弁ちゃん才能を見つける!
昼休み、弁天は作戦会議をするからと正吾をだれもいない音楽室に誘った。
「おお!やはりここは落ち着くのぅ」
正吾は広い教室にどっかりと腰をおろした。
「そういえば弁ちゃん、そのギターカッコイイよね。ちゃんと弾いたの聞いた事ないよ。今なら誰もいないし弾いてみてくれない?俺、結構音楽には煩いんだぜ!」
「おお!そうじゃったな」
弁天はアコースティックギターを思う存分掻き鳴らした。「どうじゃ!ハートが熱くなるであろう?」正吾はその演奏に鳥肌たつほどの感動を覚えた。
「うん!一気に熱くなったよ。俺もそんなふうに弾けたらなぁ…」弁天はその言葉を聞き逃さなかった。
「正吾よ、先ほど隣の準備室にた〜くさんの楽器があるのを見たぞ。アコースティックギターもあったようじゃが?」
「ああ、うん!軽音部のやつだ」
弁天の目がパアッと輝き
「よし、ちょっと借りようぞ。持ってきてたも!」
正吾は隣の部屋に行くとドラムの隣に立て掛けてあるギターをとると、音楽室に戻っていった。
「あったよ!」
「おお、よしよしそれでよい」正吾はぎこちなくギターを抱えると弦に触れた。
「正吾よ、まずはチューニングじゃ。そのままでは弾けぬぞ。すべては基本からじゃ、しっかり身につけよ!」正吾は弁天の言うとおりに従った。
「よし、これでいいじゃろう。妾のは神器じゃからそんな面倒な作業は要らんがな」
正吾は弁天のギターをみて
「見た目は変わらないけどやっぱり特別製なんだね」マジマジと眺めた。
「もちろんじゃ。正吾にも自分専用のものが必要じゃの。とりあえず今日はそれで練習じゃ」
弁天は手とり足とり教えたが正吾はすぐに音をあげた。
「あ〜!俺、才能無いな」
弁天はその言葉を聞き
「ある!絶対にあるぞ。お前の指を見てこれは、と直感した。妾を信じよ。よいな?」
と、励ました。
正吾はうなずくと
「弁ちゃん、ちょっと弾いてみてよ」とお願いした。
「おお、よいぞ!」
弁天はアップテンポの曲を爪弾き始めた。
それに合わせ正吾は自分のギターを弾くふりをしている。
「弁ちゃん、これエアギターって言うんだぜ、気分爽快、イェイ!」
弁天は呆れて
「なんじゃなんじゃ?弾くふりをしとるだけではないか」
正吾はかまわずノリノリでギターを振り回している。
二人は音楽室のドアの隙間から見ている目があることに気付いていなかった。「そうだ!弁ちゃん、作戦会議するんだったね」
正吾は手を止めて弁天の方に向きなおった。
「それならもう済んだわ」
「えっ?」正吾はキョトンとしている。
「そちは天才ギタリストに決定じゃ!」
「えっ?ええ〜!?」弁天は正吾の絶叫に耳をふさぎ、
「煩いの〜!なんぞ不満か?」
と正吾に問いかけた。
「いや、そりゃあそうなれたら嬉しいけど…俺、自信ないなぁ」
弁天はギャハハと笑い
「お前は音楽の神が選んだ男!大丈夫じゃ」と太鼓判を押した。
正吾は自信無さげにあたまを掻いた。
「正吾!先ずはギターを買わねばならぬ。お前にふさわしいものを探しに行くぞい」
弁天は正吾の肩に飛び乗った。
二人は学校から帰ると早速相談を始めた。
「正吾、金はあるのか?」
「今月の小遣いはもうないけどお年玉があるよ」
正吾はピンクのブタの貯金箱を裏返して穴からお札を引き出した。
「ええと…4万3千円だな」
「よし!それだけあれば充分じゃ」
正吾はホッと胸をなでおろし、パソコンの前に座った。
「ん?何をしておる」
「インターネットを見るんだよ。これなら色々情報集められるからね…どれどれ〜、お!これなんて新品で1万円ポッキリ。あっこれはヴィンテージで…120万?楽器ってピンキリだなぁ」
弁天はパソコン画面に釘付けになっている正吾に向かって
「正吾よ、楽器にもくせがあってな。新品でもくせはあるし、中古なら尚更じゃ。それに相性もみんと!」
正吾はウ〜ンと唸った。
「楽器も奥が深いね〜」
「その通りじゃ。しかも物にはすべて作り手の念や持ち主の念、様々なおもいが詰まっておる。まぁ妾が見立ててやるから心配はいらんがな」
二人は相談し、まずは近所で探してみる事にした。




