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弁ちゃん生き霊の正体を暴く!償い

この章で生き霊編完結予定でしたが、どうしても入れたいシーンがあった為、完結までいきませんでした。もう少しお付き合い下さい。

自分の罪におののく有明に春日はしっかりするよう声をかけ

「でもこれで解決策がわかりましたね。あとは彼の身元を調べて家族や会社に間違いだった事を説明しなくちゃなりませんよ」と諭した。

有明はうなだれたままコクンとうなずき、生き霊が閉じ込められている円陣に近付いた。

「ごめんなさい!私、大変な間違いをおかしてしまった。許してくださいなんていわない…だけどあなたの家族や会社にも私の過ちを話さなくちゃならないわ。だから、どうかあなたの居所を教えてちょうだい!」

「もうどうにもならない…遅すぎる、何もかも」

生き霊は悲しげにそうつぶやくとまたゆらゆらと陽炎のように実体がなくなっていった。

「ああっ!消えてしまう」

正吾がそう叫ぶと春日は人型の紙をとりだしフゥッと息を吹きかけた。

「あの男のあとを追え!」

小さな人型の紙は青白く光る円陣の中へ飛び込んで行った。そしてとうとう生き霊は皆が見守る中、跡形もなく消えてしまったのだった。

「あれは式神ですか?」

正吾は春日にたずねた。

「う〜んまぁそんなものかな。居所を突き止めたら帰ってくるよ。それまで我々は待つしかないね」

春日の様子を見ていた九尾は弁天にささやいた。

「あの春日という男、中々の術の使い手に見えますが?」

弁天はうなずいた。

「フム、胡散臭いやつじゃのぅ。まぁしばらく様子をみるとしよう我らの邪魔にならぬのなら別にかまわん」

春日の方をみると、その腕の中には涙にくれる有明の姿があった。

正吾はその二人の様子に

「もしかして?…うん、あの二人ならお似合いだよ」と少し嬉しくなった。

「さあ、感傷に浸っている暇はないぞ!式神が戻り次第行動開始じゃ。春日とやら、連絡を待っておるぞ」

正吾は春日にもう少し有明が落ち着くまでそばにいるよう頼むと、そっと部屋から出ていった。

その帰り道、正吾はしみじみと二人に語った。

「なんだかさ。今回の事は色々考えさせられたよ。人は意識しないうちに誰かを傷つけている事もあるんだね…。そして知らないうちにその人の人生までも変えてしまうようなことも起こってしまう。なんだか怖いよ」

弁天はフフフと笑って

「人はみな迷惑かけあって生きておるということじゃな。ならばお互い様じゃ!とりあえず相手を思いやる気持ちを忘れてはいかんということじゃろう」

「うん、そうだね。有明先生も辛いだろうけど思いがけずナイトが登場してくれて良かったよ。二人とも恋にはあんまり器用じゃないみたいだけどこれがきっかけになればいいな」

人生は予測がつかないから面白いんだな…。俺にはどんな未来が待ってるんだろう?

