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弁ちゃん生き霊の正体を暴く!有明の罪

今回はつい長々と書いてしまいました。

生き霊編はあと1話で完結です。

よろしくお付き合いください。

驚く正吾に春日はニッコリ微笑み

「陰陽師なんていっても昔の事だしね。今の僕にはたいしたことは出来ないよ。こうしてお札を作って臆病な人達を慰めるくらいがいいとこさ」

正吾はもう少し話を聞き出そうとさらに聞いた。

「でも先生、どうして僕が魔の存在をわかるって知ってるんですか?」

春日はマグカップにおかわりのココアをつぎながら

「うん。実は少しなんだけど霊感っていうのかな?…どうもそういう存在が見えちゃってね。やっぱり先祖の血ってやつかね」

春日はココアをすすりながらそう答えた。

「じゃ、じゃあ僕のそばに何か見えてます?」

春日はクスリと笑い、

「そのちっちゃい彼女は一体誰なの?」

うわっ!弁ちゃんが見えてるんだ…本物だよこの人!

「先生なら分かるでしょ?」

正吾は春日の力がどのくらいのものなのか知りたかった。

「う〜ん。妖魔でも霊でもなさそうだな、もしかして妖精?」

弁天はブッと吹き出した。

「よく言うわい。陰陽師ならわかっておるだろうに。正吾をからかうのもたいがいにせい!」

春日はハハハと笑って

「どうもすみません。弁財天様」と殊勝に謝った。

「まったく陰陽師というやつはろくなヤツがおらん。霊や妖魔など見下して操ろうとする生意気な輩が多いでな」

「わたくしは残念ながらそんな力は持ち合わせておりませんよ。ましてあなた様は天界に住まうお方ないがしろにするなどと…そんな畏れ多いこと出来ません!」

「フン!どうだか?」どうやら陰陽師にあまりいい思い出はないらしい。

「弁ちゃん、これこそ天の思し召しってやつだよ!」

「ハァ?」弁天は何を言っとるんだコイツは?といった表情で正吾をみると、正吾は

「うん!そうに違いない」と1人で納得している様子だ。

「な・に・が言いたいのだ?」

正吾はニッコリと笑い

「生き霊払いに協力してもらおう!」

と力強く言い放った。

有明は興味深そうに身を乗り出した。

「生き霊だって?誰に憑いてるんだい?」


「有明先生ですよ。気付きませんでしたか?」

春日はウ〜ンと唸り

「だって有明先生はあの美形の侍がガッチリ守っていたでしょう?」

正吾は感心してしまった。

何でもわかってるんだな…じゃあ話は簡単だ。


「実は彼は昇天して今は佐々木さんという守護霊が先生を守ってるんです。」

春日は合点がいったという顔で

「最近は会ってないからなぁ。そんな事になっていたとはね」と言った。

「それでいつやるの?」

「今夜先生のお宅に行って張り込むつもりでいます!春日先生も来てくれませんか?そうすれば鬼に金棒ですよ」

春日はしばらく考え込んでいたが

「わかったよ。ただし僕に退治はできないよ。せいぜい生き霊が暴れないよう御札で結界を張るくらいがせきのやまだ」

正吾は嬉しそうに立ち上がった

「それで充分ですよ。行きましょう!」


二人が音楽室に入るとすでに有明と九尾が来ていて姿をみるなり驚きの声をあげた。

「春日先生、どうしてここに?」


「俺が来てくれって頼んだんだ」

不思議そうに正吾の顔をみる二人に弁天が説明した。

「こやつはどうやら陰陽師らしい。少しは術も使えるようなのでな連れてきたというわけじゃ」

「春日先生が?」有明が思わずつぶやくのを聞いて、春日は照れくさそうに小さく

「すみません…」と返事をした。

有明は

「すごいわ…すごいわ春日先生!陰陽師だなんて。じゃあ式神とかも出しちゃったりなんかするんですよね。カッコイイじゃないですか!」すっかり興奮している有明は放っておいて皆スタスタ歩き出していた。「有明先生、ほらみんな行っちゃいますよ。僕達もいきましょう」


