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魔剣の在処

 

「アラン、気絶していた時はかなり唸っていたけど、何か悪い夢でも見たの?」


「いや、勇者に会ったんだ。仮面を被った勇者に」


「な、何それ!? 詳しく聞かせなさいよっ!」


 ──まぁ、サラは問題無いし、じいさんも好き勝手に人に話すタイプじゃ無さそうだな。


 俺はサラと老人に、気絶している間のことを話した。

 スキル【同血伝心】によって勇者の空間に強制移動させられたこと、勇者が魔剣を狙っていること、その他にも思い出せる限り鮮明に2人に語った。


「そういや、サラは勇者の顔を見たことがあるのか?」


「いえ、勇者様はどんな時でも仮面をしているから、素顔は殆どの人が見たことないと思うわ」


 あの空間だけでなく現実でも仮面を被っているということは、何か顔を見られたくない理由があるはずだ。今のところは見当もつかないが。


 取り敢えず勇者はもう【同血伝心】を使ってコンタクトは取ってこないだろう。次は現実で会おう、そんな意図の言葉を勇者が放ったことを俺は忘れていない。


「それで、サラとじいさんは俺が気絶した後どうなっていたんだ?」


「アランが自ら太刀を受けたことで、お爺さんは私達を信用してくれたのよ」


どうやら、それで老人の家のベッドで寝かせてくれていたらしい。傷の手当も老人がしてくれたようだ。


「アラン君、本当に済まなかった……!」


 老人は律儀に180度腰を曲げて頭を下げる。


「別に良いですよ。ほら、頭を上げて下さい!」


 ──てか、じいさんなのに腰をこれだけ曲げられるって……じいさんって一体何者なんだ?


 そんな心の声に気づいたのか、老人はフォッフォッフォッと笑うと、自ら正体を明かしてくれた。


「ワシはリーリス=エルドラド、ただの元聖騎士じゃよ」


「せ、聖騎士って……エリート中のエリートじゃないっ!」


 ──エリート中のエリート、そりゃ強いはずだよ。


 ふと、俺は聞き取り調査のことを思い出す。リーリスは魔剣という言葉に敏感になっていた。他の村人よりも色々と詳しいかもしれない。


「じいさん、魔剣について知っていることを、なるべく詳しく教えて欲しいんだけど……」


「良かろう。2人は【幻の森】を知っているかね?」


 ──やはりあそこが鍵か。


「はい。何より、私達の目的地はそこですから」


「単刀直入に言う。【幻の森】には魔剣がある」


「「!?」」


 俺とサラは同時に驚いた。まさか旅を始めてからこんな早くに、魔剣の居場所が掴めるなんて思ってもいなかった。

 しかし、なぜ断言出来るのだろう。【幻の森】は姿を消しては現してを繰り返す森のはずだ、そう簡単に入れるものだろうか。


「勿論、森の中に入った訳でも無いし、直接魔剣を見た者と会ったことも無い。ただ、昔から我が一族エルドラドに伝えられてきたのじゃ。【幻の森】の話がの」


「その話、詳しく聞かせてくれるか?」


 リーリスはコクリと首を縦に振ると、昔を懐かしむように話し始めた。


「昔、500年程前じゃ。ワシの御先祖様がこの村でいつも通り暮らしておると、空からなんと魔剣が降ってきたのじゃ。その魔剣を手に入れた御先祖様は、魔剣に気持ちの良い夢を見せて貰ったらしい。そして、その魔剣を他の者に使われたくないため、森の奥の洞窟に置いて、隠したのじゃ。それが今の【幻の森】じゃ。昔は母によく聞かせてもらったわい」


 これは旅の途中に呼び出したディアから聞いた話だが、魔剣は世界各地に飛び出した時、力が溢れていたそうだ。だから、移動した場所で会った人や自然に、溢れた力を使っていたのだという。


 ちなみに、ディアは農作物を成長させ力を放出したらしい。

 そして、リーリスの御先祖様は夢を見せて貰った。つまりは、御先祖様が出会い、【幻の森】に存在している魔剣の力は夢に関連している。


 となれば、1つしかない。【魔剣デザビル】、司る力は──


「そんな話、信じられませんよ! 確証は無いんですよね?」


 サラの突然の大声に、周囲は変な空気に包まれる。リーリスは少しの間俯くと、すぐに答えが見つかったようで顔を上げた。


「ワシは御先祖様を信じとるんじゃ。たとえ誰が何と言おうと、ワシは御先祖様を尊敬し、信じる。ワシに命を繋げてくれた、ワシをエルドラド家にしてくれた、それだけでこの人生をかけても良いくらい、感謝しておる。じゃから、ワシは御先祖様の言葉を信じるのじゃ」


 リーリスは「ワシが御先祖様にできることなんて、それくらいじゃろ?」と微笑んだ。サラはその言葉、その表情に感銘を受けたようで、何度も何度も頷いた。


「じゃあ、俺達は【幻の森】に行ってくるよ。あんたの御先祖様の話を本当だと証明してやるさ」


 俺の意図を正しく受け取ったリーリスは、ただ一言「……健闘を祈る」と呟いた。


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