第二話 祝福神
・英雄世界ラス 神界浅層・
「それでそれで…俺はクール系主人公がいいな。いやぁ俺クールな感じの主人公に憧れてるんだよな。あとは…」
「…やあ」
目を開くと、天井が消えて、俺は白くて明るい場所に居た。
体を起こすと、目の前には金髪が立っていた。
いやほんと。
どれだけ目を凝らしても、相手が人形で金髪で、なんだかオーラ? のようなものが感じられることぐらいしかわからないのだ。
背が高いのか低いのか、どんな顔をしているのか、性別もわからない。
が、なんだか微笑んでいるのはわかる。
俺が気づいたら変な場所に居て、さっきまでしていたことから察するにこいつは…
「お前、神だな? 俺を召喚? したのはお前だろ。んでここは神界? 的な場所だろ」
「ふふ。さすがだね。その通り。僕はミースリア。昇格神ミースリアだ。ここは神界と言われる場所だね。と言ってもかなり浅い場所だけどね」
金髪は驚きと興味を含んだような声でそう言う。声からして男か?
それにしても当たっていたか。
…これって異世界転移だよな。
すごいな。
さっきまでやっていたのは冗談のつもりだったんだが。
やっぱり異世界転移してくれるのは神様か。
どこかの国の国王ってこともあるからな。
かしこまった感じで話したほうがいいのか?
まぁ本人は気にしてなさそうだしいいか。
「それで…色々説明してくれるのかな? 俺がここにいる理由とか」
「全然動揺してないんだね。うん。それじゃ説明しよう。君は異世界で…といっても君にとってはここが異世界かな?転生することへの願望の強さから、転生希望リストに入れられ、そして見事抽選を勝ち抜き、ここにいるんだよ。おめでとう。この世に無数とある世界の中で選ばれるのは相当なんだよ。確かちょっと前に君と同じ世界から選ばれたものがいた気がするけど、君の世界の住民は選ばれやすかったりするのかな? まあいい。選ばれた君には僕、昇格神ミースリアから神の祝福を受けて、ここ英雄世界ラスで暮らしてもらうよ」
いきなり情報が多いな。
転移かと思ったら転生か。
俺ってそんな転生願望高かったっけ?
せいぜい憧れていた程度なんだがな。
俺の世界の転生者もいるのか。
なんだか大事な誰かのことを忘れている気がするが。
ここに来てから記憶が曖昧なんだよな。
えっと…英雄世界ラス、か。
英雄? がいる世界ってことか?
それにしても、昇格神ってなんだ。
祝福は能力とか授かるやつだろ。
昇格神ってことは種族? 魂のレベル? 的ななにかを昇格させる感じの祝福をくださるのかな?
「色々混乱しているかもしれないけど、今は僕からどんな祝福を受けるかを考えていればいいよ。君が考えている通り僕は君の種族を昇格されることができるよ。君は人族。そうすると精霊族、悪魔族なんかになれるかな?あとこれはお勧めしないけど、神なんかにもなれちゃう」
こいつは俺の頭の中とかが見えるのか。
神にもなれるのか。
「質問がある。俺の他にも転生者がいるみたいだけど、転生の際に付けられる神はお前固定なのか?」
「いい質問だね。選ばれる祝福神はランダムだよ。英雄世界にいる神全員…まぁ例外はあるけど、ランダムに一人選ばれて転生者に祝福を授けるんだよ。ちなみに今生きている転生者の祝福神は…僕が見える範囲だけど、運命神、再生神、戦神、創造神、魔手神なんかがいるみたいだよ。まぁ今言ったのは上位神たちだけだけどね」
むむ? 創造神だと!?
それって俺の知っているラノベだと世界を想像した、かなり偉い感じの神様じゃないか。
他の神たちも興味深いやつばっかだな。
魔手神ってなんだ?
俺の中二心が疼くのだが…ちょっと気になる。
「まっこの僕が当たったからには安心してよ。自分で言うのもなんだけど僕の祝福はかなり強いと思うよ?」
なるほど。
強い種族は神にも勝る的な話はよくあるもんな。
まぁなりたい種族はもう決まっているけどな。
「じゃあ俺を神にしてくれ。」
「まぁ、心を読めるから知ってたけどさ。本気? 神になってもろくなことないよ? 君が思うほど神自体は強くないし」
さっきもおすすめしないとか言ってたな。でも神って最上位種族だよな?どういうことなんだ?
「いやね、僕みたいな司りの神になると話は違ってくるよ? 自分が司るものでなら誰にも負けないわけだし。でも、あいにく司りの神たちの席は満席。いま君がなれる神は神の実体である司る概念がない、さまよい神だけなんだ」
ミースリアが司るのは昇格、進化とかの概念ってことだよな。
さまよい神とは?
「うん。今いる神の大半はそれだよ。司っているものがない。神の体である概念がないから、いわゆる魂だけの存在になるのさ。世界に一時的に具現化して地上の身体に適合しようとする神もいないわけじゃないけど、身体を探そうとするような意思を持っているのなんて数えるほどしかいないし、具現化せずに神界をさまよい続けるのがほとんどなんだよ。そうなったら自分でなにかをする力なんて内に等しいしね。しかも仮に意思があっても、身体を探すために具現化し続けて時間が経ってしまえば、消えてしまうんだよ? 猶予は…2日ぐらい?」
なるほど。
具現化して身体を見つけないとだめなのか。
まぁとにかく、俺は神がいい。
だって神になるってかっこいいし、うまく身体を見つければそれなりに強くなるんだろ?
それとも他の種族のほうが強くなれるのか?
俺はチート転生したいんだ。
「うぅん。…精霊は自分の聖域ではほぼ無敵だし、悪魔も相手が強ければ強いほど自分も強くなれるけど…その中だと身体を手に入れた降臨神のほうが強いね。しょうがない。せっかく祝福神に選ばれたのに主が自殺願望だとはなぁ。ねぇ、本当に神になるの? 精霊や悪魔の方が安定して強さを手に入れられると思うよ?」
リスクはあるかもしれない。
でもこれで終わるなら俺は異世界転生を甘く見てたってことで自業自得と思える。
せっかく転生できるんだ。
どうせならチート転生したいんだ!
だから…
神でお願いします。
「はぁ。はい。」
イケメン神が手をかざすと俺の身体がどんどん光に変わっていく。
「祝福神は祝福あげる以外はあまり転生者に干渉しちゃだめだから、これでさよならだね。あわよくばあなたに希望の未来があらんことを。あ! さまよい神になれば自然に具現化の方法はわかるはずだからー」
どんどんミースリアの声がかすれてく。世界のこととかもうちょっと聞いておけば良かったな。
って、今気づいてももう遅いか。
…
がんばろ