シナリオ
「「ピーンポーン
ガチャ
「ヒロキー!居るかー!」
「何だよユウト。急に家に押しかけて。」
「俺さ、大変なことに気づいちまったんだよ!」
「何だよそれ。」
「お前ってさ、小説好きだったよな。」
「そうだけど。」
「なんの本が好きかって分かるか?」
「当たり前だよ。《SF》と《ミステリー》だ。」
「そうじゃなくてさ、例えばタイトルがなんだ~とか、そういうの。」
「えーと、あー、何だっけな。こう、喉までは出かかってるんだが。というかそんなことはどうでもいいだろ。結局何でユウトは家に来たんだ。」
「そう、それなんだよ。何で好きなものなのに思い出せないんだ?」
「それはあれだろ。ほら、必要ないからだろ。別に好きだってことさえあれば掘り下げるもんでもないし。」
「じゃあさ、お前母親はいるよな。」
「そりゃいるだろ。じゃなきゃ俺は生まれてないさ。」
「じゃあお前の母親の特徴を挙げてみろよ。」
「ハァ!? さっきからいちいち訳分かんねぇんだよ。それ挙げて何になるんだ?」
「だからそれだよ。俺たち必要が無いことを覚えてないんだ!」
「別に、覚えてなくても良いだろ?話に支障はないんだし。」
「それだよ、覚えてなくても話に問題がないんだ。それっておかしくないか?」
「どこがだ?」
「だっておかしくないか?朝一緒にいたやつのことを覚えてないわけないのにさ。お前本当は母親の顔覚えてないだろ。」
「確かに急に言われても言えないけどさ、人間の顔はだいたい同じようなもんだろ?」
「お前さ、俺の顔の特徴言ってみ?」
「どうって、人間だな。そもそも会話文だけの俺らに顔の特徴なんて…?」
「気づいたか?俺たち会話文しかなくないか?」
「でもその前にお前はインターホンを鳴らして勝手にドアを開けて…」
「その前は?」
「…」
「なあ、分かっただろ?ここはお前の家じゃねぇ。何か文の中なんじゃないか?」」
「なるほど、創作物の中にいると気づく話だね?坂本君。」
「はい、先輩。」
「文章や流れはとても幼稚だが、目の付け所は良い。この案を元に一緒に構成を練り直そうか。」
「いいんですか!?」
「君が入ってくれたおかげでこの文芸部は廃部にされなかったからね。少しは手伝ってあげよう。」
「ありがとうございます!」
「それと、少し休憩だ。君に会いたいという人たちがいてね。」
「どなたです?」
「どうやら彼らは創作物だと気づくというシナリオだということには気づけさせてくれないことが不満らしくてね。まあ、ちょっと話してみるといい。」
ピーンポーン
ガチャ」