第六話 ダンジョン
・??? 第一層通路・
俺は宛もなく洞窟を一直線に歩く。
勘でこっち方向に歩いて来たけど、大丈夫だよな?
それにしても不思議な洞窟だな。
どこにも光源はないはずなのに明るい。
陽の光があるわけでもない。
こういうのってダンジョンってやつなんじゃないか?
この世界にもあるのかな?
…だとしたらモンスターとかが出てくるのか?
生まれたばかりだし、そんなのと戦闘する前に一旦外に出た方がいいだろう。
案外早かったと思う。
少し歩いていたら上へと続く階段を見つけた。
少し警戒しながら登っていくと、段々と温かい光を感じ始めた。
もう地上か?
上から何やら生き物の鳴き声のようなものが聞こえてきた。
ウッ 急な陽の光で目が痛い。
洞窟野中は暗いってほどじゃなかったのに…。
ようやく視界が慣れていくと、俺は森の中に居た。
「…森だな」
俺が見えるのは木、木、木。それもとんでもなく大きい、樹木だった。樹齢どのくらいだろうか。
俺は少しの間呆気にとられていた後、視界の右側に顔を向けた。
洞窟からの出口には、石版が設置されていた。
移動型ダンジョン トス=ジラントス
攻略レベル: 銅-神心石
タイプ:全
やっぱりここはダンジョンだったのか。
何だこれ?
移動型ダンジョン?
歩くのか?
攻略レベル?
タイプ?
意味不明だな。
とりあえずどうするかなぁ。
人里探して森の中を彷徨うべきか?
それとも…
「ダンジョン…か。挑んでみたいな」
やっぱりダンジョンには挑戦したいよな。
強くもなりたいし。
異世界で生き残るためには力が必要なのさ。
才能はないがな!
さっき「生まれたばかりだし…」とか言ったな。
あれは嘘だ。
武器とかはないけど…まぁやばそうだったら戦わずに逃げれば大丈夫だろう。
…フラグじゃないぞ。
「しゅっぱーつ」
俺は再びダンジョンの中へと降りていった。
―――
・トス=ジラントス 第一層通路・
階段を降りきり、いざ攻略へと足を踏み出すと、アシスト機能から報告が来た。
【報告】
トス=ジラントスのダンジョンマップを獲得。転移可能です
俺はアシスト機能の言うままにパネルを操作する。
「おお!ダンジョンマップだ!しかも3D!」
ダンジョン内を攻略していくことでマップが更新されていくシステムっぽいな。
ついでに、ダンジョン内ならば攻略した階層に転移が可能みたいだ。
現在俺のマップは入り口から、転生後に居た通路までしかマッピングされていない。
転移可能な場所はダンジョンの入り口のみだ。
通路には転移できないのかな?
全く、こういった機能も使い方説明してくれないとわからないぞ。
「便利だな。もしダンジョン内で危なかったときは、緊急脱出ができるな」
ダンジョンに入った瞬間マップをゲットしたってことは、ダンジョンに入ることがマップ獲得のトリガーになっているってことだよな。
おそらくここに転生した時はいきなりダンジョン内に出現したから獲得できなかったのだろう。
ダンジョンマップを一通り眺めた後、俺は再びあるき出した。
「なになに…ダンジョンマップには出現するモンスターなんかも記録されるのか」
とそんなときだった。俺はいつの間にか通路を抜けて、広い空間にたどり着いていた。
「普通ならこういう場所でモンスターが出現するんだが…ん?」
俺がそうつぶやくと、俺の近くの空間に光が集まり始めた。すぐにそれは小学生の男の子ほどの大きさ、形に変わってゆき…
「ギャァァァァァァァァァアア」
「!?」
ゴブリンになった。
「やばいやばいやばい! 本物のゴブリンだぁ!」
……本物に会えて喜んでいるんじゃないぞ。
「こういうのは焦っちゃだめなんだ。落ち着け、自分」
俺はとりあえず後ろに下がって距離をとる。
まずは様子見だ。
相手はザ・ゴブリンって感じの緑色のモンスター。
動きは…以外とゆっくり。
俺の方を見て騒いでいる。
こちらに突進をしてくるが、俺は左右に避けて距離を保ち続ける。
スポーツはしていなかったけど、毎日筋トレぐらいはしていたおかげか、なんとか対処できている。
心なしか転生前よりも身体が軽い感じがする。
「とりあえず後ろに回ってパンチしてみるか…さっき壁を殴って俺が特別強いわけでは無いって事になったけど。」
またこちらに突進してきたので、横に飛んで避け、後ろに回る。
「ギェェ!?」
「はぁ!」
俺は後ろからできる限りの力でゴブリンのようなモンスターの背中を殴る。
ドシュッ
「へ?」
俺の右手に胴体を貫かれたゴブリンは、光の泡となって消えていく。
【報告】
Lv1→Lv6
レベルアップに伴い各能力値が上昇しました。
スキル ウォーターボールを獲得
スキル リーフカットを獲得
「あ、あれ?」
ワンパンだと?