正吾は弁天と九尾をじっと見つめた。

「ん?なんじゃ正吾」視線に気付いた弁天が言った。

「なんでもないよ」

「ウソ!正吾様、わたくしにみとれてましたわ」

弁天はブッと吹き出した。

「九尾お主、恵比寿に似てきたぞ!」


「ハァ?弁天様がへんな事を言ってますよ正吾様〜」

正吾はアハハと笑うと

「ハイハイ二人とも仲良くね!さあ帰ろう。春日先生からいつ呼び出しがかかるか分からないからね。自宅待機だな」


「そうじゃな。では正吾のギターを聴きながら帰るとしよう。なぁ九尾?」

九尾は思わず飛び上がった。

「はい!そういたしましょう」

正吾は仕方なく揚羽を構えた。

「テーマは?」

正吾が聞くと弁天は少し考えて

「償いじゃ」と答えた。

正吾は

「わかったよ」と答え、弾き始めた。

「なんだか心に沁みますわ」

「そうじゃな。やはり人間に深みがでねばよい音楽も奏でられぬ。今回の事は正吾にとってよい経験になったようじゃ」


次の日学校に行くと校門の前で春日が二人を待っていた。

「おはようございます。式神は戻ってきましたか?」


「ああ!居所がわかったぞ。明日は休みだからみんなで行ってみよう。二駅先の場所だから駅前の時計台の下に9時集合でどうだい?」

「大丈夫です。有明先生の様子はどうですか?」

「大丈夫、落ち着いたよ。明日はきちんと彼の家族や会社にも謝罪に行くと言ってる。」正吾はため息をつき

「そうですか…」と相づちをうった。

「じゃあ、また明日!」

春日はそういうと校舎に戻っていった。


正吾はその日はずっと明日の事が気になって落ち着かなかった。

「弁ちゃん、彼は俺達と会った事があると気付くかな?」

弁天は首を横に振り

「いいや、分かるまいよ。多分昨夜の事は夢だったと思っているだろうからな」

正吾は鉛筆を指でもてあそびながら

「やっぱりそうなんだ?ちゃんと話を聞いてくれればいいんだけど…」

と顔を曇らせた。

そして次の日…

正吾は時計台の下で九尾と弁天を連れ、春日と有明の到着を待った。

「駅前はいつも混んでおるのぅ。そうじゃ!正吾よ、ちょうどよい機会じゃぞ揚羽を弾いて電車賃でも稼いでおこう」

正吾は渋い顔で弁天を見た。

「こりゃ!なんちゅう顔をしとる。この前は妾が憑依したから客が集まったのじゃ。今度は実力で集めてみよ!」

「ダメだよ。俺、人前に出ると震えちゃって指がいうこときかなくなっちゃうんだ」

弁天はそれを聞いてブチぎれた。

「なんでそう意気地がないのじゃ!失敗を恐れていては何もできんぞ。まずはやってみよ!別に失敗したとてどれ程のもんじゃ。カッコつけるのもたいがいにせい」

正吾は弁天の言葉にハッとした。

確かに弁ちゃんの言う通りだな。人にどう思われるか俺は気にしてばかりだ…

「そうだね。弁ちゃんの言う通りだよ…やってみる」

九ちゃんは正吾に飛び付いた。

「それでこそわたくしの正吾様ですわ!」

正吾は揚羽を構え、天を仰ぎ深呼吸すると自分の音楽の世界にトリップしていった。

「なんだか今までの演奏と違いますわね」

九尾がつぶやいた。

「そうじゃな。音が澄んでおる!」

いつの間にか正吾の周りには人が集まりだしていたが、正吾は周りなど気にせず揚羽をかき鳴らした。

その時、揚羽から色とりどりの蝶が飛び立つのを弁天と九尾は眩しく見上げた。

「見よ!揚羽も喜んでおる」

九尾は目尻に涙をためて

「ええ、さすが神に選ばれた者ですわ!空気が…空気がどんどん澄んでいきます!」

正吾は渾身の演奏を終え、やっと我にかえった。

周りを見渡し驚く正吾に九尾は近付きその右手をとって上に掲げた。

その途端、凄い拍手が巻き起こりアンコールの手拍子が起こった。

「俺、俺はきっとこの日の事を忘れません!みんなありがとう」

「正吾よ。この光景を目に焼き付けておけ!よいな?」

弁天は目を細め、正吾の感極まった表情を優しく見つめた。


「町田く〜ん!」

正吾は声のする方に振り返った。

「有明先生、それに春日先生だ!」

弁天は正吾の頭をパシンと叩いて

「よし、行くぞ!」と声をかけ、人ごみをすり抜けていった。

有明は近付いてきた正吾がまぶしく見えた。

「町田くん…あなた凄いじゃないの!なんでギターは上手いのにリコーダーはダメなのかしら?」

正吾はそのセリフを聞いてガックリきた。

「先生…そうじゃなくて…ん〜まぁいいか」

正吾はトホホといった表情で春日を見た。

春日はクスクス面白そうにしている。

「さあ、皆様行きましょう!」九尾に促され、一行はプラットホームに向かった。

「さあ、乗って!」春日が先導してみな電車に乗り込んだ。

有明は電車にのり、その当時を思い出したのか暗い顔つきになった。

春日は有明をかばうように背後に立っている。

正吾も段々緊張してきた。

果たして間に合うのだろうか?今から間違いを正したとしてあの生き霊の主は家族と仕事を取り戻すことができのか?不安が段々押し寄せてくる。


正吾は拳を握りしめた。

しっかりしろ!最初から諦めるのはさっきもう辞めると誓ったはずだ!

