旅立ち
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「ごめんなさいっ!」
俺は2人に向かって謝罪の言葉を示す。
「実は……魔法を使っていたんだ。兄さんに負けたくなくて……本当にごめんなさい!」
──勿論、嘘である。
こうして魔法のせいにすることで、俺がエインに勝ったことも多少は理解が出来るし、何よりエインが元気を取り戻してくれるだろう。
「アラン……まぁ、良いよ。それにおかしいと思っていたからね。アランが剣術で選抜チームに選ばれたエインに勝てるはずがないんだ」
正しい。父の言っていることは正しいのだ。もし、あの模擬戦が実戦だったのなら、エインは決して俺に油断はしなかっただろうし、俺が倒し乗った時も実戦ならあっという間に投げ飛ばされてしまうだろう。
まあ、その時はその時で魔法を使うのだが……つまりは、父が言っていることもあながち間違っていないということだ。
おっと、そういえば魔剣のことを忘れていた。
【収納魔法】を使用するのに消費する魔力は40程度、シチューを食べた今の俺なら十分使えるはずだ。俺は自分の部屋に移動すると、魔剣の存在を確かめるため【収納魔法】を使用する。
【収納魔法】とは、自分の空間を作成し、それを自在に操る魔法だ。そして、その空間には自分以外の誰に入らせることも呼び出すことも出来ない。つまり、空間に入れた物が無くなるなんてことはなんてことは空いてないのである。
しかし、俺の空間にはあの日、確かに収納した7つの魔剣は見当たらず、それどころか食糧や寝袋など、何1つ残ってはいなかった。
原因として考えられるのは……『転生』だ。
転生した時の負荷に耐えられず、収納していた物は消滅したかこの世界の何処かへ飛ばされたか。
消滅の可能性は低いと思うが、転生に関しては俺もあまり詳しくない。そして、俺はこの時代のことも詳しくないのだ。
──まずはこの世界のことを調べなくちゃな。
そしてこの日から、俺は時には本を読み、時には修行し、時にはシチューを食べ、平和な日々を暮らしていった。
■
そして、1年後。
今日はエインが街へ出発する日だ。街へ着いたら両親から支給されたお金で家を借りるらしく、そうなれば重要な行事以外は帰って来なくなるだろう。
──なあに、1年も付き合った仲だ。ちゃんとお礼を言わないとな。
エインは玄関先で荷物をまとめていた。その横には両親が笑顔で涙を流している。俺はエインに歩み寄ると、右手を前に出す。それに呼応してエインも同じく右手を前に出す。
「今までありがとう。エイン=ファルオード兄さん」
「ああ、こちらこそ。アラン=ファルオード」
俺達は互いの手をしっかりと握り締めると、少しの間微笑みあった。
「行って……しまったな」
俺と両親は3人で食卓を囲んでいた。静寂としていて、空気が重く、気まずい。
だが、俺はそんな空気に毒されず、軽々と重大発表を行う。
「俺もこの家を出るよ」
「「……っはぁぁっ!?」」
「何も今日って訳じゃない。でも、1年後くらいにはここを出たいとは思っている。俺もこの世界の全てを見てみたいんだ」
俺は父の出方を待つ。父はこの家の大黒柱であり、彼の言動で家族の全てが決まる。父は10秒ほど腕を組んで俯いた後、顔を上げた。
「……お前の人生だ。お前の好きにやるといい。ただ、1年に1度位は帰って来てくれよ?」
「……あぁ!」
──アラン=ファルオードよ。お前は良い父を持ったな。
俺はそう心で告げると、目の前の卵サンドイッチを頬張った。
■
時は経った。
俺も今日でこの家を発つ。先程、自分のステータスを見てきたが、【体力】890/890【魔力】1382/1400と、大幅に増加していた。これも日々の修行のお陰である。
「……じゃあ、行ってきます。父さん、母さん」
「ああ、頑張れよ!」
涙を流す両親の姿に別れを告げ、俺は歩き出した。
第6話登校は20時頃予定!




