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余命の炎を追う少女  作者: LIKI
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第1章。孤島で (3)

瞬きしながら子供たちの頭数を2度、3度数える。いない。色が違って目立っていたその子。白い塊から少し離れていた黒い塊の一つが。

私は顔色を青くしながら、姉に駆けつけ、忙しい姉のズボンのすそをだらりと引きずりながら、いなくなった子について話した。


『姉さん』

『ズボンがたるんでるじゃない、リエちゃん。もうおなかすいてるの?』

『違う。ルディがいなくなったよ。』

『ルディ?あら、あの黒い友達のこと?』

『うん、毎回この時間帯一人で遠く離れて見えたあの子。』

『どこへ行ったんだろう。』

『色も黒いから、とてもよく目につくはずなのに』


姉は地団太を踏んでいる私とは違い、仕事をしながらも、落ち着いてから外に出かけ、直接両眼で子供たちの数を確認した後、「本当いないね」と一人で呟き、帰って来て穀物を一匹分分けてから、肩に担いで話す。


『調子悪くててどこか家で寝ているんじゃないかな。私が探しに行ってみるから。』

『本当?』

『ちょっと いってきてる間リエは子どもたちにちゃんとご飯あげるんだよ?』

『お願い、お姉ちゃん。』


私は今回もいつものように、姉に仕事を頼んだ。私は黙々と自分の分け前の仕事をする。こんなことに関しては姉に任せるのが一番賢明だ。彼女は何事にも上手かった。私がどこに何を置いたのか、忘れ物もすぐに見つけてくれる素晴らしい記憶力を持っている。二人しかいない家柄だが、家の問題なら姉は何でもきれいに片付けてくれた。


『美味しく召し上がれ』


姉が黒い羊のルディの様子を見に行ってから、まもない頃だった。ぐうぐうわんわん。 人音一つない寂しく騒がしい音が響く。一部の子どもたちはご飯を食べていて、食事を終えた子どもたちは運動をしたり、牧場の中を走り回って遊んでいる。 群れに混じっていた一匹が見えないのに、彼らには大したものではないようだった。

私は、子供たちに飯を出し尽くし、お昼のパンくずを噛んだ後、なぜかルディの様子を見に行った姉が、なかなか帰ってこないので、今日の分の生活水を、自分一人でも汲み出すために、倉庫から大きな水筒を持って、谷へ行こうとしていた時であった。


『リエちゃん』

『あっ姉ちゃん、どうだった?』

『それが...これをどう話せばいいかな』

『言ってくれてもいい。ルディに何が起こったの?』


遠方からやってくるお姉さん姉をお迎えしながらも、遠目に見える彼女の表情をみる。あまりよくなかった。 私はその表情を読んで、何事か見当がつかなかったが、一瞬にして悪い知らせがあるだろう。それは予想できた。

姉は私がその子を大切だと思っていることを分かっている。彼女は私の顔を見て、ためらいながら、これについて話すかどうか迷ったが、しばらく考えた後、私によく聞こえる落ち着いた声で話した。


『あの子を見つけたけど···動いてなかった』

『え?』

『その黒い毛の羊の子。普通はこんな日には一人で家でうずくまっているじゃん、それでまた畜舎に寝そべっているんだろうと探しに行ってみたんだけど…誰かが噛み切っってたみたい···。確かにあの子だった』

『見に行く』

『リエ!』


私はその場で水筒を投げ、畜舎に走り出た。赤ちゃんの時から食べさせて追い詰め、私が体を片方のように育ててきた子。 ルディに何かあったら本当に心が引き裂かれるだろう。私が向かったのは牧場から少し奥に入ると出てくる、動物たちが夜の住まいとする建物棟。今、殆どの子たちが外に出ているこの場所は、しんと静まり返っていた。 私は、この臭いのする畜舎の奥へ入って、首を向けて、あの子の名前を呼び続けた。


