魔剣教会
「その【魔剣教会】のこと、詳しく教えてくれないか?」
サラはコクンと頷くと、その怪しげな教会の詳細を話し始める。
「【魔剣教会】、それは魔剣を神として崇める宗教【魔剣教】の組織なの。ただ、少し過激な活動をしていて……」
「過激な活動って、例えばどんな?」
「小さい村を襲ってお金や食料を奪って、村人達は強制的に【魔剣教会】に入れられるか殺されるの。最近は魔剣を使って人体実験もしているようだし……」
魔剣という単語が直接出てきたことに俺は驚く。魔剣で人体実験……興味深いワードが流れてきた。
少なくとも【魔剣教会】は【魔剣探し】の手がかりとなるだろうし、やっている事も宗教団体とは思えない行為だ。1度、自ら確認する必要がある。
ピンポーン!
突然鳴り響いた奇妙な音に俺は沈黙する。
「一体何の音だ?」
「インターホン、知らないの? この家に用事のある人が外に設置されたボタンを押すと、今みたいに音で知らせてくれるの」
サラは壁に設置された灰色のボタンを押す。すると、空中に正方形の光の画面が生まれた。それには2人の影が映っている。
どうやらあのボタンを押すと魔法を発動できるようだ。魔力はどこから供給しているのか、また調べる必要があるな。
「例の借金取りよ。アランは危ないから隠れてて」
そう言い残すと、サラは玄関へと向かっていった。
──ほう、この俺に危険が及ぶと。
体力も魔力も十分にあるこの状態で、俺がそこいらの人間風情に負けるわけが無い。それとも、それ程の実力を持つ者だと言うのか。どちらにしろ、観察する意味はありそうだ。
──それに、少し気になることがあるしな。
俺はサラの後を追いかけて玄関に着くと、サラが丁度画面に映っていた2人の男と話している最中であった。
「借金を返さないなんてつもりじゃあ無いだろうな?」
「分かっています、ちゃんと返しますから! この家を売るって決めたんです!」
サラが正論を言ったのに対して、2人の男は何故かニヤニヤと笑い合う。気持ち悪い笑顔を存分に披露した末、男達はからかうように声色を高くして話し始めた。
「おーっとサラちゃん、それは出来ねぇぜ? 何故ならこの家は俺達のモンだからなぁ」
「そんなっ! 有り得ません!」
「そんなこと言われたってなぁ、あんたのパパがこの契約書にサインしているんだよ。ほら、書いてあんだろ? あんたのパパが俺様にこの豪華な家を渡すって」
男はその契約書をサラの目の前でヒラヒラと揺れ動かせる。その契約書にはしっかりとサラの父親のサインが記されてあるようで、サラはより一層青白い顔になった。
「なぁ、どうすんだよ。その歳じゃ働けねぇだろ? じゃあ、体で払うしかないよなぁ?」
やはりそれが目的だったのか。人を簡単に殺すようなクレイジー団体の会員が、サラのような美少女を見過ごす訳が無い。
男達はサラの腕を強引に掴み、家の前に停めてある馬車に乗せようとする。
「や、やめてくださいっ! 離してくださいっ!」
サラは悲鳴を上げて必死に抵抗するが、その華奢な体で男達の力にかなう筈がなく、どんどん引っ張られていく。
「その手を離せ」
俺はサラの元へ瞬時に移動すると、サラを引っ張っている腕を強く握る。
「何処から出てきやがった、このガキ!? ……ってか力強っ」
俺がさらに力を加えて握ると、男達はたまらず手を離した。
「こいつは見逃してやってくれませんか? 俺の命の恩人なんです」
「そんなの知るか。子供の癖に意気がってると痛い目合うぜぇ?」
男達は同時に剣を抜く。どちらの剣も全長40センチメートル前後のナイフであった。俺はそれに張り合うように剣を抜き、構える。
「お、やる気か? じゃあ死ねぇぇぇ!」
男達は不格好な掛け声と同時に、両腕を振り上げて向かって来る。
──やれやれ、このレベルでは殺さないようにする方が難しいな
俺は剣を収めると、がら空きの胴にパンチを2発打ち込んだ。男達は呻き声を上げて膝をつく。
「なぁ、見逃してくれよ? その方があんたの身の為になると思うぞ?」
「……うるせぇ、もうあったま来た。お前をボコボコにするまで許さねぇ!」
そう言うと、男は腰にかけたカバンからカプセル状の薬品を取り出すと、躊躇無く口の中に放り込んだ。




