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弁ちゃん絶対絶命の大ピンチ!ハッピーエンド

正吾はそのお札をポケットにしまうと、揚羽を構えた。

「やっぱり自力で救えってことかな…天照のじっちゃん。そういうことだろ?」

みんなが見守る中、正吾は絶対封印を解いてやる!とのかたい意志をもって弦をつま弾き始めた。

揚羽は正吾の心に反応している烈しい指の動きに見事に応えていた。

「春日さん…どう思う?町田君、変わったわよね。あの軟弱で引っ込み思案だった彼が、今はとても頼もしく感じるわ」

春日はうなずいた。

「今までの彼は常に弁天様に守られている立場だったけど、今は彼女を救う立場だからね。男は守るべき人を守れるようでなければ一人前の男とはいえないよ。町田…頑張れよ!弁天様を救えるのはお前しかいない!」

正吾の必死の演奏にこりんは心打たれていた。

「正吾様!指から血が…」

正吾の指先は皮が擦りむけて血がにじみ出ていた。

「も…もう止めて下さい!正吾様、正吾様ったら!」

こりんは見ていられず正吾を揺すぶったが、正吾はまるで何かにとり憑かれたようにギターをかき鳴らした。

すると、天空に暗雲がたち込め雷が轟いた。

稲妻が走りピカッと光が弾けると、雲の間から巨大な竜が現れた。

竜はスルスルと小さくなり、弁天達が封じ込められた水晶の棺に巻き付くと春日に向かい

「出でよ!春日兼継」と呼びかけた。

すると、春日の背後に陰陽師の衣装をまとった兼継の霊が現れたのだった。「俺を眠りから覚ましたのは誰だ!」

兼継の霊はそう叫び竜を見て怯んだ様子をみせている。

「兼継よ。よく聞け、ワシはお前に殺されたが恨んではおらん。ワシはあの時、逃げようと思えばいくらでもそうできたのだ。だが…あえてお前に殺されたのじゃ。お前に命をやり、京に巣食う怨霊どもの成敗がなしえればそれでよいと思ったからじゃ。それなのにバカな人間どもはお前の気持ちもわからずお前を殺した。無念というならワシも同じじゃ!許してやれ…ワシはこの少年の必死の願いを叶えにきたのだ。この少年の願いは兼継…お前の魂が救われることだ。さあ…ワシと共に天界にゆこう、天照様がお待ちじゃ」

兼継はうなずいた。

「やっと…やっとわかってもらえた。もう思い残す事もない。少年よ赦せ!神々よ…どうかこの愚か者を赦してください」

兼継が呪文を唱えると棺の蓋が明いた。

竜は兼継を背に乗せると、天空に昇っていった。

正吾は弁天に駆け寄った。

棺から弁天を出すと、棺は元の水晶の柱に戻った。

「弁ちゃん!しっかりして!目を覚ましてよ」

正吾が弁天に呼びかけると、弁天はゆっくりとまぶたを開いた。

「ん…ここは?正吾…すまん。妾は、妾はな…」

正吾は涙を流し弁天を抱き締めた。

「いいんだ…いいんだよ弁ちゃん。もう大丈夫だ!もう大丈夫…」

毘沙門、大黒も次々目を覚ました。

「弁天?弁天じゃないか…」

「毘沙門!毘沙門〜!」

弁天は毘沙門に抱きついた。

毘沙門天は何がなんだかわからない顔で、泣きじゃくる弁天の頭を撫で続けている。

「こりゃ二人とも!オイラの存在忘れてない?」

大黒が太った腹を揺すりながら二人の前に現れた。

「大ちゃん!久しぶりじゃなぁ。会いたかったぞい」

弁天がそういうと、大黒は不貞腐れた顔で

「まったく〜毘沙門の時とえらく態度が違うじゃないか!」とブーブー言いはじめた。

「とにかくみんな助かって良かったよ。美香ちゃんだけは助けられなかったけど… 弁ちゃん!聞きたいことがあるんだ。実は美香ちゃんを助けようと例のお札に願い事を書いたんだけどダメだったんだ。どうしてかな?」

弁天はそれを聞き、ギクッとして気まずそうに苦笑いした。

「弁天…お前何やったんだ?」

毘沙門が弁天にたずねた。

「どれどれ、そのお札オイラにも見せてよ」大黒が丸々太った手を差し出した。

正吾はポケットから大入り袋をとりだし、中からお札を引っ張りだした。

大黒はお札を見るなりアアッと声をあげ、毘沙門にも見せた。


「どうしたの?ねぇ、教えてよ!」

正吾が言うと毘沙門が弁天の方を向いた。

「ちゃんと自分で説明しろよ」

弁天は両手を合わせ

「すまん!正吾、実は妾が先にお札に願い事を書いておいたのじゃ」

正吾は思ってもいない答えに驚いた。

「ええっ!?ちょっとそのお札、俺にも見せてよ」

正吾はお札を両面ともみたが、特に何も見えなかった。

「う〜ん、どこに書いてあるのさ。わかんないよ」

弁天は仕方なさそうにお札の角の方を指差した。

「ここじゃ、ここ!」正吾は目を凝らしてじっとみた。

小さく何か書いてあったが如何せん小さ過ぎて解読不能だ。

「なんて書いたの?小さすぎて読めないよ!」

「それはナ・イ・ショ!」弁天はニカッと笑って答えた。

「なんだよ〜!勝手に書いたりして。でもなんでそんな事したの?」

弁天はフゥとため息をついて

「正吾の性格からしてこのお札を自分の為に使わんのじゃないかと思ってな。案の定そのつもりだったようじゃが…先手を打っておいて正解じゃ!」弁天は最後のところは小さく呟いた。

「え?なんだって?」弁天は

「なんでもない!だがな妾はどうしてもこのお札は自分の為に使って欲しかった!それだけじゃ」と言った。

正吾はやれやれと思いながらも弁天の自分への思いに深く感謝した。

「このこと、恵比寿くんにも報告しなくちゃね!きっとびっくりするよ」

弁天はうなずいた

「そうじゃの。これからが大変じゃ!色々と後始末が残っておるわい」

いつの間にか空は青く晴れ渡り、午後の優しい風がみんなの頬を撫でていった。

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