だからこそ、船内幹部会議を開いた。だからこそ、船内幹部達に尋ねる。
「あの光石な、いっそ渡してしまっても良いんじゃないかと思ってる。黒い砂の動力源としてだ。そうする事で、修復作業が一気に進むかもしれないし、もし、その作業の中で、光石が有効的に使ってみせてくれるのなら……」
それは、ディンスレイ達が得たい情報の一つにもなるのではないか? ハルエラヴを知るという旅において、その技術の形を知る事が出来る。その可能性がある。
その可能性に賭けてはみないか?
ディンスレイはこれから、それを船内幹部会議に掛けるのだ。
その賭けに乗るかどうかを決める事こそ、船内幹部会議の機能と言えるのだから。




