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弁ちゃん恵比寿と再会する!

弦の上を滑るように指が流れてゆく。

周りにいる人の足が一瞬にして固まり、皆正吾に注目した。

バス待ちをしていた女子高生らしい一団が駆けつけてきて正吾のギターに聞き入っている。

あとは人が人を呼び、あっという間に人垣が出来た。

さすがに揚羽じゃ、よい音じゃのぅ…

弁天は揚羽の響きに満足した表情を浮かべた。

一曲弾き終わったがその場はシーンと静まり返っている。弁天が

「えっ!?」と心配な表情を浮かべると人垣から割れんばかりの拍手と歓声がまきおこった。

「ホホッ気分がよいのぅ。さあ、もう一曲聞きたい者はこのカンカンにお金を入れてたも!」

空き缶の中はあっという間に小銭でいっぱいになり周りにも沢山こぼれている。弁天はそれを必死にかき集めると、次の曲を奏で始めた。

「おい、あれ正吾じゃんか!」その人垣の中にクラスメート達の姿があったが、もちろんそんなこととはつゆしらず弁天の野外ライブ会場と化した駅前広場は寒空の中、人々の熱気で溢れていた。

会場の盛り上がりが最高潮をむかえようとした瞬間、警官達が駆けつけてきた。

「ちょっと君、こっちに来なさい」


まずい!

弁天は金をかき集め人ごみに紛れこんだ。

「ハァ〜危ないところだった…随分金も集まったことだし、少し休むとするかの」弁天はスルスルと正吾の鼻の穴から出てきた。

「正吾!起きろ!」

正吾は弁天に力いっぱい叩かれ目を覚ました。

「ウアア疲れた〜」

「これを見よ、ライブは大成功じゃ!いくらあるか数えるぞい」

正吾はずっしりと重い缶とポケットいっぱいの小銭をジャラジャラと出してみた。

「お!千円札もある。すごいな弁ちゃん

さてさて…おいくらになりましたかね」

「ええと……4万8300円。全然足りないよ〜!」

と正吾が叫ぶと、後ろから誰かが正吾の肩をトントン叩くではないか。

「ヒャア!おまわりさんもうしません。もうしませんからぁ〜」

「ウフフ、あなた!ちょっと私は警察じゃないってば」

正吾が恐る恐る後ろを振り返ると、そこには聖アンナ学院の制服を着た髪の長い女の子が立っていた。

「君…だれ?」

「私は安西カリン。そこにいる弁天様に用があるの」

正吾は驚いて目を見開いた。

「弁ちゃんのお知り合い?」「どうやらそうらしいのぅ…隠れておらんで出てこい!」

すると女の子の髪をかき分け小さな男の子が出てきた。

弁天と同じ15、6歳位に見える。

「やはり恵比寿、お前か!」

恵比寿はポリポリと頭をかきながら照れくさそうにしている。

「探したよ弁天!さっき君のギターが聴こえてきた時は夢かと思った。会いたかったよ〜」

恵比寿は今にも弁天に抱きつきそうな勢いだ。

「ウワァ、このストーカーめ!近付くでない」


「す、すとーかー?」正吾とカリンは声を揃えて叫び声をあげた。

「ストーカーだなんて酷いな。僕ら仲間だろ?」恵比寿はカリンから飛び降りて小銭の山の前に座った。

「弁天!もしかして僕の力が必要なんじゃない?もしそうなら遠慮なく言ってくれよ」

正吾は満面の笑みで

「恵比寿くんってもしかしてあの七福神の?」とカリンに聞いた。

「ウフフそうよ。おかげでうちも年末ジャンボ宝くじ一等当選だったんだから!」「やっぱり君も福袋買ったのかい?」

「ええそうよ。私達ツイてるわよね」

あ〜!地獄に仏とはまさにこの事だぁ。

正吾がしみじみしているとカリンが

「でも…どうやらあなたの弁ちゃんは恵比寿くんが嫌いみたいね」

と不吉なことを言うではないか。

「弁ちゃん、ここはひとつ恵比寿くんに助けて貰おうよ〜。1日に100万円なんて無理だって」

弁天はツンと横を向いたままだ。

「こいつに借りなど作りたくないわい!」

見かねたカリンが恵比寿にたずねた。

「ちょっと恵比寿くん、あなたなんでこんなに嫌われちゃったの?こんなに弁天様が怒るなんてよっぽどの事よ。訳は知らないけど悪い事をしたならちゃんと謝らなくちゃ!」

恵比寿がモジモジしていると弁天が急に叫んだ。

「そうじゃ、そうじゃ!我ら七福神は貴様のせいで人間界に落とされたのじゃからその償いをしてもらおう。それだったらかまわん。どうじゃ?妾にゆるして欲しいか恵比寿よ」

恵比寿は健気にもブンブン首を振って、目をウルウルさせている。それを見ていた正吾は

「やるな〜弁ちゃん!」とガッツポーズをきめた。


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