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強敵

 

「うおぉっ!」


 俺は巨大グレイズへ近づき、斬撃を浴びせる。が、皮膚が硬すぎて刃が通らない。

 巨大グレイズは雄叫びを上げながら拳を振るう。あまりの速さに避けられないと判断した俺は即座に受け身を取るが、強烈な拳によって殴り飛ばされ、長い間空中を飛行した末に、大木に大きく背中をぶつけた。


「ガハッ……」


 その衝撃で思わず血を吐き出す。受け身を取ってこれなら、まともにあの拳を受ければ即死だろう。

 それにしても、皮膚が硬い。ただ剣を振るだけでは何千回同じことをしても傷1つ付けられないだろう。


 俺はその場に立ち上がり、素早く足を動かす。上空から落ちてくる拳を避け、巨大グレイズの足に近づく。


「我流・(サン)の技・斜雨混沌(シャウコントン)


 これは滑らかに相手の部位を切り落とす技。気配を消して斬ることにより、この技を受けた者は自らの目で確認するまで、斬られたと感じることはない。


 ──足を落とせばもう身動きは取れない。後は首を切り落とせば……勝てる!


 俺が狙い通りに巨大グレイズの足を落としたその時、その切断部分から緑の液体が溢れ出し、そのヌメヌメとした液体が切り落とされた足の切断部分と繋がる。切り落とされた足は緑の液体に引っ張られ、巨大グレイズの切断部分へと近づき、そしてくっついてしまった。


「なっ!? あれは……スキル【接合回復】!?」


【接合回復】とは、切り落とされた部位を一定時間内に切断部分に近づけることによって、瞬時に接着し、回復するスキルだ。

 第一、魔物がスキルを持っていることは珍しくない。毒を体に含む魔物なら【毒耐性】、炎を吐く魔物なら【火炎耐性】などを持っている場合が多い。


 しかし、【接合回復】はスキルの中でも珍しく、強力なスキルだ。それをただでさえ強力な魔物が持っているとしたら、この魔物をランク分けするのなら……Aランクは下らないだろう。


「ウルブゥオエッ!」


 どうやら1度でもこの皮膚を斬られたことに怒っているようだ。こうなれば持久戦は辛い。1発で勝負を決める。

 俺は姿勢を低くし、力を溜める。


 ──出来れば巨大グレイズには動かないで欲しいのだが……


 そんな願いは届かず、巨大グレイズは俺に向かって拳を落として来る。


 ──今だ!


 俺は足に【跳躍力上昇】の魔法をかける。勢い良く跳んだ俺は、拳を避けて巨大グレイズの頭と並ぶ。

 俺は更に【威力強化】【斬撃強化】【衝撃強化】の3つを剣に乗せる。


「これで終わりだ! 我流・(ロク)の技・絶鬼(ゼッキ)


「ウグオオォッ!」


 俺の剣は巨大グレイズの首を難なく通過し、派手な血飛沫を浴びた。飛ばされた巨大グレイズの首は繋がることはなく、俺は落ちていく中で安堵の息を漏らす。


 地面との距離が5メートルを切った時、俺は体を捻って頭と足を入れ替え、見事に着地する。巨大グレイズの首の取れた体は、その場で動かなくなっていた。


「ふぅ……結構強敵だったぜ、お前」


 巨大グレイズの死骸に背を向け、血塗れの剣を収めるが──何だか体がフワフワする。視界が段々と白い霧に包まれていき、やがて何も見えなくなってしまった。


 ──やばい、魔力切れだ。


 先程の戦闘で魔法を使い過ぎた。そのお陰で魔力が無くなり、体の全機能の能力が著しく低下しているのだ。俺は力尽きたようにその場に倒れてしまう。


 ──ダメだ、ここで倒れちゃ、他の魔物の餌にされて終わりだ……


 そんな意志とは反して体は次第に動かなくなり……遂に俺は意識を手放してしまった。



 その間、俺は少し夢を見ていた。


『我らがご主人様である勇者・アラン様』


 目の前には7人の者達が俺に跪いている。


『アラン様の転生の衝撃で、このままでは我々は消滅してしまいます。その為、我々は1度世界中の何処かに姿を隠します。我々とアラン様は長い間お会いすることが出来なくなるでしょう。しかし、これだけは忘れないで下さい。我々はいつでも、アラン様を待っております』


 そう告げると、7人の者達は瞬く間に剣の姿に変化すると、光の粒になって消えてしまった。


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