正吾は自分を力付けた。

「降りますよ!」

みな春日の後に続いた。

「あの川沿いに彼はいるはずです」

川は水量が少なく流れは穏やかだった。

「水際だからかな?寒いとこだね」

正吾は川沿いにいくつも並ぶ粗末なテントを眺めた。

「まさか…あのテントに住んでるの?」

有明は苦し気に春日にたずねた。

「ええ…そのようです」

有明の瞳からみるみるうちに涙が盛り上がってきた。

「ごめんなさい…ごめんなさい」

思わず崩れ落ちる有明を春日のたくましい腕がガッチリと支えた。

「しっかりして、償いはこれからなんですから!」

春日にそう言われ有明は涙をぬぐった。

「そうだったわ。行きましょう」

川沿いに立ち並ぶ無数のテントはどれもブルーシートと段ボールをうまく組み合わせ暖をとるよう工夫されていた。

中からこちらにいくつもの視線が投げかけられる。

そのテントのひとつから、どうやらここのリーダーらしき男がのっそりと出てきた。

「おまえら、なにをしにきた?」


春日が進みでて男の質問に答えた。

「僕達、人を捜しているんです。最近ここの住人になった人はいませんか?」

男はフフンと笑い

「そいつを見つけてどうするつもりだ?」と聞いてきた。

「家族の元に帰します」

男はフゥと息を漏らすと

「ここはな、みんな世間から逃げてきたやつばっかりなんだよ。無理やり連れ帰るつもりか?」


「…いいえ。そんなつもりはありません。でもきっと彼は家族の元に帰りたいはずなんです。ただ…帰れないと思い込んでいるだけだと思います。みんな彼の帰りを待ってるんです!」


「なんでそんな事が分かるんだ!家族はきっとせいせいしてるさ。恥さらしがいなくなって良かったと喜んでるだろうよ!」男の陰から出てきたスーツ姿の痩せた男は紛れもなくあの生き霊の主であった。

「見つけた…見つけたわ!」

そう叫ぶ有明の顔をじっといぶかしげに見ていた男はハッと表情を変え、有明に飛びかかっていった。

春日はすかさず有明の前に立ちふさがり、男の拳を受けた。

「先生!!」

春日の唇は血で赤く染まった。

「私は有明玲子と言います。どうか…私の話を聞いてください!それからならどんな罰も受けますから」

それを聞いた男は薄く笑って

「どんな罰も受けるだと?いい度胸だ!きこうじゃないか。俺の名は真鍋進だ」

「真鍋さん…ですか。まずはどうか謝らせてください!本当にすみませんでした。私も一緒に警察に行くべきだったんです。そうしていれば今頃…。ごめんなさい」

真鍋はペッと唾を吐きかけた。

「そうだ、お前が俺を犯人でないと証言してくれていたら今頃おれは会社で課長としてバリバリ働いているはずだった!」

春日が滲んでくる血をぬぐいながら

「これから彼女があなたの家族や会社に行き、謝罪してきます。どうかその許可だけでも頂けませんか?」


「どうかお願いします!」有明はひざまずいて頭を地面に擦りつけた。


その真摯な態度にさすがの真鍋も

「わかったよ…話してみてくれ。だがなそう甘くはないぞ」

有明はすっくと立ち上がり

「ありがとうございます!」と礼を言った。

一部始終をみていたリーダーの男は

「真鍋ちゃん、よかったな。あんたにはまだ希望がある。ここはな、長くいればいるほど脱け出せなくなっちまう忘れられた人間のたまり場だ…戻れるなら早く戻ったほうがいいよ!あんたら、真鍋ちゃんを頼む。なんとか家族のとこに帰してやってくれ」

有明は力強くうなずいた。

「はい、必ず!」


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