『ルディ、どこにいるの?』

『……。』

『ルディ、ルディ?』


羊のうめき声に似たもの。それを聞くと、私は声の震源に首を回して、急いで飛び込んだ。

そうして私が確認したのは、視野に入ってきたのは、黒の一塊。

力が抜けて、死んでいく音を立てている、畜舎の見えない、子供たちがトイレに利用する隅っこに横たわっている

首のない黒い羊の死体だった。

頭の無い死体。いや、すぐに死んでいく「体」は、頭が破れたことに驚いたのか、それとも力が抜けたのか、全身の穴から便と血を流して

そしてどこから鬼神のようにやって来てその死体に卵をまくハエたちとともに、この畜舎を散らかしていた。

私は信じられない視界を見ていると、一瞬の言葉をが離せない。

頭にめまいが起き、足に力が抜けて倒そうとするところを、後ろから訪ねてきた誰かが受け止めてくれる。


『これ...何』

『わたしが確認したときはこんな状態だった。』

『頭、いったい頭はどこに?』

『よくわからない。 不思議なことに…いくら探してみてもなかった。』

『ルディ…ルディ』


いつのまにか私の後についてきた姉。彼女は後をつけて言う。私は怒りなのか、癇癪なのか、何なのか分からない、目的を失った感情が流れ出てきて、自分の体を濡らした。私は泣き出す。一体、誰がこのような残酷なことをしたのだろうか。 この頭のない子供の体は、その魂はどこに行くのだろうか。

姉さんは頭のない羊を抱きしめて涙を流す私を、しばらく黙って慰めてくれた。




これが全てのことの禍根になったのかもしれない。


こんな悪魔のようなことが起きてしばらくして、それでも日課はしなければならないという姉の意見に従って、沸き立つ悲しみをじっと堪えながら黙々と苦しい日課を終えてからのことだ。


『お疲れ、リエちゃん。』

『お姉さんも、今日仕事多かったのに、本当にありがとう。』

『夕飯は今日は私が作るから、リエはちょっと昼寝でもしていなさい』

『わかった』


もともと夕食は私が当番だったが、姉は私の様子を見て、夕食の当番を譲らせてくれた。

私は部屋に戻り室着に着替えてから、すぐ寝袋に飛び込んで眠りにつくふりをした。

けれども、いま見たおぞましい画像が頭に残り、私は寝返りを続けた。

果たしてその子をそれほど無惨にさせたものは何だったのだろうか。

姉は傷からみて野生動物の仕業らしいけど、野生動物は食事が目的なので頭はあまり触らないとも言ってた。

いったい何が起きているのか。 とても私にはわからなかった。

そのことについてじっくりかんでいるうちに、 香ばしいにおいが下階から漂ってきた. 姉さんは、すてきな夕飯を、いつのまにか食べつくしたらしい。

僕は目をこすって、下の階に下りる。 姉は料理服に着替えたまま、食卓へ私を導いた。

そして、出てきたのはシチュー。 私の大好物だった。


『美味しく食べなさい』

『うわー。今日はお肉のシチューだね。』

『リエが力を出してくれたから。おいしく食べて、頑張ってくれてほしいから特別にね』

『おいしい!何の肉?』

『いい羊肉があったから』


羊のシチュー?

ここで違和感を感じた。お姉さん今何言ったの? 羊のシチュー? 私は食事しながらその言葉に頭の中でに先見た悲惨な画像を思い浮かべる。彼女は羊の肉がいいものがあったので、シチューを作ったと言った。いい羊肉。死んで間もない新鮮な 血を出したばかりの羊肉。たった今死んだ黒のルディ。私はしばらく戸惑った表情を隠せず、まさか、と肉シチューの中をスプーンで探る。

そしてそこからスプーンに付いたのは肉の間についてる、生え抜きの黒い毛たち。これは間違いなく私の黒いアイルーディのものだ。


『なに?』

『これはルディ-じゃない! お姉さん、どうしたの? 私が本当に愛して庇ってくれた子なのに…。ぐ、ぐえぇぇ、はぁ、はぁ』

『リエ、これはその子じゃないよ。 さっきその子の墓地まで私たちが一緒に作ったじゃない。』

『ごめん、ルーディ。ごめん。お前を食べてしまった。もう全部吐き出すから。ごめんね。グウェエッ』


私は食事をしながらお皿を投げつけ、首に指を入れてさっき食べたルディの一部分を吐き出した。姉は慌てて私を止めようとしたけど、私はもう彼女を信じない。 私は姉の手を振り切って、涙と吐瀉物で大変になった床を抱きしめて、泣き出した。

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