皆、有明の車に一斉に乗り込んだ。


「有明先生はずっと独り暮らしなんですか?」

正吾が聞くと

「そうよ、大学出てからずっと独り暮らしだわ」

と答えた。

「そうですよね…今までは先生に近づく男の人はみんな右近さんが追い払っていたんですから」

有明はフゥ〜とため息をついて

「そうよねぇ。なんでこんなに可愛い私がモテないのか不思議だったのよ」

臆面もなくそう言い放つ有明だったが

「せっかくフリーになったのにまた霊にとり憑かれるなんて…ホントに先生はモテますわよね」と九尾に言われてしまい有明はガックリと肩を落とした。

「因果よねぇ…」

有明はしみじみとそう言うと

「さあ、着いたわよ。降りてちょうだい」と声をかけた。


「二階なの、こっちよ!」

ドアをガチャリと開けるとすぐ脇に小さなキッチンがあった。

有明の趣味なのかカラフルな食器が沢山棚に並べてあった。


「狭いとこだけどみんな入って!」

新聞紙を広げたくらいの玄関はみんなが脱いだ靴で埋まってしまった。

奥の居間は出窓のせいか意外と広く感じられる。

淡いクリーム色のソファーと小ぶりのガラステーブルが置いてあったがまだスペースにゆとりがあった。

「そこら辺に適当に掛けてちょうだい。今、お茶でも淹れるわね」

正吾は慌てて声をかけた。

「先生おかまいなく!それより早く始めましょう」

春日は早速紙をひろげ陣を描き始めた。

そして部屋の柱に御札を貼っていく。

「有明先生、この陣の上に正座して下さい」

春日はなにやら呪文を唱え始めた。

「まずは結界を張りました。霊が暴れても外には逃げ出せなくしましたよ。僕ができるのはここまで、あとは任せます」

九尾は前に進み出て円陣の中の有明に声をかけた。

「ではいきますよ!よろしいですか?」

有明はまぶたを閉じた。

「ええいいわ!」

九尾はその返事を聞くと生き霊を呼び出す呪文を唱えた。

「のうまく、さんまんだ、ばざらだんかん!」

すると円陣の中が青白く光りだし、有明の背後からゆらゆらと陽炎のようなものが立ち昇ってきた。

「よし、今だ!」

春日は叫び、有明の腕をグイと引っ張ると円陣の外に引き出した。

「痛い!もう、乱暴ね」有明は腕をさすり春日をにらんだ。

「有明先生、ほらとうとう正体を現しましたよ」

春日にそう言われ有明は円陣の中をじっと見詰めた。

「ここはどこだ?あの女、どこに行きやがった!」

スーツを着た中年の男が凄い形相でキョロキョロあたりを見回している。

「私を探しているのよね?怖い…こっち見てるわ!」

春日は有明の手をギュッと握った。

「大丈夫、こちらは見えないはずですから」

正吾は怯える有明に、この男に見覚えがないかたずねた。

「知らないわ、見たこともない!」

有明はそう断言したが人はそれと気付かぬうちに怨みをかう事もある。

九尾はそう思い、最近の出来事でなにか気になる事がないか確かめた。

「そういえば…先週くらいかしら、電車の中で痴漢にあったの。でも近くにいた若い男の人が助けてくれたわ」

「その捕まった男はどうなりました?」

「その助けてくれた人が次の駅で警察官に引き渡してくれたみたい」

正吾は何か引っ掛かるものを感じた。

「普通、先生も証人として一緒に行くもんじゃないですか?」

有明は首をかしげながら

「だって私は急いでたし、あとは任せちゃったわ」と答えた。

九尾は御札を一枚剥がすと、円陣中で出口を探してもがいている生き霊に声をかけた。

「俺の人生を台無しにしやがって!どこだ、どこに行きやがった」

「落ち着きなさい。あなたは今我々に捕らわれています。元の肉体に戻りたくば我々のいうことを聞きなさい!」

「なんだと?ふざけるな!誰のせいでこうなったと思う?みんなあの馬鹿な女のせいだ!そのせいで俺は…俺は…」

春日は優しく生き霊に問いかけた。

「いったい何があったんです?話してみて下さい。お互い何か誤解があるかもしれない。こちらに否があれば謝ります」

生き霊は笑った

「謝るだと?謝罪などなんにもならない。もう全て失ってしまったんだから…だがな、その女が己の罪もしらずのうのうとしているのも腹がたつ!いいだろう話す事にする」

皆それを聞き、ホッとした表情を浮かべた。

「あの日俺はいつものように朝の満員列車に揺られながら会社に向かっていた。会議に出る為、いつもより一本早い電車だったんだ。その会議は俺の課長になって初めての会議だったんだ…それを!この女が俺を痴漢と勘違いしたせいで出席出来なかった。その電車には俺の部下も乗っていてね。会社にはいられなくなったというわけさ。女房や子供にも恥ずかしい思いをさせ…俺はたまらず家を出た。俺は…俺は痴漢なんてしていない!犯人はあの若い男だ。それなのにあの女は忙しいからと俺がどうなるかなど考えもせず汚名だけきせていなくなった!俺は怨んで怨んで怨みぬいた、魂が脱け出すほどにな!」


皆シーンと生き霊の言葉に耳を傾けていた。

「私…大変な事をしてしまった」

有明は愕然とそうつぶやいた。

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