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魔物襲来

 

「ふぅ……」


 両親と別れてから1日が経過し、俺は朝ご飯を食べると黙々と街へ向かっていた。

 街は常人が家から2〜3日歩くと見えてくる【グレイズの大森林】を抜け、ほんの数分歩けば到着する。本気を出せば俺なら数時間で街に着くことも出来るのだが、今日はゆっくりと歩いて、豊かな緑を眺めていたい気分なのだ。


 さて、と。

【グレイズの大森林】に着く間に、この世界のことをまとめておこう。

 俺が2年の歳月を費やして書斎の本を網羅し、やっとのことで手に入れた重要な知識は3つ。


 まず1つ目は『魔物』のことだ。魔物とは、人間や動物とは全く違う部類であり、人間と敵対する者のことである。この魔物は勿論、俺が勇者の頃にも存在しており、魔王もその1種なのだが、今は人間が魔物をE〜Sランクで強さ別にランク分けしているようだ。


 Eランクなら一般人が1人で太刀打ち出来る強さだが、Sランクはしっかりと訓練を受けた戦士が何百人集まっても倒せるか分からないらしい。


 2つ目は『食料』についてだ。この時代でも何を食べても魔力が回復する訳ではなく、それは食料によって異なるらしい。そしてこれもランク分けされているのだが、魔物のランクの基準である強さが希少さというだけなので、説明は省く。


 そして3つ目は『魔剣』のことである。伝承に関する本を読んでいた時、魔剣という言葉が沢山出てきた。俺が勇者だった頃でも7つの魔剣は特殊な能力を持ち、世界の均衡を支えてきた、という噂はよく広まっていて、そのまま伝承の本に掲載されていた。


 その他にも、勇者が魔王を倒し、魔剣を授かったこと、ある日、その魔剣が上空から降ってきたこと、今は2つの魔剣が厳重に保護されているが、それ以外の魔剣は所在の分からないこと等が書かれていた。


 ──偉大なる戦友から授かった最初で最後の大切なプレゼントだ。保護されているのは兎も角、所在の分からない物は最低限見つけないとな。


 という訳で、俺の旅の最大の目的は【魔剣探し】だ。と、考え事をしている内にもう森に着いたようだ。

 全長15メートル前後の大木が何本も重なって生えており、その大木の葉のせいで日光を殆ど通さず、中は薄暗く、鬱蒼としている。まさに無法地帯のような場所だ。


「よし、行くか」


 俺は森の中に足を踏み入れた。


 〜50分後〜


「ハァ……ハァ……」


 俺は森の中で息を切らしていた。別に疲れた訳でも、スタミナが切れた訳でも無い。ただ……



 ──めっちゃ暑っつ!!


 この森の密集さを見た時点で、ある程度予想はしていたのだが、まさかこんなに熱が篭っているとは……正に地獄っ!


 魔力が沢山あれば【冷却魔法】で体を冷やすのだが、何時どこで魔物が出てくるか分からないので、なるべく温存しておきたい。

 父から渡された鉄の剣を腰に提げてはいるものの、エインとの模擬戦で体格の重要さを痛感したのだ。不用意に魔力を使うのはなるべく控えたい。


 しかし、この暑さは異常だ。このままでは命に関わる。やはり魔法を使うか。

 俺は魔力の消費は覚悟して【冷却魔法】を使用する。それと同時に、俺の全身を涼しい空気が包み込む。


「ふぁー、極楽極楽♪」


 ──ん?


 俺は異常な気配に勘づき、即座に【魔力感知魔法】を発動する。【魔力感知魔法】は半径1キロメートルの範囲に存在する魔力の流れるモノ、つまり人間や魔物を感知することが出来る。これも魔力が沢山あれば常時発動させるのが普通なのだ。その理由は勿論、()()()()を防ぐためである。


 前方僅か10メートル程から複数体の魔物の反応がある。その数は5体、そしてその魔物は恐らく──


「うがァっ!」


 突然、目の前に1体の魔物が現れた。その魔物は太い腕で俺を潰そうと襲いかかってくる。その攻撃を避け、腰の剣を取り出そうとするが、後ろからも魔物が現れる。


【魔物感知魔法】で先に感じ取っていた俺は、即座に反応してその魔物とも距離を取る。すると、前から3体の魔物が顔を出した。


 茶色の毛に包まれた逞しい体と鋭い爪を持ち、目の下には三本の赤い線が刻まれている。そう、彼等がこの森の名前の所以──


「現れたな、グレイズ!」


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