彼女の能力
サラの持ってきた【魔剣ディアグレデス】は見覚えがあった。自然の雰囲気を醸し出す緑色の柄に、植物の生命を描いたような装飾、緑色のオーラが魔剣を包み込んでいる。
何百年も粗末に扱われたのか所々に傷と埃が付き、痛々しい姿にはなってしまったものの、それは500年前に俺が収納した7つの魔剣の1つで間違いない。
「それにしても、何で魔剣をこんな所に? 国に保護されるくらい貴重な物なのに地下の物置、しかも供養している訳では無さそうだし……」
「その魔剣は、私のおばあちゃんのおばあちゃんのまたおばあちゃんが、川遊びをしていた時に見つけたの。その当時は魔剣を畑に刺すと、一晩で芽が生えて、茎が育ち、花が開いて、実が実ったんだって。だから、家宝ってことで家に置いていたの。今じゃ何の役にも立たない単なる剣だけど、一応家宝だから売ったりするのは気が引けるでしょ」
俺はサラから魔剣を受け取ると、2、3度素振りしてみる。すると、脳内に女性の声が響いた。
『我が主人である勇者アラン様。どうか私の名をお呼び下さい』
──この声は……【魔剣ディアグレデス】から発せられているようだ。
俺は魔剣を頭上に掲げると、大きく名を呼んだ。
「姿を現せ、【魔剣ディアグレデス】!」
すると、魔剣は瞬く間に激しい緑の光で包まれ、ふと俺の魔剣を握っている感触が消える。光が収まると、俺の目の前には美しい女性が立っていた。
彼女は魔物の皮を緑に染めたらしき服を着ていて、そのせいで少し露出部が多く、巨大な胸や引き締まったお腹の部位は意図的なのかはたまた偶然なのかは知らないが、大きな穴が空いており、そこからは雪のように白い肌が見えている。
頭には綺麗な花飾りを付けた、金髪に垂れ目の優しそうな女性だった。
「我が主人の勇者アラン様。お呼び下さり、誠に嬉しい限りでございます」
「俺を呼んだのはお前か。【魔剣ディアグレデス】」
「え? ちょっ……誰、この人!? ま、魔剣!? この人が……? どういうこと? 誰か説明してーっ!」
──これだから察しの悪いやつは……
俺は1つため息を漏らすと、サラが理解出来るよう分りやすく説明する。
「彼女は正真正銘、お前がさっき持っていた【魔剣ディアグレデス】だ。俺がこいつの名を呼んだことで、俺の魔力が強制的に引き出されて、魔剣が具現化されてこんな姿って事だ」
「その通りでございます」
──いや、その通りでは駄目なのだが……
先程から体のエネルギーがもぎ取られている気がする。きっと【魔剣ディアグレデス】の具現化をさせている為、かなりの量の魔力を消費しているのだろう。
俺は未だに理解出来ず混乱しているサラに助言し、どうにか事の半分くらいは納得させる。
「さぁ、【魔剣ディアグレデス】……この姿で魔剣って呼ぶのはおかしいだろうからディアに省略させてもらうが、ディアの司る力は確か……」
司る力というのは、7つの魔剣がそれぞれ剣心に宿している魔剣特有の能力のことである。7つの聖剣と7つの魔剣、合計14本の剣が世界の均衡を保っている、という伝説もあるくらいだ。とは言っても500年前の話だが。
「私の司る力は【生力】、種は芽に、蕾は花に、より大きく、より強く育つ力、それこそが【生力】です。例えば、こんなことが出来ます」
そう言うと、ディアは右手の人差し指で空中に小さい輪を描く。すると、その輪はたちまち大きくなり、俺をすっぽり包むと収縮し始め、俺の体に入ってしまった。
すると、体の底からぐんぐん力が湧いてくる。きっと、さっきの何かのお陰で魔力が回復したのだろう。
「ご名答です。今のも【生力】で扱える能力の1つです。【シスター】等の役職が持っているスキルは魔力を回復するだけですが、私のものは魔力量の限界値も底上げしておきました。大体6000弱ぐらいですかね」
「心の中読めるのかよ! まぁ、それはそれとして魔力のことはありがとう」
魔力は後で確認するとして、取り敢えずこれ以上魔力が削られるのは嫌なので、ディアを魔剣に戻そうと──と考えたところでふと思いつく。
「なぁ、ディア。サラにもさっきのをかけてやってくれよ!」
俺は笑顔の「畏まりました!」を想像していたのだが、ディアは何故かほっぺを膨らませてムスッとしてしまった。




