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弁ちゃん生き霊の正体を暴く!陰陽師登場

「お待たせ、持ってきたよ」正吾が揚羽の弦を弾くと弁天が

「なんでも良い、思い付いたまま弾いてみよ」と言った。九尾は嬉しそうに目を輝かせている。

「うん。俺は楽譜なんて読めないからその場限りのアドリブでいくよ。そうだな、今回のテーマは…挑発ってとこかな?」

「なんでもいいからはよう弾いてくれ!」

「ハイハイ揚羽、テーマは挑発でいくから頼むね。じゃあいくよ!」

正吾はアップテンポで気持ちよさそうに弦を弾いた。

皆、有明をジイッと凝視している。

「どうかしら?何か変化があった?」

有明は不安げに九尾に聞いた。

「う〜ん何も変わりませんねぇ。正吾様!ちょっとストップ、テーマを変えましょう。そうですね〜、じゃあ今度は癒しをテーマで弾いてみて下さい」

正吾はうなずいた。

「了解!癒しね。じゃあいくよ」

正吾は、優しく撫でるように揚羽の弦の上で指を滑らせた。

「ああ、やはり正吾様のギターは素晴らしいですわ」

九尾はうっとりと目じりに涙を浮かべながら聞き入っていた。

「有明はう〜んそうかしら。私には理解不能だわ」と首を捻っている。弁天は二人の感想を聞いて

「なるほど…正吾の演奏はいまいち人間ウケしないのぅ。妖魔にはたまらん魅力があるらしいが…まだまだ修行が必要ということか…」弁天がそう独り言をつぶやいていると、九尾がアッと声をあげた。

「先生の肩の辺りに何か見えてきましたよ!ほら、みて下さい」

なにやら蜃気楼のように人の顔がユラユラと見えてきた。

正吾が思わず演奏を止めると、あっというまにそれは消えてしまった。

「アァッ正吾様、ダメじゃないですか!もう少しで見えるとこだったのに」

「ごめん、思わずそっちに気をとられちゃった」

その時、昼休み終了を告げるチャイムが

「キンコンカンコン」と鳴った。

「キャア、大変だわ授業が始まっちゃう!あなたたちも早く教室に戻りなさい」

「ハイ!じゃあ今晩先生のアパートにお邪魔します。放課後また音楽室で待ち合わせしましょう」

正吾はそういうとこりんを連れ、慌ただしく音楽室から出ていった。

次の授業は体育かぁ。いまから行っても怒られるだけだよ。こういう時はやっぱり仮病でしょ…

「九ちゃん、俺なんだか頭が痛いんだ。ちょっと保健室で休んでいくよ。先生にそう言っておいてくれる?」

「大丈夫ですか?ここのところ忙しかったから疲れがでたのかもしれませんね。わかりました。ゆっくりお休みください。多分今夜はかなりハードな夜になりますからね。パワー回復させておいた方がよろしいですわ」

「うん。そうするよじゃあね」

正吾は九尾と別れて一階の保健室に行った。

「春日先生〜、あれ?誰もいないのか…ベッドお借りしま〜す!」

正吾は一番奥のベッドに潜りこんだ。どれくらい眠ったのか目を覚ました時には夕暮れのオレンジ色の光が眩しく正吾の顔を照らしていた。「う…ずいぶん寝ちゃったみたいだな」

正吾に背を向け、何やらブツブツ呟きながら手を動かしている春日の白衣姿が目に入った。

「先生…今何時ですか?」

春日はビクッと肩を震わすと正吾の方に振り返った。

「びっくりした、な〜んだ町田いたのかぁ。今はもう3時30分をまわってるぞ。一体いつからいたんだ?」

「お昼休みが終わってからです。俺眠っちゃって…もう5時間目ですよね?授業もそろそろ終わりだからまだここに居てもいいですか?」

春日はニッコリ笑うとメガネの奥の細い目がさらに細くなった。

「しょうがないなぁ。それでどこか具合が悪かったのかい?」

正吾は頭をポリポリ掻きながら

「ええ、ちょっと頭が痛くて…でもぐっすり眠ったら治っちゃいました」

「ハハハそりゃあ良かった。ココアでも飲もうか?」

「ハイ!頂きます」

春日は大きめのマグカップにたっぷりとココアを入れて持ってきてくれた。

「はい、どうぞ」

二人は湯気をフウフウ吹きながらマグカップに口をつけた。

「先生って確か独り暮らしでしたよね?ご飯とかも自分で作ってるんですか?」

「もちろんだよ。作りに来てくれる彼女もいないしね」

正吾は春日の優しくふんわりした雰囲気が大好きでよく保健室に遊びに来ていた。


「先生って歳いくつでしたっけ?」

「もう33だよ」

正吾はこんないい人がまだ独身だなんて世の女達はみるめがないなぁとつくづく思った。

「じゃあ早くいい人見つけなくちゃ!」

春日は笑って

「そうなんだよね」と他人事みたいにうなずいた。

「先生、それは?」

机の上には細長い紙と硯、それにまだ先が濡れている筆が置かれているのを見て正吾はたずねた。

「さっきから気になってたんですけど…もしかして俳句でもやってるんですか?」


「ああこれね…いやぁ見られちゃったら仕方ないなぁ。これはね、魔除けのお札なんだ」

正吾は不思議そうに春日の顔を見た。

「それをなぜ先生が書いてるんですか?」

春日は気まずそうにボソボソ話しだした。

「実は…僕は陰陽師の末裔でね。今でもこうして頼まれごとを持ち込まれるってわけ。この世にはいろんな魔が潜んでいる。町田もそれはわかっているんじゃない?」

この人…一体何者なんだ?

正吾は春日がまるで初めて会った知らない人のように感じた。

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