第一話 転移
・終焉世界・
彼の者は魔の深淵を覗き、
刀を振るった。
彼の者は終焉の如き力を持ち、
慈悲の心に満ちていた。
彼の者は不滅の身体を持ち、
誰よりも傷を負った。
彼の者はすべてを愛し、
神にさえも愛されることはなかった。
彼は長い時を生き、
また生きてはいなかった。
彼が再び目覚めるときは、あわよくば―――ことを願う。
・修復世界・
「ねえねえ、ななっち最近有名な異世界転生のラノベがあるんだけど知ってる?」
「ん? 『奴隷として生まれたけど異世界で努力して世界征服してみた』のこと? なんか最近人気だよな。成り上がり系ラノベ」
「だよねだよねー。いやぁやっぱりチート能力がなくても努力して成功するみたいな? かっこいいよねー」
俺の名前は中山七斗、高校一年生、オタク。
それでこちらで目を輝かせながら俺と話してるの女の子は同じクラスのオタク友達、森中目羽。
まだ新学期始まってから数カ月なのに、初日からお互いラノベ好きとして意気投合してからずうっとラノベの話ばかり。
俺自身、かなりそのへんの知識には自信があったのだけど、彼女と話ししてると俺もまだまだだったんだなって痛感する。
「そうかぁ? 俺は最初からチートスキルみたいなの使って無双する系のほうが好きだけどなぁ」
「そっかぁ。じゃあ二人で転生、転移したときには私達敵同士かもねぇ」
「はぁ? 目羽と二人で転生するってどんな展開だよ。身内と転生するとしてもクラス全員一緒に転生でとかだろ…ってか敵同士ってなんでそうなるんだよ?」
さり気なく下の名前読んでいくスタイル。
「だって成り上がり系の主人公ってチート持ってるキャラクターのこと倒すー……みたいな展開がお決まりじゃん」
「あー。確かにボスと言うかそんな感じの強敵が出てくるのはあるかもだけど…俺は目羽とは戦いたくないなぁ」
ふっふっふ。反応してくれないからって諦めたかと思ったかい?
俺は可愛い女の子にはアタックしまくるのさ。
「そうだね! わたしも七斗くんとは戦いたくない!」
な…リフレクトだと!? …っと危ない。
ここでフリーズしてしまえば俺が彼女いない歴=バースデイケーキのろうそくの数だってバレてしまう。
ここは鈍感を演じるのだ七斗。
「そそそそそそそうだな。と、とりあえず、今日のところは、また明日。」
動揺などしていない。
学校終わってから帰り道ずっと話してたけど、もう目羽の家の前なのでそう告げる。
「? そうだね! またね!」
正直、目羽はかなりの美少女である。
背はクラスの平均程、おかっぱで明るくてどんな人とでも仲良くできてしまう、学校でもカースト上位なオタク。
正直なんでオタク友達ってだけで俺なんかといつも話してくれるんだって思う。
…ハッまさか俺のこと好きなのか!?
…いや、ないな。
自分で言うのもなんだが、俺はフツメンだと思う。
クラスの男子達と比べても、平均ぐらいだろう。
だけど、俺は今まで彼女なんていたことないし、クラスワークなどで喋っても向こうは適当に返事して終わる。
泣ける。
…まともに女の子とも喋ったことがない俺に優しく話しかけて来れば、そりゃどんなやつだって意識はしちゃうだろ?
あれ?男子ともあんまり喋ったことなくね?
友達もいないな。
先輩や、先生でさえ、何故か俺を避けているように感じる。
いつも清潔には気を付けているし、何か嫌われるようなことをした覚えは無いんだがなぁ。
そいや親にも同じような目をされる。
なんで?
…そんな中、目羽だけは俺の友達になってくれた。
というか最初に話しかけてきたのはあっちからなんだがな。
初めて同年代の人から話しかけられたから、最初はおどろいたっけな。
初めての友達である目羽はなによりも大切にしたいんだ。
目羽と別れてから俺も家に戻る。
俺は一人っ子だし親もこの時間はいないから、勝手にあるもの食って風呂入って宿題してラノベ読んで…ま普通だな。
読んでる小説もいいところで区切って、俺はベットに大の字で寝っ転がる。
「それにしても異世界で無双できたら…楽しそうだな。」
そういや転生や転移系の話は主人公が ―――になりたい。だとか ―――な世界がいい。みたいな感じで目をつぶってると気づいたら異世界に居てお話が始まるよな。
俺は目を閉じる。
「えーと。ゴホンッ 異世界で、チート能力持ちで転生か転移しないかなー。上位種族で、どんどんレベル上げて強くなりたいなー。ハーレムはー…ヒロインは一人でいいや。それでそれで――。」
こうして俺は転移した。
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