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VSグレイズ

 

 俺とグレイズ達は睨み合う。先に動いたのは相手の方だった。


「うがァっ!」


 1体のグレイズが俺に突進して来る。他の4体は警戒しているようで動かない。彼等は脳は少ないが、決して馬鹿ではない。先程のように避け、攻撃的でない態度を見せると、俺への警戒を弱め、積極的に攻撃される可能性がある。

 この体で一気に5体を相手にするのは少し分が悪い。


 俺は今度こそ剣を構えると、グレイズに真っ向から勝負する。

 グレイズの強さの正体は長い爪だ。あの爪はとんでもない斬れ味で、少しでも触れれば俺の皮膚など簡単に切り避けてしまうだろう。


 グレイズは当然のように、爪をこちらに向けて進んで来る。


 ──取り敢えずあの爪を封じなくちゃな。


 グレイズの近くへ移動し、長い爪を短く切断する。


「うがっ!?」


 驚いて混乱したのか、はたまた爪を切断されたのが頭に来たのか、大きく距離を取った俺の元へ先程の倍以上の速度で突進して来る。


 俺はその時、グレイズへの対抗策を見つける。

 俺が勇者の頃は腕の立つ者が多かった。特に剣術に関しては、殆どの人間がエイン程の実力を持っていた。それは勿論、俺も例外ではない。

 あの時代は勇者というだけで生き抜ける程優しい世界では無かった。日々剣を振り、立ち回りを考え、その状況に適した"技"を作った。


 相手は中型、体を断ち切るにはかなりの力が必要、今は混乱状態、多少の隙があってもそこを突かれる可能性は低い……ならば、全身を使って力を溜め、強力な一撃を放つ大技!


「我流・(ロク)の技・絶鬼(ゼッキ)


 俺は低い姿勢で力を溜める。それを見たグレイズは此処ぞとばかりに飛び込んで来る。


 ──そうだ、もっと近づけ!


 目の前にグレイズが現れたその瞬間、俺は斜め上の方向に剣を振り上げる。剣の威力は凄まじく、滑るようにグレイズの体を真っ二つに両断した。


 それを見た4体のグレイズの内、2体はこちらに向かって来る。仲間を殺されて激怒しているのだろうか。

 生物は感情に囚われるほど、単純な行動になる。今なら技を使わなくても十分倒すことが出来る。


 2体のグレイズにかなりの斬撃を加え、ようやく機能を停止させた。俺は一息つくと、ずっと傍観している2体のグレイズに視線を向ける。


「さぁ、残りはお前達だけだぞ」


 グレイズ達は少しの間お互いに分からない言語で会話をする。

 これは不味い、2体で連携を取られるのが1番脅威だ。その前に攻撃を──


「「うぉぉぉぉぉぉーーー!」」


「な、何だ!?」


 突然、グレイズ達が空に向かって吠え始める。その声量はとても大きく、俺は堪らず手で耳を塞ぐ。

 こんな奇妙な行動は本にも書いておらず、父も言っていなかった。グレイズ達は吠え続ける。すると、グレイズ達の遥か後方から木々の折れる音がする。


 俺は即座に【魔力感知魔法】を使用、そして絶望に浸る。魔力の大きさに呼応するその反応は、遠吠えしているグレイズの何倍もの大きさで、俺との実力差は明らかだった。


 その魔物は段々とこちらに近づいてくる。

 やがて、周りの大木達をなぎ倒して現れたのは、その大木と引けを取らない大きさであり、全身が黒く硬い皮膚で覆われたグレイズだった。きっとこいつがこの森の主なのだろう。


 2体のグレイズはいつの間にか吠えるのを止めている。彼等はこの巨大グレイズを呼んでいたようだ。

 まさか3体で俺を相手にする気なのか、と考えたのも束の間──


 ブチュッ!


「ウグロガゥアーッ!」


 巨大グレイズが2体のグレイズを強引に掴み、そのまま食らいついたのだ。グレイズ達は食われることを知っていて、巨大グレイズを呼んだのだろうか。もしそうなのなら、俺は彼らに敬意を示し、正々堂々闘わなくてはならない。


 俺は目の前の巨大グレイズと睨み合う。普通なら勝算は無い。だが、それだけで簡単に人生を投げ捨てられるほど腐ってはいないつもりだ。


「さぁ、来い。化け物野郎!」


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