魔法の衰退
「私が力を使うのはアラン様だけです。何故私がこんな薄汚い小娘に……」
ディアはそう吐き捨てると、プイっと顔を振って魔剣に戻ってしまった。
──魔剣を貰う交換条件に良いと思ったんだがな……
とは言っても、魔剣を諦める気は無い。サラは魔剣のことを家宝だと思っているようだし、簡単に渡してもらうなど──
「ねぇ、アランはこの魔剣が欲しいんでしょ? なら、渡してあげてもいいわよ? その代わり簡単な条件を果たしてもらうけど」
「おっ本当か!? 簡単な条件くらい簡単だ! 金か、土地か、男か?」
お金は賞金の出る大会に出て優勝すれば解決するし、それで土地を買うことも出来る。男はそこら辺のサラに好意を示す男を連れて来て、サラに選んで貰えば良い話だ。
──さぁ、どの条件だ!?
しかし、サラが口にした条件は俺の予想の斜め上を行くものであった。
「アランの【魔剣探し】の旅に私も連れて行きなさい!」
「へ? 何でそんなことを……? 第一、この家はどうするんだ。それに、かなり危険な旅になるんだぞ!?」
「家は売ってお金にすれば良いし、覚悟は出来てる。万が一死にそうになっても、アランなら私を助けてくれるでしょ?」
──そりゃ、見殺しにはしないが……
本当に危険なのだ。きっと【魔剣協会】も関わってくるだろうし、それ以外にも大量の魔物で溢れかえった【ダンジョン】にも行くかもしれない。
俺が承諾の返事を躊躇っていると、サラは魔剣を俺から取り上げる。
「3秒以内にはいって言わなかったら魔剣は渡さないよ!」
俺は3秒をフル活用させて悩んだ結果……
「分かったよ。連れて行ってやる。その代わり、約束通り魔剣は渡せよな?」
「モッチロン!」
サラは満足そうな表情を作ると、潔く俺に魔剣を渡す。サラは鼻歌を歌いながら階段を登っていく。俺はため息を漏らして【収納魔法】を開き、魔剣を収納する。すると、サラがこちらに振り向いた途端、目をキラキラさせて俺に急接近してきた。
「ねぇ! それ何!?」
「あ? 今度は何だよ」
どうやらサラは【収納魔法】のことを言っているらしかった。【収納魔法】は【魔力感知魔法】と同じく基礎の魔法なので、当然知っているはずだが……
俺はこの時代の魔法の文明を知らないため、魔法の発展や衰退の話は知識が無いのだ。
なにしろ、父の書斎には魔法に関する文献が全くと言って良いほど無く、魔法の構造や詳しい効果が書かれているものは一切無かったのだ。
──取り敢えず【収納魔法】の説明でもしてやるか……
「この魔法は【収納魔法】って言ってな、自分が作り出した異空間に物を収納することが──」
「【収納魔法】くらい知ってるわよ! 私が聞いてるのはその空間の大きさのことよ! 一流魔術師でも穴の大きさは半径30センチメートルくらいなのに、そんな大きさなら人がすっぽり入っちゃうじゃない!」
──へ? 【収納魔法】は異空間に入って過ごすことが出来るから便利なのに、人が入れなかったら便利さが半減じゃないか。何を馬鹿なことを……はっ!
俺はようやく気づいた。この500年で、魔法の効果が衰退していたのだ。俺はその真実を確かめるため、サラを質問で埋め尽くす。
「サラ、【魔力感知魔法】で感知できる距離は?」
「そんなの簡単じゃない、100メートルよ」
──1キロメートルだ……
「じゃあ、人に【魔力分析】をして得られる情報の中でより1番詳しい情報は?」
「何を言ってるの? 詳しいも何も、【魔力分析】で得られる情報は名前と歳だけじゃない」
──隠蔽魔法を掛けられていない場合は、スキルまで分析出来るのだが……
「じゃあ最後に、【収納魔法】を発動してくれないか?」
「へ? 別にいいけど……」
そう言ってサラが出現させた異空間へと繋がる穴は、半径10センチメートルにも及ばない小さな穴だった。
──間違いない。
俺は確信する。
この世界は俺の予想以上に、魔法文明が衰退している。




