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命の恩人

 

「う……うーん……」


 俺はふと目が覚める。

 しかし、様子が違うことに気づく。俺が寝転がっているのは雑草の生い茂る字面ではなく、この世界で1番と言っていいほどのフカフカのベッドだった。そこはグレイズの大森林の風景ではなく、何処かの家の一室のようだった。


 随分豪華な家のようで、壁一面に高級鉱石である『ミラメル』を使った装飾が施されている。

 さて、一体ここは何処なのか。その疑問を持ったと同時に、俺の正面に設置されている扉が静かに開く。


 入って来たのは1人の少女だった。年齢は俺と同じ14歳頃だろうか。栗色の長髪と大きい眼が非常にマッチしており、清楚感が漂っており非常に美しい。ただ、小さな体に見合わない大きな胸を露出させている服のせいで、少し目のやり場に困る。


「あ、目が覚めたのね! 心配したわ。あなた、森の中で気を失って倒れていたのよ!」


「君が助けてくれたのか? ありがとう。ここはどこだ?」


「私はサラ=ネイクロン、ここは都市ベイネルよ」


 都市ベイネル、俺が目指していた街の名前だ。しかし、森で俺が倒れた場所は街から3キロメートル程ある。女性1人が男を1人抱えて、魔物だらけの森を抜けられるとは思えないが……

 そんな俺の考えを察知したのか、サラはフッと笑うと右手の人差し指と中指を立て、顔に近づけた。


「スキル【隠蔽透化】発動!」


 サラがそう発すると、彼女の手足の色が段々と薄れていき、やがては彼女の全身が透明になり、見えなくなってしまった。


「これは……すごいな!」


 俺の感激の声を聞くと、体を元に戻す。


「このスキルは体を透明にできるの。勿論、【魔力感知魔法】を使っても分からないようになっていて、隠れたり逃げたりするのにぴったりなスキルなの!」


「【魔力感知魔法】は知っているのか?」


「当たり前よ、基礎中の基礎でしょ?」


500年が経ち、魔法は衰退したと思っていたが、案外そうでは無いのかもしれない。


 それにしても、こんなスキルは見たことがない。視覚で認識されない上に【魔力感知魔法】でも感知出来ないのはとても有能で、奇襲やスパイにとても適している。


 しかし、一体こんな珍しいスキルをどこで手に入れたのだろうか。

 スキルを手に入れるには3つの方法がある。

 1つ目は条件を成し遂げること。特定の物を所持したり、特定の魔物を倒せばスキルを獲得出来る可能性がある。


 2つ目は奇石を使うこと。奇石とはスキルを取り込んでいる石のことで、その奇石を割ることで、スキルを獲得出来る。だが、この方法では簡単なスキルしか獲得出来ない。


 3つ目は血の効果である。この世界には人間や妖精などの種族があるのだが、その種族の中で稀に固有のスキルを継承していく種族があるのだ。


 サラの場合、1番に可能性が高いのは種族の関係である。何故なら、サラが人間ではないのは確かなのだから。


「サラ、君の種族は何なんだ?」


 サラは少しの間頭を抱えると、何かを決心したようで深呼吸する。


「フー……はあっ!」


 サラが声を上げると、それと同時にサラの頭から獣の耳が、腰部からはとても長い尻尾が生えてきた。サラはその姿が恥ずかしいようで、顔を赤らめる。


「私は【猫人(キャットシー)族】なの。この姿が恥ずかしくて、いつもはスキルで隠しているのだけど……あなたにはお見通しのようね」


「何も恥じる必要は無いと思うぞ。その状態でも十分可愛い」


 俺がそう励ましてやると、サラは何故かより一層顔を赤くしてしまった。


──しかし、【猫人(キャットシー)族】であっても【隠蔽透化】なんてスキルは十分珍しいと思うが……。


 サラはようやく顔を通常の色に戻すと、何かを思いついたようなジェスチャーをして口を開く。


「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったわ! あなたの名前は?」


「俺の名はアラン=ファルオード、14歳だ。少しの間だが、よろしく」


 俺は握手をし終えると、取り敢えず街へ向かおうと立ち上がろうとするが──体が重い。

 きっとまだ魔力が回復しきれていないのだろう。立つことは諦め、もう一度ベッドに寝転がった。と、そこで俺は名案を思いついた。


 ──魔力を手っ取り早く回復する手段があるじゃないか!


 そうと分かれば俺はサラに食料を要求する。すると、サラは気味の悪いニヤケ顔を作り、「覚悟は良いのね?」と言うと、部屋を出ていってしまった。


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