弁ちゃんの授業参観!
正吾は教室にもどったが、そこには誰も居なかった。
「あっ、移動教室か!今は…もう4時間目?俺ずいぶん寝ちゃったんだな」
「なんの授業じゃ?」
「音楽だよ。あっ弁ちゃんって音楽の神様だったよね?じゃあ楽しいんじゃない?俺はだいっきらいだけど」弁天は渋い顔で正吾を見た。
「お前、音楽キライなのか?」
「うん…俺さ。人前で歌ったり、演奏したりするのが苦手なんだよ。見られてるって思うと全身固まっちゃうんだ」
「ふう〜ん。じゃあ聴くのはどうじゃ?音楽を聴いて楽しい気分にならんか?」
「ああ、それは大好き!CDも沢山もってるぜ」なるほどのぅ…
弁天はニンマリ笑った。
「すみません。戻りました」
ガラッと音楽室の扉を開けると、とんでもない光景が広がっていた。
「あら〜。正吾君もういいの?」
正吾はあんぐりと口を開け音楽教師の有明を見た。
肩のあたりから若い侍の顔がギロッとこちらを見ている。
「あ、ああ…せ、先生こそ大丈夫ですか?」有明はニッコリ笑って
「何言ってるの!私は見ての通りとっても元気よ。さあ、自分の席についてちょうだい」正吾はクラスメート達に絡みついている沢山の人やら動物やら、はたまた得体のしれない妖怪みたいなものに目を奪われフラフラしながら席に着いた。
一体これはどういうことだ?
この事態に狼狽えている正吾に弁天が話しかけた。
「正吾、やっぱり見えちゃってるみたいじゃな」
正吾はコックリうなずいた。
小声で
「後でちゃんと説明してよね!」
と言うと弁天はブンブン首をふった。ハァもう何があっても驚かないや。
正吾は深いため息をついた。
「さあ、テストの続きをしましょう。ああ…町田君は最後にお願いね。じゃあ永瀬君、続きをどうぞ」
ああ、そうだった!今日はアルトリコーダーのテストかぁ。あっという間に正吾の番が来た。弁天が期待をこめた眼差しで見つめている。
リコーダーを持ち、立ち上がった。リコーダーを持つ手が小刻みに震えている。「………」
「どうした正吾!はよう吹かんか」
「………」
「ほれ!ほれどうした?」
「…ピョロロピリー」
「す、すみません。ちょっと緊張しちゃって」弁天は口をアングリ開けて正吾を見ている。正吾の顔はみるみるうちに真っ赤になり、うつむいてしまった。
見かねた有明が
「正吾君、もういいわよ。まだ体調も戻ってないみたいだし」
「は、はぁすみません」正吾は椅子に腰をおろした。
その日の帰り道、正吾は弁天にたずねた。
「ねぇ。あれはどういう事?」
「おお、あれのぅ。あれはじゃな、妾が憑依した後遺症みたいなものじゃ」正吾はキョトンとしている。
「後遺症?それであの見えてるものはなに?」
弁天はめんどくさそうに答えた。
「なにって…みたままじゃが」
「それじゃあ分からないよ。やっぱり霊とか妖怪?」
弁天は頭を掻きながら
「まぁそういう事じゃ」
と言うではないか。「心配いらんて。妾がついているからの!」弁天はドンと正吾の胸を叩いた。




